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2025.05.30

【大阪・関西万博2025】住友館など国内パビリオンを徹底解説!

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現在開催中の大阪・関西万博2025は、未来の都市像、技術革新、そして新たなライフスタイルを提示する場となっています。

特に、日本の知恵と技術の粋を集めた国内パビリオンは、世界中から集まる来場者を魅了し、連日多くの人々で賑わっています。

建築家にとって、これらのパビリオンは単なる展示施設ではありません。

デザインの思想、最先端の技術、そして社会課題へのアプローチを肌で感じ、自身のキャリアを考える上で示唆に富む学びの場となるでしょう。

本記事では、注目の国内パビリオンを1つずつ徹底解説します。

会期中の今だからこそ感じられる、それぞれのパビリオンが持つメッセージと、そこから得られるインスピレーションを、ぜひ皆さんのキャリア形成に役立ててください。

 

Better Co-Being

 

大阪・関西万博のテーマ事業「いのちを響き合わせる」を体現するシグネチャーパビリオンが、「Better Co-Being」です。

このパビリオンは、慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏がプロデュースを手がけ、そしてその建築設計は世界的に著名なSANAA(妹島和世氏、西沢立衛氏)が担当しています。

建築家としての視点から見ると、このパビリオンは従来の建築の概念を大きく覆す、挑戦的なデザインが特徴です。

「Better Co-Being」パビリオンは、万博会場中央の「静けさの森」と一体となるように設計されており、屋根や壁といった一般的な建築要素を排除しています。

代わりに、森に溶け込むような不定形の大屋根が敷地全体を覆い、地上にはそれを支える細い柱のみが配置されています。

高さ11mに位置する四層のシルバーグリッド状のキャノピーは、精密に設計された柱と接合部によって、まるで雲のように軽やかに浮かんでいるかのような印象を与えます。

SANAAが目指したのは、囲い込むのではなく、つながりと広がりを重視する建築です。

風雨を遮断する機能を持たず、自然の中に佇むアートのための装置としての役割を担っています。

このデザインは、「Better Co-Being」の理念、すなわち人々と世界をつなぎ、未来の可能性を広げるというコンセプトを建築として具現化しています。

キャノピーは空の認識を変化させ、太陽や雲といった自然の変化を繊細に伝えることで、来場者に新たな体験を提供します。

 

出典:Better Co-Being「建築について

 

いのちの未来

 

大阪・関西万博のシグネチャーパビリオンの1つ「いのちの未来」は、ロボット工学の第一人者である石黒浩氏がプロデュースを手がける、未来への問いかけに満ちた空間です。

その建築デザインは、「水」と「渚」をモチーフとし、これからの建築が自然環境といかに調和し、インタラクティブな体験を創出するかを示唆しています。

このパビリオンは、大地からせり上がったような特徴的な形状をしており、外観全体が流れる水に包まれているのが特徴です。

周囲の水面は波打ち、まるで地球のダイナミズムを彫り込んだかのような印象を与えます。

全周軒高12mのカテナリー形状をした外壁は、ポリ塩化ビニールとカーボンファイバーメッシュの二重膜で構成され、流体的な5つの開口部が、内部空間への誘いとなっています。

この真っ黒な外壁は、水の輝きを際立たせ、神秘的な雰囲気を醸し出しています。

また、パビリオンの内部は、「ZONE1 いのちの歩み」「ZONE2 50年後の未来」「ZONE3 1000年後のいのち“まほろば”」の3つの空間で構成されています。

特に注目すべきは、骨格中央に位置する直径約10m、高さ17mの筒状空間「まほろば」です。

この空間は、1000年後の未来という抽象的かつ象徴的な設定を超え、鑑賞者の自由な想像力を誘い、「自らが考えるいのちの未来へのゲート」となることを目指しています。

この革新的なパビリオンの建築・展示空間ディレクターは遠藤治郎氏(SOIHOUSE)、建築・展示空間プロジェクトマネージャーは住吉正文氏(ファロ・デザイン)が務め、基本・実施設計・監理は石本建築事務所が担当しています。

彼らは、単なる展示施設ではなく、「いのち」という深遠なテーマを建築空間を通して体験させるという壮大な目標に挑みました。

水、膜、光、そして空間のシークエンスが一体となり、来場者に未来への思索を促す設計は、今後の建築設計の可能性を広げる一例となるでしょう。

 

出典:いのちの未来「公式サイト

 

いのちの遊び場 クラゲ館

 

