建築業界のリアルな情報や就職・転職活動で役立つ情報を紹介します。

お役立ち情報

2025.06.06

注文住宅の価格上昇はいつまで?原因や今後の動向を徹底解説!

サムネイル

近年、注文住宅の価格高騰が続いているのをご存じでしょうか?

注文住宅は、自由な設計が魅力である一方、価格が変動しやすい特性も持っています。

本記事では、注文住宅の価格がなぜ上昇しているのか、その具体的な原因を解説します。

注文住宅の価格の動向や価格上昇の対策についても説明するので、ぜひ最後までご覧ください。

 

注文住宅の価格上昇の実態

 

近年、注文住宅の建築費用は上昇傾向にあります。

住宅金融支援機構が発表している「フラット35利用者調査」によると、注文住宅の全国平均建築費は、2022年度には約3,715万円でしたが、2023年度には約3,861万円まで上昇しています。

わずか1年で約150万円も高くなっている計算です。

地域別に見ても、首都圏では2022年度の約4,015万円から2023年度には約4,190万円へ、その他の地域でも同様に上昇傾向が見られます。

このデータからも、注文住宅の価格上昇は全国的な現象であることが分かります。

また、住宅の床面積が同程度であっても、建築費自体が上がっているため、坪単価も上昇しているのが近年の特徴です。

こだわりの素材や設備を選べば、さらに費用はかさむ可能性があり、予算管理の重要性が増してきます。

 

出典:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査p.19

 

注文住宅が価格上昇している原因

 

注文住宅が価格上昇している原因として、以下の5つの要因が挙げられます。

 

 

建築資材不足

 

住宅建設に不可欠な建築資材の価格高騰と供給不足が、住宅価格を押し上げる大きな要因となっています。

代表的な例が「ウッドショック」です。

2020年後半から始まった世界的な木材需要の急増に対し、供給が追いつかなくなり、木材価格が大幅に上昇しました。

主な原因としては、コロナ禍からの経済活動再開に伴うアメリカや中国での住宅需要の急増、カナダでの森林火災や病害による供給減、コンテナ不足による輸送の混乱などが挙げられます。

木材だけでなく、鋼材やアルミなどの金属製品も「アイアンショック」と呼ばれる価格高騰に見舞われました。

さらに、給湯器やIHクッキングヒーター、換気システムなどに不可欠な半導体不足も、住宅設備の価格上昇や納期遅延を引き起こしています。

これらの資材価格の上昇は、住宅の建築コストに直接的に反映されるため、住宅価格全体を押し上げる要因となっています。

 

出典:経済産業省「どうなったウッドショック;価格の高止まりが需要を抑制?

 

人件費の高騰

 

建築業界における人件費の上昇も、住宅価格に影響を与えています。

建設現場で働く職人の高齢化が進む一方で、若年層の入職者が減少しており、慢性的な人手不足が続いています。

このような状況に加え、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」への対応が本格化しています。

労働環境の改善や処遇改善は急務であり、それに伴う人件費の上昇は避けられません。

優秀な人材を確保し、育成していくためには、今後も人件費は上昇していく可能性が高いと考えられます。

 

出典:厚生労働省「はたらきかたススメ 建設業

 

人手不足

 

前述の人件費高騰とも密接に関連しますが、建設業界全体の人手不足は深刻な問題です。

熟練技能者の引退が進む一方で、若手の育成が追いついていない状況があります。

国土交通省のデータによると、建設技能者数はピーク時から大幅に減少し、特に若年層の割合が低くなっています。

また、建設業の有効求人倍率は他産業と比較しても高い水準で推移しており、人材確保の難しさを示しています。

人手不足は、工期の遅延や施工品質の維持にも影響を与える可能性があり、結果としてコスト増につながることも懸念されます。

企業側も採用活動の強化やDXによる生産性向上に取り組んでいますが、短期的な解決は難しい状況です。

 

出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和7年3月調査)

 

土地価格の上昇

 

