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2025.02.01

建築設計図書とは?設計図・施工図との違いを解説

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みなさんは、建築設計図書について知っていますか?

中には「言葉は聞いたことがあるけど、よく分からない」という方もいるでしょう。

そこで本記事では、建築設計図書について解説します。

名前が似ている設計図や施工図との違いも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

建築設計図書とは?

 

建築設計図書とは、建築物の設計内容を施工者に正確に伝えるための書類や図面のことです。

平面図、立面図、断面図などの「設計図」や、工事の具体的な内容や方法が記載されている「仕様書」などが建築設計図書に含まれます。

 

設計図・施工図との違い

 

ここからは、設計図と施工図との違いを解説します。

 

種類 内容
建築設計図書 建築物の設計内容を施工者に正確に伝えるための書類や図面のこと。

設計図や仕様書などが含まれる。

設計図 建築工事を行う際に必要な図面のこと。

平面図、立面図、断面図などが含まれる。

施工図 実際に建物を建設する際に必要な図面のこと。

施工図には、設計図に記載されていない詳細な施工情報が含まれる。

 

建築設計図書は4種類

 

建築設計図書は、建築基準法やその他の法令に適合するように作成され、建物の計画や設計に関する重要な役割を果たします。

主な役割としては、クライアントへのプレゼンテーション、施工業者との契約、自治体への建築確認申請、工事費用の見積もりなどが挙げられます。

ここでは4種類の設計図書「意匠図」「構造図」「設備図」「外構図」について解説します。

 

 

意匠図

 

意匠図は、建物の外観や内観などデザインに関する情報を表す図面です。

建物の「顔」ともいえる部分で、完成後の建物をイメージしやすいように、平面図や立面図、場合によってはパースと呼ばれる立体的な図面が用いられます。

平面図では、部屋の配置や広さ、建具の位置などが視覚的に理解できるように示されます。

 

構造図

 

構造図は、建物の構造部分に焦点を当てた図面です。

建物の強度や安全性を確保するための重要な設計情報が含まれており、地震や強風などの外力に対して耐えられるように構造計算が行われます。

また長期間に渡り安全に使用できるよう、耐久性を考慮した設計もこの図面に盛り込まれています。

 

設備図

 

設備図は、建物の電気、給排水、空調などの設備に関する情報を示す図面です。

例えば、電気配線のルートやコンセントの配置、水道や排水管の位置などが詳細に描かれています。

これにより快適な生活環境を提供するだけでなく、安全性を確保するための設計も施されます。

さらに近年では、省エネ設備の需要が高まっており、電力やガスの消費状況をモニターで管理したり、家電機器を自動制御するシステムが導入されるケースも多くなりました。

 

外構図

 

外構図は、建物本体以外の造作物や設置物に関する情報を示す図面です。

駐車スペース、門、塀、庭園、植栽などの外構部分の情報が詳細に記載されています。

 

建築設計図書の基本製図

 

続いて、建築設計図書の基本製図の基準について解説します。

用紙、文字、線、尺度、寸法などの表示、表示記号に分けて見ていきましょう。

 

 

用紙

 

原図の用紙サイズは、A1またはA3です。

長辺を横方向で使用し、用紙の余白は、左側に20mm以上、その他の辺は5mm以上を確保するのが基本となっています。

 

文字

 

文字は、漢字、かな、ローマ字、アラビア数字で記載し、外来語はカタカナで記載します。

数字は一般的にアラビア数字を使用し、漢字はゴシック体が推奨されてます。

A1サイズの用紙に記載する際の文字の大きさは、以下の通りです。

 

一般文字:文字高さ 4.0以上 文字幅3.5以上

タイトル:文字高さ 10.0以上 文字幅8.0位以上

 

 

線は、主に「実線」「破線」「点線」「一点鎖線」「二点鎖線」の5種類があります。

実線は建物の輪郭や切断面、破線は見えない部分や想像線、一点鎖線は中心線や切断線として使用します。

また、A1サイズの用紙に記載する線の幅は、「極太線」「太線」「細線」の3種類です。

 

尺度

 

尺度は、以下の13種類があります。

 

・1/1 ・1/10 ・1/100 ・1/600

・1/2 ・1/20 ・1/200

・1/3 ・1/30 ・1/300

・1/5 ・1/50 ・1/500

 

図面内には、必ず以上のような尺度を明記します。

 

寸法などの表示

 

寸法表示は、ミリメートル(mm)を基本単位とし、通常は単位を省略して数値のみを記入します。

ただし、ミリメートル以外は、その単位記号を記載するのがルールです。

 

表示記号

 

平面表示記号は、以下のように定められています。

 

・縮尺1/100や1/200の図面には、「建築工事設計図書作成基準」の表に記載されている記号を使用する。

・表に無いものは尺度に応じて実形を表示し、説明を記載する。

 

材料構造表示記号は、以下のように定められています。

 

・「建築工事設計図書作成基準」の表に記載されている記号を使用する。

・表示記号に該当するものが無い場合は端部のみを記載し、中央部は省略可能である。

 

建具開閉表示記号は、以下のように定められています。

 

・「建築工事設計図書作成基準」の表に記載されている記号を使用する。

・表に無いものは実形に応じた建具開閉表示記号を記載して説明する。

 

