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2025.09.06

BIMプラットフォームを各社徹底比較 最適な導入事例を紹介

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建設業界のデジタル変革が進む中、BIMの導入は企業の競争力を左右する重要な要素となっています。

本記事では、主要なBIMプラットフォームの特徴から実際の導入事例まで徹底解説します。

 

BIMとは

 

BIM(Building Information Modeling)は、建築物の3次元デジタルモデルに設計情報、構造データ、設備仕様、コスト情報などの多様な属性を統合し、建築プロジェクトの企画から維持管理まで一貫して活用する革新的な手法です。

従来の2次元CADとは根本的に異なり、BIMでは建築物を「情報の集合体」として扱います。

壁や柱、扉といった各要素は、材質や寸法、性能データを持つオブジェクトとして管理され、設計変更時の影響範囲を瞬時に把握できます。

現在、国土交通省もBIM活用を推進しており、公共事業での対応が段階的に義務化されています。

 

出典:国土交通省「建築BIM推進会議

 

BIMプラットフォームとは

 

BIMプラットフォームは、3次元建築モデルの作成機能にとどまらず、プロジェクトに関わる全ての情報を統合的に管理・共有・活用するための包括的なソフトウェア環境です。

設計者、施工者、発注者など多岐にわたる関係者が同一のデジタル基盤上でリアルタイムに協働できる仕組みを提供します。

従来のCADツールが特定の作業に限定されていたのに対し、BIMプラットフォームはプロジェクトライフサイクル全体を包括的にサポート可能です。

3次元モデリングから工程管理、コスト算出まで統合的に提供し、クラウド技術により現場とオフィスの連携も強化します。

 

代表的なBIMプラットフォームを比較

 

建設業界で広く採用されているBIMプラットフォームには、それぞれ独自の特徴と強みがあります。

市場シェア、機能性、操作性、導入コストなどの観点から主要な製品を比較検討することで、自社に最適なソリューションを見極められます。

ここでは、特に実績と評価の高い3つのプラットフォームの特性を詳しく解説します。

 

Autodesk Revit

 

Autodesk Revitは、グローバルなBIM市場で圧倒的なシェアを誇る統合型BIMソフトウェアです。

建築設計、構造設計、設備設計の3分野を包括的にカバーし、大規模かつ複雑なプロジェクトでの運用に特に優れています。

パラメトリックモデリング技術により、設計変更が関連する全ての要素に自動反映されるため、設計変更への対応が迅速かつ正確です。

豊富なファミリとテンプレートで効率的なモデリングを支援し、国際的なプロジェクトでの実績も豊富です。

 

出典:Autodesk Revit「公式サイト

 

Graphisoft Archicad

 

Graphisoft Archicadは、建築設計者の創造性を重視した直感的な操作性で定評のあるBIMソフトウェアです。

ユーザーフレンドリーなインターフェースと軽快な動作により、設計初期段階からの導入に適しています。

建築意匠設計に特化した機能が充実しており、複雑な形状のモデリングや美しいプレゼンテーション資料の作成で優れた表現力を発揮します。

独自のTeamwork機能で複数設計者の協働作業を実現し、操作習得の難易度も低いため、BIM初心者や中小規模設計事務所に特に適しています。

 

出典:Graphisoft Archicad「公式サイト

 

BIM 360やRevizto

 

BIM 360(現Autodesk Construction Cloud)とReviztoは、既存のBIMソフトウェアと連携するクラウドベースの協働プラットフォームです。

設計データの管理と関係者間の情報共有に特化したサービスを提供します。

BIM 360はAutodeskエコシステムとの高い親和性が特徴で、大規模プロジェクトでの情報統合に優れます。

Reviztoは複数BIMソフトに対応した汎用性の高さが魅力で、3Dビューアー機能やVR技術を活用した没入型プレゼンテーションを提供可能です。

両者とも現場とオフィスの情報連携強化に貢献します。

 

出典:Autodesk「Autodesk BIM 360

出典:Revizto「公式サイト

 

BIMプラットフォームの導入事例

 

BIMプラットフォームは国内外の建設業界で着実に普及が進んでおり、多くの企業が具体的な成果を上げています。

大手ゼネコンから設計事務所、公共機関まで幅広い分野での活用により、設計品質向上、施工効率化、コスト削減などの効果が実証されているのです。

ここでは代表的な成功事例を通じてBIMの実用性と効果を検証します。

 

大和ハウス

 

大和ハウス工業は建設業界のデジタル化において先駆的な取り組みを展開しています。

同社が開発した「D’s BIM ROOM」システムは、設計BIMデータを基盤としたバーチャル建築体験を実現する革新的な取り組みです。

Autodesk Construction Cloudを中核とした統合データ環境で設計から維持管理まで一元管理し、施工図面のクラウド管理によりペーパーレス化も実現しています。

 

出典:大和ハウス工業株式会社「D’s BIM ROOM(ディーズビムルーム)開発

 

清水建設

 