注文住宅を建てるためには、当然ながら土地が必要です。

この土地の価格も、特に都市部や利便性の高いエリアを中心に上昇傾向にあります。

公示地価や基準地価を見ると、全国的には緩やかな上昇、あるいは横ばいの地域もありますが、三大都市圏や地方中核都市の一部では依然として強い上昇が見られます。

土地価格上昇の背景には、長引く低金利政策による住宅ローンの借りやすさ、相続税対策としての不動産需要、都心回帰の動きなどが挙げられます。

また、資材価格や人件費の高騰により、建物の価格が上昇している分、少しでも費用を抑えようと比較的安価な土地に需要が集中し、結果的にそのエリアの土地価格も上昇するという現象も見られます。

 

出典:国土交通省「令和7年地価公示

 

円安

 

建築資材の多くを輸入に頼っている日本では、円安も住宅価格を押し上げる要因となります。

木材、石材、金属、住宅設備の一部など、輸入品は円安が進むほど国内での調達価格が上昇します。

2022年以降、急速に円安が進行したことは記憶に新しいでしょう。

為替レートの変動は、輸入資材のコストに直接影響し、それが住宅価格に転嫁されることになります。

エネルギー価格の高騰も、円安と関連して住宅価格に影響を与えます。

資材の製造や輸送にかかるエネルギーコストが増加するためです。

円安の影響もあり、注文住宅の価格上昇を引き起こしています。

 

注文住宅の価格の動向

 

気になるのは「この価格上昇はいつまで続くのか」という点です。

結論から言うと、専門家の間でも意見が分かれており、一概に「いつまで」と断言するのは難しい状況です。

建築資材については、ウッドショックは一時期のピークを過ぎて沈静化の兆しを見せているものの、依然としてコロナ禍以前と比べると高水準で推移しています。

世界情勢の不安定さや、サプライチェーンの脆弱性も残っており、再び価格が急騰するリスクも否定できません。

半導体不足も徐々に解消に向かっているとの見方もありますが、住宅設備への影響が完全になくなるまでには時間を要するでしょう。

人件費や人手不足の問題は、建設業界の構造的な課題であり、短期的な解決は困難です。

2024年問題への対応が本格化する中で、人件費は今後も上昇傾向が続くと予想されます。

土地価格については、エリアによって動向が異なります。

都市部や人気エリアでは当面、高止まりもしくは緩やかな上昇が続く可能性がありますが、地方や郊外では下落するエリアも出てくるかもしれません。

金融政策の動向、特に金利の変動も土地価格に影響を与えるため注意が必要です。

円安については、為替市場の動向次第であり予測が難しいですが、急激な円高に戻る可能性は低いと見る専門家が多いようです。

総合的に考えると、注文住宅の価格がすぐに大幅に下落することは考えにくく、当面は高止まり、もしくは緩やかな上昇が続く可能性が高いと見られています。

ただし、資材価格の安定や円高への揺り戻しなどがあれば、一部で価格上昇が抑制される可能性もゼロではありません。

 

注文住宅の価格上昇の対策

 

価格上昇が続くと予想される中で、注文住宅の夢を諦める必要はありません。

いくつかの工夫や対策を講じることで、予算内で理想の住まいを実現することは可能です。

 

 

土地代を削減する

 

建物本体の価格をコントロールするのが難しい場合、土地代を抑えることは有効な手段です。

都心部や駅近の利便性の高いエリアは魅力的ですが、少し郊外に目を向けたり、最寄り駅からの距離を許容したりすることで、土地の価格を大幅に抑えられます。

将来的な交通網の整備計画なども考慮に入れると良いでしょう。

また、正方形や長方形の整形地は人気が高く価格も高めですが、旗竿地や変形地、傾斜地などは比較的安価な場合があります。

設計の工夫次第で魅力的な住まいを建てることも可能です。

ただし、別途造成費用がかかる場合もあるため、総額で比較検討することが重要です。

 

床面積を抑える

 

