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2026.06.30

建築設計におけるメタバース活用事例5選

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建築設計の現場では、メタバースを活用した業務変革が急速に広がっています。

3D仮想空間を使って完成イメージを共有したり、施工プロセスをシミュレーションしたりする取り組みが、大手ゼネコンや建設会社を中心に実用化されています。

本記事では、建築設計における代表的な活用事例5社を紹介しながら、メリットや課題、活用できるプラットフォームまで詳しく解説します。

 

メタバースとは

 

メタバースとは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間のことです。

ユーザーは「アバター」と呼ばれる自身の分身を操作し、その空間内で他者とコミュニケーションを取ったり、さまざまな活動を行ったりすることができます。

「メタバース」という言葉は、「超越」を意味する「meta」と「世界」を意味する「universe」を組み合わせた造語です。

近年は3DCG技術の発展により、現実世界に近いリアルな空間表現が可能になり、ゲームやSNSに限らず、ビジネス・教育・医療など幅広い分野で活用が広がっています。

アクセス方法はスマホやPCからも可能ですが、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使うことで、より高い没入感を体験できます。

建築業界では、特に完成前の建物の3Dシミュレーション、設計検討、安全教育、クライアントへのイメージ提示といった用途との相性が良く、従来の図面や模型だけでは実現できなかった新たな価値を提供できる手段として注目されています。

 

メタバース活用事例5選

 

国内の大手建設会社・印刷会社を中心に、建築設計へのメタバース導入が着実に進んでいます。

ここでは、実際にメタバースを業務に取り入れた5社の取り組みを、それぞれの目的や活用方法とあわせて紹介します。

 

①大成建設

 

大成建設は「生産プロセスのDX」推進の一環として、「建設承認メタバース」と呼ばれる独自システムを開発しました。

このシステムでは、建築物の意匠・構造・設備などのデジタルデータをまとめたBIMをもとに、クラウド上に建築物を再現することができます。

VRとの連携も可能で、関係者がバーチャル空間内で建物を確認しながら、承認プロセスをデジタルで完結させることができます。

さらに、議事録の自動作成機能も備えており、竣工までの一連の流れをスムーズに進めることが可能です。

BIMの操作に不慣れな担当者でも直感的に内容を確認できる点が、現場での評価に繋がっています。

設計と承認の両プロセスをシームレスに繋ぐ仕組みとして、建設DXの先進事例の1つとして知られています。

 

出典:大成建設「次世代の業務スタイルへの変革を推進する「建設承認メタバース™」の開発に着手

 

②鹿島建設

 

鹿島建設は、BIMを活用した避難シミュレーションシステム「PSTARS」を2014年に開発しました。

火災時の熱や煙の広がりと、それに影響される人々の行動を統合的にシミュレーションできる点が大きな特徴です。

従来のシステムでは熱・煙の変化と人の行動を別々に扱う必要があり、大規模施設における正確な避難計画の策定には限界がありました。

PSTARSはその課題を解消し、より精度の高い避難計画の立案を可能にしています。

2021年にはホロラボ社がHoloLens 2版の開発を発表しており、より直感的で使いやすい形での活用が期待されています。

また、鹿島建設はBIMによるデジタルツインを建築の全フェーズで活用する取り組みも進めています。

企画・設計段階での環境シミュレーションや、施工フェーズでの進捗管理・MRによる現場確認、そして竣工後のファシリティマネジメントまで、一連の建物情報をデジタルで繋ぐ体制を整えています。

 

出典:鹿島建設「火災時の高度な避難シミュレーションシステム「人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS」の開発と展開

 

③奥村組

 

奥村組は、VR構築サービス「NEUTRANS」を提供する株式会社Synamonと連携し、独自の仮想空間施設「メタバース技術研究所」を2021年に開設しました。

この取り組みの背景には、従来の施工検討で使われていたモックアップ(試作模型)の課題があります。

原寸大モックアップは産業廃棄物を大量に発生させ、縮尺版では手戻りが生じた際に大きな工数がかかるという問題がありました。

メタバース上でのシミュレーションに切り替えることで、物理的な資材を一切使用せず、設計・施工の細部の検討精度を高めることが可能になりました。

産業廃棄物の削減というSDGsへの貢献という観点からも注目されており、環境負荷低減と業務効率化を同時に実現した先進的な事例として評価されています。

 

出典:奥村組「Synamon、奥村組と奥村組技術研究所の「メタバース技術研究所」を構築

 

④大和ハウス工業

 