清水建設は「Shimzデジタルゼネコン」構想の下、建設プロセス全体のデジタル化に取り組んでいます。

「Shimz One BIM」戦略は設計BIMを施工・製作・運用まで一貫連携させる包括的アプローチとして業界から高評価を受けています。

2023年にAutodesk社との戦略的連携協定を締結し、Autodesk Construction Cloudをプラットフォームとした統合BIM環境を構築しました。

施工図作成の最適化や品質・コスト・工程管理の効率化を実現し、竣工BIM活用による新サービス提供で建物の生涯価値最大化を図っています。

 

出典:清水建設株式会社「竣工BIMで新たなサービスを提供

 

大成建設

 

大成建設は超高層建築や大型インフラプロジェクトでBIM技術を積極活用し、設計精度向上と施工効率最適化を進めています。

また、現場でのタブレット活用によるBIMモデル参照システム導入で図面整合性確認を効率化し、施工品質向上と工期短縮を同時に実現しています。

 

出典:大成建設「生産プロセスのDX実現への一歩

 

日建設計

 

日建設計はBIM技術を創造的な設計プロセス強化に活用しています。

複数BIMツールを組み合わせた柔軟な設計環境を構築し、プロジェクト特性に応じた最適なツール選択を実現しました。

3Dモデル活用によるクライアントプレゼンテーション高度化で、設計意図の正確な伝達と合意形成迅速化に貢献しています。

 

出典:日建設計「BIMの効果的な活用を促すためのハンドブック「BIM Uses Definitions Vol.1」を制作・公開

 

東京都

 

東京都は公共施設の整備・維持管理業務にBIM技術を導入し、行政サービスの効率化と品質向上を実現しています。

都市整備局中心の取り組みで、新築・改修プロジェクト計画段階からBIMモデルを活用し、施設ライフサイクル全体のコスト管理と情報の見える化を実現しました。

 

出典:シン・トセイ「都立建築物 BIM活用プロジェクト【財務局】

 

海外先進国

 

イギリス、シンガポール、フィンランドなどのBIM先進国では政府主導の積極的導入推進により建設業界全体のデジタル化が大幅進展しています。

イギリスでは政府調達でのBIM Level 2義務化によりプロジェクトコスト15〜20%削減と設計変更リスク大幅低減を実現しました。

シンガポールでは建築許可申請時のBIMモデル提出義務化で行政審査効率化と設計品質向上を同時達成しています。

 

出典:国土交通省「資料2-3 国際標準化に対する検討体制

 

BIMプラットフォーム導入時の注意点

 

BIMプラットフォームの導入を成功させるためには、技術的な検討だけでなく、組織的・経営的な観点からの慎重な準備が不可欠です。

多くの企業が直面する典型的な課題を事前に把握し、適切な対策を講じることで導入リスクを最小化できます。

ここでは特に重要な3つのポイントについて解説します。

 

自社の業種やプロジェクト規模に合った製品を選ぶ

 

BIMプラットフォーム選定で最も重要なのは、自社の事業特性とプロジェクト性質に最適化されたソリューションの見極めです。

建築意匠設計中心の設計事務所ではデザイン表現力に優れたArchicadが適しており、大規模施工管理まで対応するゼネコンでは統合性に優れたAutodesk Revitが有利です。

将来の事業展開も見据えた中長期視点での製品選択が成功の鍵となります。

 

トータルコストを把握する

 

BIM導入にはソフトライセンス費以外にも多岐にわたるコストが発生します。

初期導入では高性能PC、グラフィックボード、ネットワーク強化費が必要で、運用段階では年間保守費、クラウド利用料、アップデート費が継続発生します。

人的コストも重要で、操作研修費、社内教育開発費、専門人材採用・育成費、生産性安定までの効率低下を総合評価する必要があります。

特にサブスクリプション型では長期利用コスト累積を慎重に見積もり、現実的な投資回収期間を設定することが重要です。

 

互換性を確認する

 

建設プロジェクトは多数の専門業者協働のため、データ交換と統合の円滑性が業務効率に直結します。

IFC等の国際標準形式対応状況、他社使用BIMソフトとのデータ交換精度、CAD図面との相互変換能力の詳細検証が必要です。

協力会社との情報共有頻度が高い場合は業界普及度や標準化動向も考慮し、将来にわたって互換性維持できる製品選択が賢明です。

 

まとめ

 

BIMプラットフォームは建設業界デジタル化の中核技術として重要性を高めています。

各プラットフォームの特徴と先進導入事例から、BIM活用は単なる効率化にとどまらず、企業の競争力強化と持続的成長を支える戦略的投資であることが明らかです。

成功のためには自社事業特性に最適なソリューション選択、技術導入に加えた組織文化変革と継続的人材育成が不可欠です。

製品選定、コスト管理、互換性確保の3つの重要ポイントを慎重検討し、段階的かつ戦略的なアプローチでの導入を推奨します。

適切に実装されたBIM環境は企業の長期的成功に大きく貢献するでしょう。

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