建物の床面積は、建築費用に直接影響します。

無駄なスペースをなくし、コンパクトで機能的な間取りを考えることで、建築コストを抑えられます。

例えば、リビングやダイニングを中心に各部屋を配置するなど、廊下を極力少なくする工夫で床面積を有効活用できます。

他にも、本当に必要な部屋数を見直し、多目的に使えるスペースを検討するのも良いでしょう。

また、ウォークインクローゼットや小屋裏収納などを効果的に配置することで、各部屋に大きな収納家具を置く必要がなくなり、居住スペースを広く使えます。

建物の形状が複雑になると、材料費や工事費が増加します。

凹凸の少ないシンプルな箱型のデザインは、コストを抑えやすいためおすすめです。

 

不要な窓やドアなどを減らす

 

窓やドアの数、種類もコストに影響します。

採光や通風に必要な窓は確保しつつ、不要な窓を減らしたり、サイズを小さくしたりすることでコストダウンにつながります。

ただし、快適性やデザイン性とのバランスを考えることが重要です。

また、引き戸は開閉スペースが不要で便利ですが、開き戸に比べてコストが高い場合があります。

設置場所に応じて適切な種類のドアを選びましょう。

 

断熱性能が高い住宅を選ぶ

 

初期費用は高くなる可能性がありますが、長い目で見ると断熱性能の高い住宅を選ぶことは賢明な選択です。

断熱性能の高い住宅のメリットを以下にまとめました。

 

光熱費の削減 断熱性能が高い住宅は、冷暖房効率が良く、月々の光熱費を大幅に削減できます。

エネルギー価格が高騰している昨今、このメリットは非常に大きいです。

快適な室内環境 夏は涼しく冬は暖かい、一年を通して快適な室温を保ちやすくなります。

部屋間の温度差も少なくなるため、ヒートショックのリスクも軽減できます。

 

価格上昇の対策として、目先のコストダウンだけでなく、長期的な視点でのコスト(ランニングコスト)や快適性、健康面も考慮することが重要です。

 

注文住宅関係の補助金・減税制度を活用する

 

国や自治体は、住宅取得を支援するための様々な補助金や減税制度を用意しています。

これらを活用することで、実質的な負担を軽減することができます。

 

補助金・減税制度 概要
住宅ローン減税 年末の住宅ローン残高に応じて、所得税や住民税が一定期間控除される制度です。

省エネ性能の高い住宅ほど控除額が大きくなる傾向があります。

こどもエコすまい支援事業 子育て世帯や若者夫婦世帯が対象となる場合が多いですが、省エネ性能の高い住宅の新築やリフォームに対して補助金が交付されます。

制度内容は年度によって変わるため、常に最新情報を確認しましょう。

ZEH補助金 ZEHやNearly ZEH、ZEH Orientedなどの基準を満たす住宅を新築する場合に受けられる補助金です。
自治体独自の補助金・助成金 お住まいの市区町村によっては、独自の住宅取得支援制度や、太陽光発電システム設置への補助金などを設けている場合があります。

 

出典:国土交通省「住宅ローン減税

出典:国土交通省「こどもエコすまい支援事業

出典:ZEH補助金サイト「トップページ

 

上記の制度は、申請期間や条件、予算上限などが定められています。

計画段階から情報収集を行い、利用できるものは積極的に活用しましょう。

ハウスメーカーや工務店の担当者も詳しい情報を持っていることが多いので、相談してみるのがおすすめです。

 

まとめ

 

注文住宅の価格上昇は、建築資材の高騰、人件費の上昇、人手不足、土地価格の上昇、円安など、様々な要因が絡み合って発生しています。

今後も当面は価格が高止まり、もしくは緩やかに上昇する可能性が高いです。

しかし、土地の選び方や建物の設計、設備の選定などを工夫することで、コストをコントロールすることは可能です。

また、断熱性能の高い住宅を選んだり、補助金や減税制度を上手に活用したりすることで、長期的な視点でお得に、そして快適な住まいを実現できます。

この記事をシェア

tag