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2025.06.06

4号特例縮小とは?2025年法改正の内容や影響を徹底解説!

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2025年4月に施行された建築基準法の改正により、これまで小規模な木造建築物などに適用されてきた「4号特例」が縮小されることになりました。

これまで4号特例の恩恵を受けていた木造2階建て住宅のほとんどが、新2号建築物または新3号建築物に該当することになり、原則として4号特例の対象外となったのです。

この改正は、住宅の省エネ性能の向上や安全性の確保を目的としていますが、建築業界や家づくりを検討している方々にとって、様々な影響が予想されます。

本記事では、そもそも4号特例とは何か、今回の法改正で何が変わり、それによってどのような影響が出るのかを、分かりやすく徹底解説します。

ぜひ、今後の家づくりやリフォーム計画の参考にしてください。

 

4号特例とは?

 

4号特例とは、建築基準法で定められた小規模な建築物について、建築確認申請時の審査や提出書類の一部を簡略化することを認める制度です。

この特例は、建築士が設計・工事監理を行うことを前提として、手続きの迅速化や設計者の負担軽減を図る目的で設けられてきました。

特に木造2階建て以下の戸建て住宅の多くがこの特例の対象となっており、日本の住宅供給において大きな役割を果たしてきた制度と言えるでしょう。

しかし、近年の住宅に対する省エネ性能や耐震性への要求の高まりなどを背景に、この特例を見直す動きが出てきました。

その結果が、2025年の法改正における4号特例の縮小です。

 

法改正前の4号特例の内容

 

まずは、法改正前の4号特例の内容について確認していきます。

4号特例が適用される建築物の場合、建築確認申請において具体的にどのような点が簡略化されるのでしょうか。

主な内容は以下の2点です。

 

 

項目の一部が審査対象外となる

 

4号特例の対象となる建築物では、構造耐力関係規定等の審査の一部が対象外となります。

ただし、これはあくまで「審査が省略される」だけであり、建築士は当然ながら建築基準法に適合した設計を行う義務があります。

万が一、基準に適合しない設計・工事が行われた場合は、建築士がその責任を負うことになります。

 

出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し

 

構造計算書の提出が不要

 

大規模な建築物や特殊な構造を持つ建築物の場合、その安全性を確認するために詳細な「構造計算書」を作成し、建築確認申請時に提出する必要があります。

この構造計算書は、地震や風圧などに対して建物がどのように耐えるかを詳細に計算したもので、作成には高度な専門知識と時間を要します。

一方、4号特例の対象となる建築物(特に一般的な木造2階建て住宅など)については、この構造計算書の提出が原則として不要です。

これも、小規模建築物における設計・申請手続きの負担を軽減するための措置でした。

 

4号特例適用の建築物とは

 

建築基準法では、建築物をその規模や用途、構造によって1号から4号までに分類しています。

4号特例の対象となるのは、このうち「4号建築物」です。

 

 

4号建造物

 

具体的に4号建築物とは、以下のいずれかに該当する建築物です。

 

・木造の建築物で、階数が2以下、かつ延べ面積が500平方メートル以下、かつ高さ13メートルもしくは軒高9メートル以下のもの。

・木造以外の建築物(鉄骨造、鉄筋コンクリート造など)で、平家建て、かつ延べ面積が200平方メートル以下のもの。

 

これらの条件を満たす建築物は、建築確認の審査が一部簡略化される4号特例の適用を受けられます。

一般的な戸建て住宅の多くが、この4号建築物に該当します。

 

出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し

 

1号・2号・3号建築物

 

4号建築物以外は、1号、2号、3号建築物として分類され、原則として4号特例は適用されません。

これらの建築物は、より詳細な審査や構造計算書の提出が求められます。

 

・1号建築物:特殊建築物(劇場、病院、ホテル、学校、百貨店など)で、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの。