大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」は、音楽家・数学研究者・STEAM教育家である中島さち子氏がプロデュースし、小堀哲夫建築設計事務所の小堀哲夫氏が建築デザインを手がけました。

このパビリオンは、「いのちを高める」をテーマに、漂うクラゲの神秘性や、言葉では説明しきれないゆらぎの世界を表現しています。

パビリオンの建築デザインは、その名の通りクラゲのような膜屋根が特徴です。

この膜屋根は、日射抑制の役割も果たしながら、万物や人々の持つゆらぎの世界を象徴しています。

敷地には自生種による植生が施され、起伏に富んだ土手のような「プレイマウンテン」が設けられています。

空間は、地上の「いのちのゆらぎ場」と地階の「いのちの根っこ」に大きく分けられます。

プレイマウンテンを登った先には、4600本以上もの吉野杉の角材が組み合わされた「創造の木」がそびえ立ち、圧巻の風景を作り出しています。

また、中世から現在まで生産が続く代表的な日本の6箇所の窯で焼かれたクレイバーが並ぶ「土のカーテン」も、その質感と歴史を感じさせる要素として空間に深みを与えているのです。

「いのちの遊び場 クラゲ館」は、単なる展示を見るだけでなく、来場者が自らの感覚を通じて「いのち」や「創造性」と向き合う多様な体験を提供します。

「わたしを聴く」「わたしを祝う」「Co-クラゲ」といった体験型コンテンツに加え、「希望のピアノ」や「転生オルガン」など、来場者の行動によって変化するインタラクティブな展示が満載です。

建築家にとっては、膜構造による軽やかな大屋根のデザインと、自然の起伏を取り込んだランドスケープの融合が大きな見どころとなるでしょう。

また、吉野杉や各地のクレイバーといった自然素材を大胆に、かつ繊細に用いることで、空間に温かみと多様な表情を与えている点も注目に値します。

このパビリオンは、建築がどのようにして人々の創造性を刺激し、多角的な感覚体験を提供できるかを示す好例です。

 

null²

 

大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「null²」(ヌルヌル)は、メディアアーティストの落合陽一氏がプロデュースし、NOIZの豊田啓介氏が建築デザインを手がける、デジタルと物理空間が融合した挑戦的な建築です。

「null²」パビリオンは、特殊な鏡面膜で構成された大小の立方体が集まってできています。

これらの立方体は、内部に設置されたロボットアームによって絶えず歪み、伸び縮みする鏡で構成されているため、まるで生き物のようにヌルヌルと動き、周囲の風景を歪めて映し出します。

その外観は、鏡面の彫刻そのものであり、建築家にとって、この動的建築の可能性は非常に刺激的です。

ロボットアームと可変ミラーを組み合わせることで、建築が時間とともにその形態や空間体験を変化させるという、新たな領域を追求しています。

光、反射、映像を巧みに操り、来場者の知覚に直接訴えかける空間設計は、体験デザインの新たな領域を開拓しており、建築とアートの融合を示す重要な事例です。

特殊な鏡面膜やLED技術といった先端素材とデジタルファブリケーション技術が、どのように建築表現に落とし込まれているのかも、建築家として深く考察する価値があります。

 

出典:null²「特設サイト / Special Site

 

いのち動的平衡館

 

生物学者の福岡伸一氏がプロデュースする「いのち動的平衡館」は、大阪・関西万博のシグネチャーパビリオンの中でも、「動的平衡」という生命の普遍的な概念を建築を通して表現する、深い哲学を持つ空間です。

NHAの橋本尚樹氏が建築を手がけ、生命の姿を映し出すかのような有機的なデザインが特徴です。

このパビリオンは、緩やかな曲線を描く淡いペールピンク色の膜屋根が印象的です。

それはまるで、生命を包み込む1枚の薄い膜がふわりと大地に降り立ったかのような、軽やかで有機的なフォルムをしています。

内部には1本の柱もなく、直径400mm、周囲全長136mの1本の鋼管と、それらを繋ぐケーブルの張力だけで自立する革新的な構造を採用しています。

生命が絶えず形を変えながらバランスを取るように、この建築もまた、常に形を変えながら自立する「うつろう建築」として、見る者に「動的平衡」の概念を視覚的に訴えかけているのです。