大和ハウス工業は、XR(クロスリアリティ)技術を活用した建築物の3D確認システム「D’s BIM ROOM」を開発しました。

パソコン・タブレット・ヘッドマウントディスプレイ(HMD)など多様なデバイスを通じて、建築物の外観や室内の色合い・素材感などを立体的に確認できるシステムです。

遠方に滞在するクライアントとも、まるで同じ場所にいるかのような打ち合わせ体験を提供できる点が大きな強みです。

今後は商業施設や事業施設の設計・建設プロセスにも順次展開していく方針で、業務効率と生産性の向上を見据えた実証・導入が進められています。

図面だけでは伝えにくい空間の雰囲気やスケール感を、施主やテナント企業に直感的に伝えられる手段として期待されています。

 

出典:大和ハウス工業「D’s BIM ROOM(ディーズビムルーム)開発

 

⑤大日本印刷

 

大日本印刷(DNP)は、竣工前の建物をメタバース上に高精細に再現し、完成前の段階から空間を体験・共有できるサービスを展開しています。

BIM・CAD・点群データといった多様な設計情報を組み合わせることで、短期間での仮想空間構築を実現しています。最大1,000名が同時にアクセスできる拡張性も備えており、大規模プロジェクトにおける関係者間の合意形成にも対応しているのです。

竣工前の段階から動線・空間レイアウト・利用シーンを関係者全員で確認できるため、設計変更の早期発見やコミュニケーションの効率化に役立てられています。

DNP本社ビルを舞台にしたメタバース納会やワークショップの実施実績もあり、参加者の多くから好意的な評価を得ました。

リアルな施設と並走する形で仮想空間を活用することで、利用者の声を建物の完成前から取り入れられる新しいモデルとして注目されています。

 

出典:大日本印刷「竣工前の建築物をメタバースで構築して企業と生活者のコミュニケーションを活性化

 

建築設計でメタバースを活用するメリット

 

建築設計にメタバースを取り入れることで、業務効率の改善からコミュニケーションの質向上まで、様々な恩恵が得られます。

ここでは、特に現場で実感されやすい4つのメリットを解説します。

 

完成イメージが共有しやすい

 

建築プロジェクトにおける課題の1つが、「完成後のイメージのすれ違い」です。

図面や2Dパースだけでは、天井の高さや光の入り方、空間のスケール感などを正確に伝えることが難しく、竣工後に「思っていたものと違う」という声が生じるケースも少なくありません。

メタバースでは、施主や関係者がアバターで建物内を歩き回りながら、壁材の色合い・家具の配置・窓からの眺めなどを実際に体験する感覚で確認できます。

3Dで共有することで認識のズレを事前に防ぎ、双方の納得感が高まった状態でプロジェクトを進めることが可能です。

 

設計・施工業務を効率化できる

 

メタバース上で建築物を原寸大の3Dモデルとして再現することで、設計段階から多くの検証が可能になります。

柱や梁の位置、設備スペースの配置、作業動線の妥当性などを事前に立体的に確認できるため、現場に出てから発覚するようなミスや手戻りを大きく減らすことができるのです。

また、クレーンの動線や資材搬入ルートをシミュレーションすることで、工程の最適化にも繋がります。

承認プロセスのデジタル化や議事録の自動作成と組み合わせることで、業務全体の生産性が向上します。

 

遠方でもプロジェクトに参加できる

 

建設プロジェクトには多くの関係者が関わるため、場所を超えた情報共有がスムーズにいかないことが課題でした。

メタバースを活用すれば、国内外どこからでも同じ3D空間にアクセスして議論できるため、移動の手間とコストを削減しながら迅速な意思決定が可能になります。

遠方に住むクライアントとの打ち合わせや、複数拠点の設計チームとのリアルタイムな設計レビューも、メタバース上であれば対面に近い体験で実施可能です。

 

作業時の安全性が向上する

 

建設現場は高所作業や重機操作など、危険を伴う場面が多い環境です。

従来の安全教育は座学や動画視聴が中心で、実際の危険場面を再現することには限界がありました。

メタバースを使えば、足場の不備や死角の発生、資材落下といった危険シーンを仮想空間で安全に体験することができます。

繰り返しトレーニングできるうえ、全員に同じ水準の研修を提供できるため、安全意識の底上げと教育コストの削減を両立可能です。

 

建築設計でメタバースを活用する際の課題

 