・2号建築物:木造の建築物で、階数が3以上、または延べ面積が500平方メートル、高さ13メートルもしくは軒高9mを超えるもの。

・3号建築物:木造以外の建築物で、階数が2以上、または延べ面積が200平方メートルを超えるもの。

 

これらの建築物は、不特定多数の人が利用したり、規模が大きかったりするため、より厳格な安全基準と審査が必要とされています。

 

2025年法改正の内容

 

2025年4月に施行された建築基準法の改正により、これまで説明してきた4号特例の扱いが大きく変わりました。

具体的には、以下の点が主な変更点です。

 

 

対象の審査項目が増加する

 

従来の4号建築物のうち、新2号建築物や新3号建築物に移行するものは、建築確認申請時の審査対象項目が増加します。

増加する審査項目の例は、以下の通りです。

 

・屋根や外壁の防火性

・居室の採光や換気

・避雷設備

・建築材料の品質 など

 

出典:国土交通省「改正建築基準法 2階建ての木造一戸建て住宅等の確認申請・審査マニュアル

 

一部提出図書が変更となる

 

審査項目が増加することに伴い、建築確認申請時に提出する図書も変更となります。

新2号建築物や新3号建築物に該当する木造建築物の場合、具体的には以下のような図書の提出が必要です。

 

・仕様表(計画概要、付近見取図、内部/外部仕上表)

・求積図、地盤算定表、配置図

・平面図

・立面図、断面図

・構造詳細図

・床面積、見付面積計算表

・壁量判定 兼 耐力壁図

・四分割法判定

・柱頭柱脚金物算定(N値計算法)

・給排水衛生・電気設備図

・計算書(採光、換気、省エネ)

・設計内容説明書(省エネ)

・機器表(省エネ)

 

これらの図書の作成には、より専門的な知識と時間が必要となり、設計者の業務負担が増加することが予想されます。

 

出典:国土交通省「改正建築基準法 2階建ての木造一戸建て住宅等の確認申請・審査マニュアル

 

建築物の分類が変更となる

 

まず、建築物の分類が変更され、新たに「新2号建築物」「新3号建築物」という区分が設けられます。

これにより、従来の4号建築物の一部が、これらの新しい区分に移行することになりました。

国土交通省の資料によると、主な変更点は以下の通りです。

 

・新2号建築物:階数2以上、または延べ面積が200平方メートルを超えるもの。

・新3号建築物:平屋かつ延べ面積が200平方メートル以下のもの。

 

これまで4号特例の恩恵を受けていた木造2階建て住宅のほとんどが、新2号建築物または新3号建築物に該当することになり、原則として4号特例の対象外となります。

 

出典:国土交通省「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について

 

4号特例縮小の目的

 

なぜ、長年運用されてきた4号特例を縮小するのでしょうか。

その背景には、主に以下の2つの目的があります。

 

 

住宅の省エネ化を促進するため

 

地球温暖化対策の一環として、住宅・建築物の省エネルギー化は緊急の課題です。

政府は2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、住宅分野におけるエネルギー消費量の大幅な削減を目指しています。

その達成のため、2025年度からは、原則として全ての新築住宅・非住宅に対して省エネ基準への適合が義務付けられます。

今回の4号特例縮小は、この省エネ基準適合義務化を実効性のあるものにするための重要な措置です。

これまで4号建築物では省エネ基準に関する審査が省略されていましたが、特例が縮小されることで、小規模な住宅においても省エネ基準への適合性がしっかりと確認されるようになります。

これにより、断熱性能の低い住宅が市場に出回ることを防ぎ、住宅全体の省エネ性能の底上げを図ります。

 

出典:環境省 脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは

 

住宅の倒壊リスクを減らすため

 