建築家にとっては、内部無柱空間を実現する革新的な構造システムは大きな見どころです。

1本の鋼管とケーブル張力のみで広大な膜屋根を支持するという挑戦的な設計は、構造と意匠が高度に融合した事例として、今後の建築設計のヒントとなるに違いありません。

また、生命という抽象的なテーマを、建築の形態、構造、そして光の演出によって具体的に表現する手法は、建築が持つメッセージ性を最大限に引き出すための参考となるでしょう。

 

いのちめぐる冒険

 

「いのちめぐる冒険」パビリオンは、アニメーション監督、メカニックデザイナー、ビジョンクリエーターとして多岐にわたり活躍する河森正治氏がプロデュースし、小野寺匠吾建築設計事務所の小野寺匠吾氏が建築を手がけました。

このパビリオンは、「いのちは合体・変形だ!」というコンセプトを掲げます。

建築そのものが「いのち」の多様性と変容を体現する、斬新な試みです。

パビリオンは、コンクリートパネルと鉄骨フレームからなる2.4m立方の構造体、すなわち「セル(細胞)」が集合して構成されています。

これは、1つの立方体を最小単位として、様々な細胞が集まって生命が構成される様子を建築で表現しているのです。

ランダムに積み上げられた構造体は、多くの隙間や空間の連なりを生み出し、多様な生命を育む「礁」のように、来場者の感性を刺激し、生命のダイナミズムを感じさせる建築となっています。

このパビリオンでは、新しい素材の活用も注目されます。

コンクリートパネルには真水ではなく海水が混ぜられた新素材が使用され、内部には鋼線ではなく炭素繊維ケーブルが使われることで、長寿命化が図られています。

さらに、鉄骨フレームのユニットは会期後の再利用が前提となっており、建築の持続可能性への配慮が設計思想に深く組み込まれています。

これは、建築家にとって、新たな素材の可能性と循環型社会における建築の役割を考える上で重要な示唆を与えてくれるでしょう。

 

出典:shojikawamori OFFICIAL WEB 「いのちめぐる冒険

出典:shojikawamori OFFICIAL WEB「創造の源

 

EARTH MART

 

放送作家の小山薫堂氏がプロデュースし、世界的な建築家・隈研吾氏が建築設計を手がける「EARTH MART」パビリオンは、食を通じて地球環境や飢餓問題に向き合い、**「新しい食べ方」**を共に考える場を提供します。里山の営みの循環を象徴する茅葺き屋根をまとったこの建築は、まさに日本の伝統と未来へのビジョンが融合した空間です。

 

茅葺き屋根が語る循環の物語

 

「EARTH MART」の最も印象的な特徴は、日本全国5地域(熊本県阿蘇市、静岡県御殿場市、大阪市淀川区、滋賀県近江八幡市丸山町、岡山県真庭市蒜山高原)から集められた茅で構築された巨大な茅葺き屋根です。

45度の勾配を持つこの屋根は、雨水を効率的に流すだけでなく、万博後にはアップサイクルされる計画であり、持続可能な建築のあり方を示唆しています。

隈研吾建築都市設計事務所の若手建築家たちが提案した約50ものアイデアの中から選ばれたこのデザインは、かつての里山にあった人間と自然の営みの「循環」を象徴しています。

パビリオン内部は、「いのちのフロア」と「未来のフロア」の二つのゾーンに分かれ、食への感謝を促し、未来のより良い食生活への洞察を与える約20の展示が設けられています。

「いのちのフロア」では、食を「いのち」として捉え、他の生命や自然への感謝を促します。

一方、「未来のフロア」では、伝統的な食の技術から最先端のフードテックまでが紹介され、世界の知恵と技術を組み合わせ、共有することで、食の未来をより良くする可能性を探ります。

建築家にとって、このパビリオンは伝統的な素材である茅を現代建築に昇華させるデザイン手法や、地域ごとの茅を集めるというプロセスから生まれる物語性、そして持続可能性への具体的なアプローチが大きな学びとなるでしょう。

また、食という普遍的なテーマを建築空間と展示体験によって多角的に表現し、来場者の意識変革を促す設計思想も、これからの建築に求められる社会的な役割を考える上で重要な示唆を与えてくれます。

 

出典:EARTH MART「公式サイト

 

Dialogue Theater –いのちのあかし–

 

映画監督の河瀨直美氏がプロデュースし、周防貴之氏(SUO)が建築を手がける「Dialogue Theater –いのちのあかし–」は、分断が広がる現代社会において、「対話」を通じて相互理解を深め、より良い未来を共創することを目指すパビリオンです。

