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2025.07.07
学部卒と院卒就活の違いとは?建築専攻の就職先も紹介!

学部卒業で就職するか、大学院に進学するか」。
これは、建築を学ぶ学生の多くが直面する大きな悩みではないでしょうか。
本記事では、建築学生がキャリアを選択する上で重要な、学部卒と大学院卒の就職活動における違いを徹底解説します。
それぞれのメリット・デメリット、向いている人の特徴から、建築専攻ならではの多様な就職先まで、幅広く紹介します。
後悔のないキャリア選択のために、ぜひ最後までご覧ください。
学部卒業で就職?大学院進学?建築学生のキャリア分岐点
建築学科の学生にとって、学部卒業後の進路選択は、まさにキャリアの大きな分岐点です。
4年間の学びを終え、実社会でその知識を試したいと考えるか、さらに2年間研究を深め、専門性を高めてから社会に出るか。
この決断が、将来の働き方、携わるプロジェクト、そして生涯年収にまで関わってきます。
一般的に、学部卒での就職は「実践力」を重視するキャリアのスタートと言えます。
一日も早く現場に出て、実務経験を積みながらプロフェッショナルを目指す道です。
一方、大学院への進学は、特定の分野における「専門性」や「研究能力」を深化させることを意味します。
より高度な知識や論理的思考力を身につけ、専門職や研究職、あるいは大手企業の設計職など、より専門性が求められる分野への扉を開く鍵となります。
重要なのは、どちらが優れている、劣っているということではない、という点です。
あなたの価値観、興味の方向性、そして将来どのような建築家・技術者になりたいかというビジョンによって、最適な選択は異なります。
まずはそれぞれの特徴を正しく理解し、自分自身のキャリアプランと照らし合わせることが、後悔しないための第一歩となるのです。
学部卒と院卒、それぞれ向いているのはこんな人
具体的にどのような人が学部卒での就職、あるいは大学院進学に向いているのでしょうか。
ここでは、それぞれのタイプの特徴を詳しく見ていきましょう。
学部卒での就職がおすすめな人
学部卒での就職は、実践を通じて成長したいと考える人に最適な選択です。
以下のような考えを持つ人は、学部卒でのキャリアスタートを検討してみると良いでしょう。
早く現場に出たい人
座学よりも、実際の建築物ができていく過程に身を置き、ライブ感のある環境で働きたいという意欲が強い人です。
施工管理のように、現場の最前線で多くの職人や技術者と関わりながらプロジェクトを動かしていく仕事に魅力を感じるなら、学部卒で飛び込むメリットは大きいでしょう。
経済的負担を減らしたい人
大学院に進学する場合、さらに2年間の学費と生活費が必要になります。
経済的な負担を考慮し、早く社会に出て収入を得たいと考えるのは現実的な判断です。
2年早く社会人経験を積めるため、同年代の院卒者よりも先にキャリアと資産形成をスタートできます。
大学院進学がおすすめな人
大学院への進学は、専門性を武器にキャリアを切り拓きたいと考える人におすすめです。
知的好奇心が旺盛で、特定の分野をとことん追求したい人に向いています。
設計職を志望している人
有名なアトリエ事務所や大手組織設計事務所の設計職を目指すなら、大学院進学は非常に有効な選択肢です。
院卒が応募条件の企業も多く、採用で有利に働きます。
大学院の2年間は、就職の鍵となるポートフォリオの質を、時間をかけて徹底的に高めるための貴重な期間となるでしょう。
研究を深めたい人
学部で出会ったテーマに対し「もっと突き詰めたい」という知的好奇心がある人には、大学院が最適です。
恵まれた環境で研究に没頭でき、論理的思考力が養われます。
将来、大学や企業の研究所などで研究者としてのキャリアを歩みたい場合、大学院への進学は必須のステップです。
専門性を高めたい人
建築史や環境工学、都市計画など、特定の分野のスペシャリストを目指したい人におすすめです。
大学院で専門性を高めることは、「〇〇のプロ」という明確な強みになります。
就職活動で他の学生と差別化でき、独自のキャリアを築くための武器を身につけることが可能です。
学部卒と院卒で就職するメリット・デメリット
進路選択においては、メリットだけでなくデメリットも冷静に比較検討することが不可欠です。
学部卒と院卒で就職するメリット・デメリットを解説します。
学部卒の場合
最大のメリットは、2年早く社会人経験をスタートできる点です。
同年代の院卒者がまだ学生である間に、現場での実践的なスキルを身につけ、給与を得て経済的に自立できます。
2年間の実務経験は、その後のキャリアにおいて大きなアドバンテージになります。
特に施工管理など現場が重視される職種では、経験年数が直接評価に繋がることも少なくありません。
一方で、初任給や生涯年収で院卒に見劣りするかもしれません。
多くの企業で院卒者の方が初任給が高く設定されており、昇進・昇給のペースも早い傾向にあります。
また、応募できる職種の幅が狭まることもデメリットです。