参考:国土交通省「建築工事設計図書作成基準

 

施工図の種類

 

ここからは、施工図の種類について詳しく解説します。

施工図は、実際に建物を建設する際に必要な図面です。

建築士が作成した設計図書を基にして、施工者が具体的な施工に適した図面を作成します。

このように、別途施工図が作成される理由は、建築現場には元請業者から下請業者まで多くの異なる職種の人材が関わっており、情報の共有と作業ミス防止が重要だからです。

また、施工図には設計図書に記載されていない詳細な施工情報が含まれます。

例えば、ドアの取り付け位置や使用する素材、正確な寸法などが詳しく書かれており、ドアが問題なく使えるようにするための具体的な指示が示されているのです。

施工図は工事監理の際にも使用され、工事の進行状況を確認するための重要な役割を果たします。

 

 

仮設図

 

仮設図は、建築工事に伴い設置される仮設構造物についての図面です。

建物の本体を建てる際に必要な足場やクレーン、作業通路などの配置が示されており、安全かつ効率的に工事を進行する役割を果たしています。

 

【主な内容】

・足場の種類と配置

クレーンの設置位置

・仮囲い(工事現場を囲む柵)の設置場所

・仮設通路、仮設電源、仮設水道などの配置

 

躯体図

 

躯体図は、建物の骨格部分である柱や梁、壁など、建物の強度や耐久性を支える構造体に関する図面です。

詳細な寸法や使用する材料が記載された図面なので、建物の構造設計に基づいた正確な施工を実現するために欠かせません。

躯体図は構造計算により作成され、建物の安全性を確保するために重要な役割を担っています。

 

【主な内容】

・柱や梁の配置と断面

・壁の厚さや種類

・基礎の形状と配筋

・鉄骨構造物の接合部詳細

 

仕上げ図

 

仕上げ図は、建物の内外装に関する仕上げ部分の情報を示した図面です。

この図面には建物の完成図が具体的に反映されており、使用する材料や施工方法が詳しく記されています。

仕上げ図の役割は、設計図に基づいた意匠を実現し、内外装資材や施工方法を決定することです。

これにより、建物の美観や快適性が向上します。

 

【主な内容】

・外壁の材料と色

・内装の壁や天井の仕上げ材

・床材の種類と貼り方

・窓やドアの種類と取付方法

 

定番建築CAD5選

 

最後に、建築設計図書作成で使える定番の建築CADを5つ紹介します。

 

1.AutoCAD(オートキャド)

2.VectorWorks(ベクターワークス)

3.ArchiCAD(アーキキャド)

4.ARCHITREND ZERO(アーキトレンド ゼロ)

5.SketchUp(スケッチアップ)

 

それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

 

①AutoCAD(オートキャド)

 

AutoCADは、Autodesk社が開発した汎用CADで、建築以外の分野でも広く使用されています。

高度な2D作図から3Dモデリング、ビジュアライゼーションなど機能が充実しているのが特徴です。

また、ドアや窓など8,000以上の要素を、建築オブジェクトとして利用できます。

効率的かつスピーディに設計図面を作成できるため、多くの設計事務所で使用されているのです。

 

②VectorWorks Architect(ベクターワークスアーキテクト)

 

VectorWorks Architectは、エーアンドエー株式会社が提供している建築設計向けのCADです。

建築設計や内装、設備、BIMなどに活用できる専門機能が充実しており、3Dデータを活用したインテリア設計やBIMに対応した空間計画もできます。

また、作成したモデルはワークシートに集計して活用できるため、ミスを減らし作業を効率化できるでしょう。

 

③ArchiCAD(アーキキャド)

 

ArchiCADは、Graphisoft社が開発した建築専用の3D CADです。

3Dモデリング機能はもちろん、「BIM」にも対応しています。

2D図面は3Dモデルから自動生成されるため、正確かつ整合性のある設計ができるのです。

また、作成したモデルはチームワーク機能を使用し、複数の設計者が同時に作業できます。

これにより、各チームや取引先とのコミュニケーションもスムーズになるでしょう。

 

④ARCHITREND ZERO(アーキトレンド ゼロ)

 

ARCHITREND ZEROは、福井コンピュータアーキテクト社が開発した建築設計用3D CADです。

日本の建築様式や規格に特化しており、和風建築の設計にも対応しています。

また、CAで作成したモデルをVRで体験可能な「ARCHITREND VR」や、内観・外観はもちろん、ウォークスルーしながら日当たりなどをシミュレーションできる「ARCHITREND リアルウォーカー」なども魅力です。

 

⑤SketchUp(スケッチアップ)

 

SketchUpは、米国Trimble社が開発・提供する建築設計用3D CADです。

無料版(SketchUp Free)と有料版(SketchUp Pro)があり、プロジェクトの規模や用途に応じて選択できます。

直感的操作で3Dモデルを作成できるため、3Dモデリングの初心者でも扱いやすいでしょう。

 

まとめ

 

本記事では、建築建築設計図書について解説しました。

建築設計図書とは、建築物の設計内容を施工者に正確に伝えるための書類や図面のことです。

これから建築設計の仕事に就きたい方は、建築設計図書の重要性についてしっかりと理解しておきましょう。

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