この建築は、古いものに新しい息吹を吹き込み、時と記憶を継承するという、建築家にとって非常に示唆に富むアプローチをしています。

このパビリオンは、奈良県十津川村と京都府福知山市から移築された二つの木造校舎を基に構築されています。

建築デザインは、古い木造の骨組み、瓦屋根、板壁といった既存の要素を尊重しつつ、コンクリートやガラスといった新しい素材を巧みに組み合わせているのが特徴です。

これにより、古き良きものの温かさと、現代的なデザインが融合した独特の空間が生まれています。

元の校舎の敷地にあった樹齢100年のイチョウの木やツタなども取り入れられ、移築された建築に新たな「いのち」を吹き込み、そこに刻まれた時間や記憶を大切にする設計思想が貫かれています。

建築家にとって、このパビリオンは既存建物をいかに「再利用」し、そこに新たな「価値」を見出すかという現代の問いかけに対し、実践的なヒントを与えてくれるでしょう。

単なる保存ではなく、新たな機能と意味を与えて現代に蘇らせる手法は、サステナブルな建築デザインの可能性を広げます。

また、建築が物理的な構造物であると同時に、人々の交流や精神的な体験を促す「対話の場」として機能するという視点も、これからの建築のあり方を考える上で重要なヒントとなります。

 

出典:Dialogue Theater –いのちのあかし–「公式サイト

 

住友館

 

住友館の最大の特徴は、住友グループの発展の礎である四国「別子銅山」の峰々から着想を得た、雄大な外観デザインです。

直線を連続させることで優美な曲面を表現した大屋根は、まるで山々が連なるかのようなダイナミックな景観を創り出し、パビリオンのテーマである「UNKNOWN FOREST」を象徴しています。

このパビリオンの建設には、住友グループが保有する「住友の森」から伐採されたヒノキやスギなどの木材が全面的に活用されています。

中には1970年の大阪万博の年、あるいはそれ以前に植林された歴史ある木々も含まれており、「1本1本のいのちを大切にしたい」という深い想いが込められています。

木材を薄くスライスして合板に加工したり、加工後に残った芯材をベンチに再利用したりと、資源を余すことなく大切に使う工夫が凝らされており、森の恵みと人の技術が融合した、サステナブルな建築の姿を体現しています。

建築家として、伝統的な木材を大規模建築に応用する技術、そして資源循環を設計プロセスに組み込む思想は、非常に示唆に富むでしょう。

また、住友館の実現には、複数の企業がその専門性を結集しています。

 

【基本設計:株式会社電通ライブ × 株式会社日建設計】

 

企画・制作に強みを持つ電通ライブと、総合的な設計力で知られる日建設計が協働し、住友館の創造的なビジョンを具現化しました。

日建設計は、その創業以来培ってきた意匠性、機能性、安全性、そして環境への配慮を重視した設計思想を住友館に注ぎ込み、住友グループの伝統と革新性を表現する外観、快適な内部空間、効果的な自然光の取り入れ、環境負荷を低減する素材選定、省エネルギー技術の導入など、多岐にわたるサステナブルな側面を実現しています。

東京スカイツリーなどのランドマークを手がけてきた同社の技術力とデザイン力が、独創的なフォルムと質の高い建築空間を両立させています。

 

【実施設計・建設:株式会社電通ライブ × 三井住友建設株式会社】

 

基本設計で描かれた夢を現実のものとする実施設計では、引き続き電通ライブが空間演出やシステムインテグレーションを担当し、来場者の体験価値を最大化するための細部にわたるクリエイティブなディレクションを行いました。

建設を担ったのは、国内有数のスーパーゼネコンである三井住友建設です。

同社は、住友館のような特徴的な木材を多用する建築において、その調達から加工、現場での施工に至るまで、高度なノウハウと精密な管理を実践しました。

資材価格の上昇や熟練技能者の確保といった課題がある中で、独創的なデザインの実現と、短期間での高品質施工を両立させた総合的なプロジェクトマネジメント能力は、建築・建設業界における新たな挑戦としても注目されます。

建設過程における環境負荷の低減や、解体後の資材リサイクルへの取り組みも、持続可能性を高める上で重要な役割を果たしています。

このように、住友館は単なる展示施設に留まらず、伝統と革新、自然と技術、そしてサステナビリティが融合した、未来の建築のあり方を示す象徴的な存在と言えるでしょう。

 