特に、前述した大手設計事務所の意匠設計職や研究開発職など、高度な専門性を求めるポジションでは、「修士課程修了」が応募の必須条件となっている場合があります。
院卒の場合
高い専門性を武器に就職活動を有利に進められるのが最大のメリットです。
大学院での研究を通じて身につけた深い知識は、企業から即戦力として期待され、初任給も高く設定されることが一般的です。
結果として生涯年収も高くなる傾向にあります。
また、学部卒では門戸が狭い専門職や研究職にも挑戦でき、就職先の選択肢が大きく広がります。
自分の研究テーマと合致する企業であれば、非常に高い評価を得ることも可能です。
明確なデメリットは時間的・経済的コストです。
2年間の学費と生活費がかかり、社会に出るのが2年遅れます。
その間に学部卒の同級生はキャリアを積んでおり、焦りを感じることもあるかもしれません。
また、研究活動に没頭するあまり、就職活動の準備や情報収集が疎かになってしまうリスクもあります。
計画的に研究と就職活動を両立させる自己管理能力が求められます。
建築専攻の主な就職先
建築学科で学んだ知識やスキルは、非常に幅広いフィールドで活かすことができます。
ここでは、代表的な就職先とその特徴を解説します。
設計事務所
建築物のデザインを行う、まさに建築の花形ともいえる職場です。
作風や規模によって「アトリエ系」と「組織系」に大別されます。
アトリエ系設計事務所 | 著名な建築家が主宰し、小規模ながらデザイン性の高い個性的な建築物を手掛けます。
採用は少数精鋭で、ポートフォリオの質が最も重要視されます。 大学院で設計能力を磨き上げた学生が有利になる傾向が強いです。 |
組織設計事務所 | 大規模なビルや公共施設、商業施設などの設計をチームで行います。
意匠、構造、設備など各部門が分業しており、安定した環境で大きなプロジェクトに携われます。 こちらも採用は院卒が中心となることが多いです。 |
ゼネコン
設計から施工まで、建設プロジェクト全体を請け負う企業です。
職種が多様で、自分の適性に合った働き方を見つけやすいのが特徴です。
設計職 | ゼネコン内の設計部で、主に自社が施工する建物の設計を担当します。
組織設計事務所と同様に、院卒の専門性が求められます。 |
施工管理職 | 建設現場の司令塔として、品質・コスト・工程・安全・環境の5大管理を行います。
現場を動かすリーダーシップとコミュニケーション能力が不可欠で、学部卒の学生も多く活躍しています。 |
研究開発職 | 新工法や新材料、環境技術などの研究開発を行います。
最先端の技術に触れることができ、修士・博士課程で培った研究能力が直接活かせる専門職です。 |
ハウスメーカー
個人向けの戸建て住宅や集合住宅の設計・開発・販売・施工を手掛ける企業です。
お客様の「夢のマイホーム」を形にする、やりがいの大きな仕事です。
設計職 | お客様の要望をヒアリングし、プランニングを行います。
コミュニケーション能力と提案力が重要です。 |
営業職 | モデルハウスなどで接客し、自社製品の魅力を伝えて契約に結びつけます。 |
施工管理職 | 戸建て住宅の建築現場を管理します。
学部卒でも広く門戸が開かれていますが、デザイン性の高い商品を扱う設計職などでは、院卒の専門性が評価されることもあります。 |
デベロッパー
都市の再開発やリゾート開発、マンション建設など、不動産開発事業を企画・推進する事業者です。
街づくりという非常にスケールの大きな仕事に、事業の最上流から関われるのが魅力です。
建築の知識はもちろん、マーケティング、金融、法律など幅広い知識が求められるため、文系の学生にも人気が高く、採用難易度は非常に高いです。
エリートが集まる業界であり、院卒が有利に働く傾向があります。
デザイン会社
店舗の内装や商業施設の空間デザイン、展示会のブース設計など、インテリアや空間演出を専門に手掛ける会社です。
トレンドを敏感に察知し、人々を惹きつける魅力的な空間を創造するセンスが求められます。
学歴よりも、デザインスキルやセンスを示すポートフォリオが重視される実力主義の世界です。
建築資材製造会社
ガラス、サッシ、断熱材、外壁材、ユニットバスなど、建築に欠かせない様々な部材や製品を開発・製造・販売するメーカーです。
研究開発職 | より性能の高い新製品や、環境に配慮した製品を開発します。
化学や物理の知識も活かせる分野で、院卒の専門性が求められます。 |
営業職・企画職 | 自社製品を設計事務所やゼネコンに提案したり、市場のニーズを分析して新商品を企画したりします。
学部卒も広く活躍しています。 |
まとめ
学部で就職するか大学院に進学するかに、どちらが正しいという正解はありません。
大切なのは、自分のキャリアで何を重視するかです。
早く実務経験を積んで現場で活躍したい場合は学部での就職が、設計職や研究職などで高度な専門性を身につけたい場合は大学院進学が適しています。
それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自己分析をしっかり行いましょう。
インターンシップやOB・OG訪問も活用し、自分が心から納得できるキャリアを選択してください。
本記事が、その後押しとなれば幸いです。