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2025.06.06
建築基準適合判定資格者検定とは?2024年に改正された内容についても解説

私たちの生活の安全と安心を支える建築物は、建築基準法をはじめとする様々な法規に適合している必要があります。
その適合性を専門的な知識と経験に基づいて厳しくチェックする役割を担うのが、「建築基準適合判定資格者」です。
本記事では、この重要な資格を取得するための国家試験である「建築基準適合判定資格者検定」について、その概要から試験内容、そして2024年に改正された重要なポイントまでを詳しく解説します。
建築業界での活躍を目指す方、建築物の安全確保に貢献したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
建築基準適合判定資格者検定とは
建築基準適合判定資格者検定は、建築物が建築基準法や関係規定に適合しているかを判定する専門家としての国家資格を得るための試験です。
合格者は、特定行政庁が行う建築確認申請における審査業務を担い、建築物の安全性や適法性を確保する上で重要な役割を果たします。
建築基準適合判定資格者検定には一級と二級があり、それぞれ扱える建築物の規模や構造に違いがあります。
一級建築基準適合判定資格者検定
一級建築基準適合判定資格者検定は、あらゆる種類の建築物の建築確認申請における審査を行うことができる資格です。
大規模な建築物や複雑な構造の建築物の審査を担当でき、高度な専門知識と判断能力が求められます。
受験資格としては、建築に関する実務経験や学歴などが定められています。
一級建築基準適合判定資格者は、建築行政や民間の確認検査機関において、より責任のある立場で活躍することが期待されます。
二級建築基準適合判定資格者検定
二級建築基準適合判定資格者検定は、比較的小規模な建築物や、木造や鉄骨造などの比較的単純な構造の建築物の建築確認申請における審査を行うことができる資格です。
一級資格と同様に、受験資格として建築に関する実務経験や学歴などが定められています。
二級建築基準適合判定資格者は、主に地方公共団体の建築指導部署や、中小規模の建築物を扱う民間の確認検査機関などで活躍しています。
建築基準適合判定資格者検定の改正内容
現在、建築基準適合判定資格者検定の受験者や合格者の減少、そして有資格者の高齢化が進んでおり、建築確認などの事務を行う担い手不足が深刻化しています。
さらに、2025年に施行される建築基準法の改正により、建築確認等の事務量が増大することが見込まれており、建築主事および確認検査員を安定的に確保することが課題となっています。
このような状況を踏まえ、建築基準適合判定資格者検定の改正もされました。
今回の主な改正内容は以下の通りです。
【受験資格と登録要件の分離】
これまで受験資格として定められていた建築に関する実務経験が、資格の登録要件へと変更されます。
これにより、受験の段階では実務経験が不要となり、より多くの一級建築士試験合格者に受験の機会が広がります。
【二級建築士試験合格者の受験資格の新設】
これまで一級建築士試験合格者のみに認められていた受験資格が、二級建築士試験合格者にも付与されます。
ただし、二級建築士試験合格者を対象とした検定に合格した場合は、資格名称が「建築副主事(行政)」または「副確認検査員(民間)」となり、担当できる業務範囲が一級建築士による設計が義務付けられていない小規模な建築物に限定されます。
これらの改正点を、改正前後の比較として以下にまとめました。
【改正前】建築基準適合判定資格者検定
受験要件 | 登録要件 | 資格者名称 | 業務範囲 |
一級建築士試験合格者+実務経験 | 適判検定合格 | 建築主事(行政)
確認検査員(民間) |
全ての建築物 |
【改正後】一級建築基準適合判定資格者検定
受験要件 | 登録要件 | 資格者名称 | 業務範囲 |
一級建築士試験合格者 | 適判検定合格
+ 実務経験 |
建築主事(行政)
確認検査員(民間) |
全ての建築物 |
【改正後】二級建築基準適合判定資格者検定
受験要件 | 登録要件 | 資格者名称 | 業務範囲 |
一級建築士試験合格者、二級建築士
試験合格者 |
適判検定合格
+ 実務経験 |
建築副主事(行政)
副確認検査員(民間) |
小規模な建築物 |
出典:国土交通省「建築基準適合判定資格者検定制度の見直し(第13次地方分権一括法案(令和5年3月3日閣議決定)」
建築基準適合判定資格者検定の試験概要
建築基準適合判定資格者検定には、2つの試験があります。
考査A
考査Aは、主に建築基準法や関係法令に関する知識を問う筆記試験です。
法規集の持ち込みが許可される場合が多く、条文の解釈や適用に関する問題が出題されます。
