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コラム

2025.08.12

SANAA (妹島和世+西沢立衛)が設計した金沢21世紀美術館 | 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa Design:SANAA

サムネイル

みなさん、こんにちは!
mono monoです。

 

金沢21世紀美術館は、SANAA (妹島和世と西沢立衛による建築ユニット)により設計された美術館で1999年のプロポーザルによって選ばれたものになります。
それまでのSANAAが扱ってきた建築物の中でも一際大きく、延べ床面積が約2万平米あります。(地上1階、地下1階の建物で、地下にはギャラリーやシアター、駐車場など)

 

金沢21世紀美術館は金沢市内にあり、近くには兼六園があるので、私は兼六園で庭を見た後に、美術館に行きました。

 

金沢は曇りの天気のことが多く、また積雪もあるのですが、それらの天候を意識して空間の設計がされており、主には曇りの日の拡散光の効果に着目して、光が床や壁に反射するような材料が選ばれ、曇りの日にはとても柔らかな空間になっています。
床はコンクリートで、壁は白く塗られており、天井には白いパネルが打ちつけられています。
天井や内部のガラスの間仕切り壁は周りの風景をぼんやりと反射しています。

SANAA (妹島和世+西沢立衛)が設計した金沢21世紀美術館 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa DesignSANAA

ミュージアムショップ付近 (撮影: 筆者)

 

空間を体験するとわかるのですが、透明感、明るさなどがつくる空間が本当に快適で、いつまでもぼんやりとしていたいと思いますし、これから現代美術を見るというワクワク感を与えてくれる不思議な空間だと思います。
そんな不思議な空間を求めて、たくさんの人が訪れているのかなとも思います。

 

また、これまでに実現されたことがないほど開放的な空間で、外周は全てガラス張りになっています。柱が全然なくて、よくこんなに開放的につくれるな!と驚きます。
また柱があったり、なかったりしてすごくランダムに柱が配置されているように思うのですが、実は屋根は3mのグリット上に梁が組まれており、9mを標準スパンとしてランダムに見えるように柱が建てられています。

 

大きな構成としては、直径約110mの円形の床の上に白いボックス状の展示室が配置され、それを覆うように同じく直径110mのフラットな屋根が架けられています。
ボックス同士の間は通路やホール、休憩スペース、ショップ、カフェなどとして利用できるようになっています。

 

入口は5ヶ所あり、いろいろなところから出入りできるようになっているのも大きな特徴です。
この後のSANAAの建物がいろいろなところから出入りできるようになるモデルの一つにもなっています。

 

普通、美術館に限らずどんな建物でも1ヶ所入口があって、そこから決められた通路に従って進んでいくのが普通ですが、この建築では建物の周りも公園になっていて自由に歩けることに加え、内部も散歩するように歩くことができます。大きな余白の中を自由に進んでいく楽しさがあります。

SANAA (妹島和世+西沢立衛)が設計した金沢21世紀美術館 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa DesignSANAA-3

自由に歩くことができる空間 (撮影: 筆者) 大きな窓を介して外とつながる

 

SANAA (妹島和世+西沢立衛)が設計した金沢21世紀美術館 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa DesignSANAA-2

壁際には同じく設計者がデザインしたラビットチェア が並べられている(撮影: 筆者)

 

私が訪れたときは子どもが走り回ったり、少し腰掛けて話す人がいたり、来ている人が思い思いに過ごしていて、まるで公園の広場みたいだと思いました。

 

ボックス状の各展示室は平面的な大きさも違いますが、高さも様々です。
外観からは円形の屋根の上にボコボコと箱が飛び出しているのが見えます。
各展示室へは小さな入り口から入るようになっているのですが、入り口以外は全て壁に囲まれており、中に入るまでは展示室の内部は見えず、入って初めてその展示空間を体験できるようになっています。
入るとこんなに天井が高いのかと驚いたり、真っ暗な空間の部屋があったり、展示室に入るたびに驚かされます。まさにブラックボックスの中に入っていくような体験です。

 

また、各展示室は独立して配置されているので、ひとつの展示室を見た後は、展示室同士の間の空間に一旦出て、気持ちを切り替えて、また次の展示室に向かうことができるようにもなっています。
こうやって一度頭の中の空気を抜いてくれるような空間が設けられていることは、美術館においてとても有効だと思いました。

SANAA (妹島和世+西沢立衛)が設計した金沢21世紀美術館 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa DesignSANAA-4

背後の山から美術館を見下ろす (撮影: 筆者) 箱が飛び出している構成がよく分かる

 

初めに直径110mの円形屋根と書きましたが、これはものすごい大きさですよね。
100mのプールよりも大きいです。

 

そのため、直径110mの円形の屋根の中央部分には光庭が設けられています。
ときどきボックス同士の間の廊下が端から端までつながっているところがあり、ガラスを介して外部が見える部分があるのですが、それに加えて、美術館の真ん中に大きな光庭があることで、視界が空にも抜け、開放感を生み出しています。

SANAA (妹島和世+西沢立衛)が設計した金沢21世紀美術館 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa DesignSANAA-5

光庭 (撮影: 筆者)

 

SANAA (妹島和世+西沢立衛)が設計した金沢21世紀美術館 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa DesignSANAA-6

光庭から空を見る (撮影: 筆者)

 

ぜひ曇りの日にも訪れてもらいたい美術館のご紹介でした!

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