メリットが多い一方で、メタバースの導入にはいくつかの壁も存在します。

導入前に把握しておきたい主な課題を4つ取り上げ、それぞれの対策の考え方もあわせて解説します。

 

一定のITスキル

 

メタバースを効果的に使いこなすには、3D空間の操作やVRデバイスの扱いに慣れる必要があります。

建設業・建築業界では、デジタルツールの使用経験が少ない従業員も多く、習得に時間がかかる場合があります。

全員が円滑に使えるようにするには、操作研修や分かりやすいマニュアルの整備、サポート体制の構築が欠かせません。

導入初期の学習コストを丁寧に設計することが、活用成功のポイントです。

 

初期費用・コスト

 

高品質な3Dモデルの制作には、BIMデータの整備や専門的なCG制作が必要で、規模が大きくなるほど費用も増大します。

さらに、対応PCやVRデバイス、高速通信環境といったハード面への投資も求められます。

大規模に展開する場合は、プラットフォームの選定・セキュリティ設計・運用サポート体制の構築にもコストがかかります。

導入前に明確な目的と費用対効果の試算を行い、段階的な展開を検討することが重要です。

 

セキュリティ対策

 

メタバースはインターネットを介してデータを共有する特性上、セキュリティリスクへの備えが不可欠です。

建築設計データやBIM情報は機密性が高く、不正アクセス・データ改ざん・空間の乗っ取りといったリスクに対して、適切な対策を講じる必要があります。

入室管理やアクセス権限の設定、外部プラットフォーム利用時のセキュリティ水準の確認など、利便性とセキュリティのバランスを意識した運用設計が求められます。

 

運用ルールの整備

 

メタバースは「導入して終わり」ではなく、継続して運用する仕組みを整えることが重要です。

3Dデータの更新タイミング・アクセス権限の管理・情報共有の流れなどを事前に明文化しておかないと、プロジェクト上の混乱を招くことになりかねません。

また、社内の担当者の配置や外部パートナーとの連携体制も必要です。

技術的な準備と同様に、運用面の設計にも十分な時間をかけることが、長期的な活用効果に繋がります。

 

建築設計で活用可能なメタバースプラットフォーム

 

実際にメタバースを導入する際は、目的に合ったプラットフォームの選定が重要です。

ここでは、建築設計との相性が高く、国内でも活用実績のある3つのサービスを紹介します。

 

Comony

 

Comonyは、建築・不動産分野に特化したメタバースプラットフォームです。

元々建築CGやVRコンテンツ制作を手掛けてきた企業が開発しただけあり、設計者や建築業者が使いやすい機能が揃っています。

音声・チャット機能を使ったリアルタイムのコミュニケーションが可能で、訪問者が空間に入室した際に通知を受け取れる「入室通知機能」も備えています。

不動産の内見、投資物件のプレゼン、バーチャル展覧会など、様々なビジネスシーンでの活用実績があります。

 

出典:Comony「公式サイト

 

Mona

 

Monaは、クリエイター向けのメタバースプラットフォームで、3,000名以上のクリエイターが活用しています。

自分が制作した建築物をサイト上にアップロードして公開できるほか、NFT(非代替性トークン)として販売できる点も特徴的です。

展示会やコンサートなど、様々な形での空間表現が可能で、建築の可能性を広げる場としての役割も担っています。

クリエイター自身の収益化につながるモデルは、制作意欲の向上にも繋がります。

 

出典:Mona「公式サイト

 

超建築メタバース

 

超建築メタバースは、一級建築士が手掛けたメタバース上の住宅展示場プラットフォームです。

住宅販売・不動産会社向けに設計されており、以下の3種類のモデルが用意されています。

 

  • ランドスケープモデル:出会いとコミュニケーションを重視した、住宅展示場の発展形
  • ミュージアムモデル:一棟ずつじっくりと吟味できる展示形式
  • カスタマイズモデル:企業独自のメタバース空間を構築できる柔軟なモデル

 

モデルハウスは1棟単位から作成でき、一級建築士の監修のもとリアルに近い住宅空間を再現できます。

 

出典:超建築メタバース「公式サイト

 

まとめ

 

建築設計におけるメタバース活用は、完成イメージの共有・設計業務の効率化・遠隔参加・安全研修など、業界が長年抱えてきた課題を多角的に解決できる手段です。

大手ゼネコンを中心に実用化が進み、導入企業の裾野は広がっています。

コストやITスキルといった課題はあるものの、適切なプラットフォーム選定と運用設計を行えば、十分な効果が期待できます。

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