出典:EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト「国内パビリオン

出典:住友グループ広報委員会「大阪・関西万博「住友館」

出典:日経クロステック「ヒノキとスギで覆う万博パビリオン「住友館」、グループの母なる別子銅山イメージ

出典:株式会社電通ライブ「公式サイト

出典:株式会社日建設計「公式サイト

出典:三井住友建設株式会社「公式サイト

 

大阪ヘルスケアパビリオン

 

大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を力強く体現する「大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Reborn」は、大阪府、大阪市、そして地元経済界が一体となって推進した注目の施設です。

このパビリオンは、健康寿命の延伸やQOLの向上といった現代社会の課題に対し、未来志向のソリューションを提示する場となっています。

その愛称「Nest for Reborn」(再生のための巣、新たな自分へ生まれ変わる場所)が示す通り、訪れる人々が心身共にリフレッシュし、未来の健康へ向けて新たな一歩を踏み出すための、温かく包容力のある空間を創造しています。

館内の展示は、単に最先端の医療技術を紹介するだけでなく、「食」「運動」「睡眠」「癒やし」といった日々の生活に密接に関連する多角的な視点から「ヘルスケア」を捉え直しています。

来場者一人ひとりが自分らしいウェルビーイングなライフスタイルを見つけるためのヒントを提供し、最新のテクノロジーを駆使した体験型展示や健康チェックができるコーナーが、未来のヘルスケアの可能性を実感させてくれます。

大阪ならではの豊かな食文化を活かした、健康に配慮しつつも美味しい「未来食」の提案も行われ、五感を通じて楽しみながら学べる工夫が凝らされているのが特徴です。

大阪ヘルスケアパビリオンの基本設計は、90年以上の歴史を持つ株式会社東畑建築事務所が担当しました。

同社は、医療・福祉施設設計における国内トップクラスの実績と深い知見を有しており、高い機能性と洗練されたデザイン性を両立させながら、人間中心の温かみのある空間づくりに定評があります。

この経験と専門性が、利用者や医療従事者の視点に立った機能的かつ心理的にも配慮された環境づくりに活かされ、パビリオンの創造的な骨子を形成しました。

実施設計においても、東畑建築事務所は基本設計のビジョンを忠実に守りながら、構造計算の精密化、各種設備の詳細設計、内外装の仕上げ材選定、そして多様な展示計画との緻密な整合性を図る調整を行いました。

ECI方式の下、施工者である竹中工務店との早期からの協議を通じて、施工性、コスト、工期に関する実践的な知見が設計段階から反映され、より実現性の高い計画へと昇華されています。

年齢や身体的な特性に関わらず誰もが快適に利用できるユニバーサルデザインの導入、リラックス効果や集中力を高めるための照明計画、心地よい音環境の創出など、医療・福祉施設設計で培われた細部への徹底した配慮と利用者本位の設計思想が、ヘルスケアパビリオンならではのきめ細やかな配慮がなされた設計として具現化されました。

このパビリオンは、建築がどのように人々の健康や生活の質向上に貢献できるか、そして、社会課題解決のためのプラットフォームとなり得るかを示す好例です。

建築家にとって、「いのち」をデザインする未来の可能性を深く考察する機会となるでしょう。

 

出典:EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト「国内パビリオン

出典:株式会社東畑建築事務所「公式サイト

 

まとめ

 

現在開催中の大阪・関西万博2025の国内パビリオンは、単なる展示空間を超え、未来の建築と社会のあり方を示す貴重な場となっています。

SANAAによる開放的なデザイン、石黒浩氏が描く水の建築、クラゲをモチーフにした有機的な空間、落合陽一氏の動的な鏡面建築、福岡伸一氏の動的平衡を体現する膜構造、河森正治氏の細胞型ユニット、そして隈研吾氏の茅葺き屋根が象徴する循環型社会、さらには東畑建築事務所による人間中心のヘルスケア空間まで、各パビリオンはそれぞれのテーマを深く掘り下げ、建築の多様な可能性を提示しています。

これらのパビリオンは、サステナビリティ、先端技術の融合、伝統と革新、そして利用者体験の最大化といった、現代そして未来の建築家が直面する重要なテーマへの具体的な回答を示しています。

建築家として、これらの先駆的な取り組みから得られる知見は、皆さんのキャリア形成やこれからの建築デザインを考える上で、かけがえのないインスピレーションとなるでしょう。

ぜひ現地で、これらの建築が放つメッセージを肌で感じ取ってください。

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