【出題範囲の例】
・建築基準法
・建築基準法施行令
・関係告示(構造計算、防火、避難、設備など)
・都市計画法、消防法など関連法規の一部
【試験形式】
・5肢択一式
考査B
考査Bは、建築物の計画や設計に関する知識、そして建築基準法などの法令に基づいた適合性の判断能力を問う筆記試験です。
図面や仕様書が提示され、それらに対する法的な適合性を判断する問題が出題されることがあります。
【出題範囲の例】
・建築計画(配置、意匠、動線計画など)
・構造計画(構造の種類、構造計算の概要など)
・防火・避難計画(防火区画、避難施設など)
・建築設備(給排水、換気、電気設備など)
・関係法令の適用判断
【試験形式】
・記述式または選択式
配点
建築基準適合判定資格者検定の配点は、一級と二級で異なっています。
それぞれの試験における考査Aと考査Bの配点、そして合格基準点は以下の通りです。
【一級建築基準適合判定資格者検定】
・考査A:34点
・考査B:66点
・合計:100点
・合格基準点:全体の2/3以上
出典:国土交通省「令和7年一級建築基準適合判定資格者検定要領」
【二級建築基準適合判定資格者検定】
・考査A:50点
・考査B:100点
・合計:150点
・合格基準点:全体の2/3以上
出典:国土交通省「令和6年二級建築基準適合判定資格者検定要領」
出典:国土交通省「令和7年二級建築基準適合判定資格者検定の実施について」
上記の合格基準点は、あくまで目安です。
実際の合格基準点は、その年の試験の難易度によって平均点が変動するため、数点程度前後する可能性があります。
過去の合格率
建築基準適合判定資格者検定の過去の合格率は、約30%です。
一級、二級それぞれの合格率を見ていきましょう。
【一級建築基準適合判定資格者検定】
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
実受検者数 | 938名 | 933名 | 983名 | 890名 | 984名 |
合格者数 | 274名 | 272名 | 354名 | 318名 | 377名 |
合格率 | 29.2% | 29.2% | 36.0% | 35.7% | 38.3% |
出典:国土交通省「令和6年一級建築基準適合判定資格者検定合格者の発表について(公告)」
【二級建築基準適合判定資格者検定】
2024年 | |
実受検者数 | 1154名 |
合格者数 | 347名 |
合格率 | 30.1% |
出典:国土交通省「令和6年二級建築基準適合判定資格者検定合格者の発表について(公告)」
建築基準適合判定資格者検定の学習方法
建築基準適合判定資格者検定は、建築に関する幅広い知識と、法令の深い理解が求められる難易度の高い試験です。
効果的な学習方法を取り入れることが合格への近道となります。
公式のテキストを使う
建築基準適合判定資格者検定の学習において、最も基本となるのは公式のテキストです。
国土交通省や関連団体が発行しているテキストは、試験範囲を網羅しており、正確な情報に基づいて解説されています。
これらのテキストを熟読し、基本的な知識をしっかりと身につけることが重要です。
重要な箇所はマーカーで印をつけたり、ノートにまとめたりしながら、理解を深めていきましょう。
過去問を解く
過去問を解くことは、試験対策として非常に有効な手段です。
過去問を分析することで、試験の出題傾向や難易度、自分の苦手な分野を把握できます。
過去数年分の過去問を入手し、繰り返し解くことで、問題形式に慣れ、解答スピードを向上させることができます。
間違えた問題は、テキストや参考書に戻って理解し直すことが重要です。
出典:国土交通省「一級建築基準適合判定資格者検定の過去問について」
出典:国土交通省「二級建築基準適合判定資格者検定の過去問について」
講習会に参加する
講習会では、試験範囲の重要なポイントが効率的に解説され、疑問点を直接質問する機会も得られます。
また、他の受験生と交流することで、モチベーションを維持したり、情報交換をしたりすることもできます。
積極的に講習会を活用し、合格に向けての準備を進めましょう。
まとめ
建築基準適合判定資格者検定は、建築物の安全性と適法性を確保する上で不可欠な資格であり、取得することで建築行政や民間の確認検査機関において専門家として活躍できます。
2024年の改正内容については、最新の情報を常に確認し、試験対策に反映させることが重要です。
試験は、建築基準法や関係法令に関する深い知識と、建築物の計画・設計に関する理解、そしてそれらを総合的に判断する能力が問われるため、計画的な学習が不可欠です。
公式テキストの熟読、過去問の徹底的な分析、そして講習会の活用を通じて、効率的に学習を進め、難関である建築基準適合判定資格者検定の合格を目指しましょう。