日本は地震大国であり、住宅の耐震性確保は非常に重要です。

4号特例では、構造安全性に関する審査の一部が省略されていましたが、これにより、必ずしも十分な耐震性が確保されていない住宅が建てられるリスクが指摘されていました。

特に、建築士のチェックが十分に行き届かない場合や、不適切な設計・施工が行われた場合に、地震時に倒壊などの被害が発生する可能性があったのです。

今回の法改正により、これまで審査が省略されていた構造関係規定についても確認審査の対象となることで、建築物の構造安全性がより確実に担保されるようになります。

これにより、地震や台風などの自然災害に対する住宅の抵抗力を高め、国民の生命と財産を守ることを目指しています。

 

4号特例縮小による影響

 

4号特例の縮小は、建築業界だけでなく、これから家を建てようと考えている施主にとっても様々な影響が考えられます。

 

 

ハウスメーカーやリフォーム会社の場合

 

ハウスメーカーやリフォーム会社が受ける影響を見ていきましょう。

 

工期が延びる

 

審査項目が増え、提出書類も複雑になるため、建築確認申請にかかる期間がこれまでよりも長くなる可能性があります。

特に、省エネ基準や構造安全性の詳細な審査が必要となるため、行政庁や指定確認検査機関の審査業務も増加し、結果として確認済証の交付までに時間がかかるケースが想定されます。

また、設計段階においても、これらの基準に適合させるための検討や図面作成に時間を要するため、着工までの期間が延びるでしょう。

工事開始が遅れれば、当然ながら全体の工期も延長することになります。

 

設計者の業務負担が増える

 

これまで審査が省略されていた項目について、詳細な計算や図面の作成が必要となるため、設計者の業務負担は大幅に増加すると予想されます。

特に、省エネ計算や構造計算に関する専門知識がより一層求められるようになります。

これにより、設計事務所やハウスメーカーの設計部門では、人員の増強やスキルアップ、あるいは外部の専門家への委託といった対応が必要になるかもしれません。

 

施主の場合

 

施主が受ける影響を見ていきましょう。

 

住宅価格が高騰する

 

設計業務の負担増、審査期間の長期化、そして省エネ性能や耐震性能を高めるための建材・設備のグレードアップなどにより、住宅の建築コストが上昇する可能性があります。

具体的には、断熱材の厚みが増したり、高性能な窓サッシが必要になったり、構造材の量が増えたりといったことが考えられます。

これらのコストアップ分は、最終的に住宅価格に転嫁されることが一般的です。

どの程度の価格上昇になるかは、建物の規模や仕様、依頼するハウスメーカーや工務店によって異なりますが、ある程度のコストアップは避けられません。

 

住宅の安全性が高まる

 

一方で、施主にとっては大きなメリットもあります。

それは、住宅の安全性が確実に確保されるという点です。

これまで審査が省略されていた構造安全性についても詳細なチェックが行われるようになるため、地震や台風などの自然災害に対する住宅の信頼性が向上します。

また、省エネ基準への適合が必須となることで、夏は涼しく冬は暖かい、快適で健康的な住環境が実現しやすくなります。

初期費用は高くなるかもしれませんが、光熱費の削減や、将来的な修繕費用の抑制、そして何よりも安心して暮らせるという価値を考えれば、決してマイナスばかりではないと言えるでしょう。

 

まとめ

 

2025年4月に施行された建築基準法の改正による4号特例の縮小は、日本の住宅業界にとって大きな転換点となります。

この改正は、住宅の省エネ性能の向上と安全性の確保という、現代社会において非常に重要な課題に対応するためのものです。

ハウスメーカーやリフォーム会社にとっては、設計業務の増加や工期の長期化といった課題が生じる可能性があります。

一方、施主にとっては、住宅価格の上昇という側面があるものの、より安全で快適な住まいを手に入れることができるという大きなメリットがあります。

省エネ性能や耐震性に優れた住宅は、初期投資はかかっても、長期的に見れば光熱費の削減や健康面でのメリット、そして何よりも安心感というかけがえのない価値をもたらしてくれるでしょう。

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