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建築設計がカーボンニュートラルに取り組むメリットや事例を解説

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2050年のカーボンニュートラル実現に向け、建築設計の分野でも脱炭素への取り組みが急速に広まっています。

建物の設計段階から運用・解体に至るまで、CO2排出量の削減は今や業界全体の共通課題です。

本記事では、カーボンニュートラルの基本概念や法整備の動向、建築設計における重要性、そして実際の企業事例までを分かりやすく解説します。

 

カーボンニュートラルの定義や法整備

 

カーボンニュートラルとは何か、そして建築分野ではどのような法整備が進んでいるのかを整理します。

2050年の実現目標に向け、国は省エネ法の改正やZEH・ZEB基準の義務化を段階的に推進しており、建築業界として正確な知識を押さえておくことが不可欠です。

 

カーボンニュートラルとは

 

カーボンニュートラルとは、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林・森林管理などによる吸収量を差し引いた合計を実質ゼロにすることを意味します。

排出量そのものをゼロにするのではなく、排出した分を自然や技術によって相殺し、「差し引きゼロ」の状態を目指すという考え方です。

2020年10月、当時の菅内閣総理大臣が所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル」の実現を宣言しました。

この宣言を機に、日本国内でも各産業における脱炭素化の取り組みが加速しています。

建築業界も例外ではなく、設計・施工から維持管理・解体に至るすべての工程で排出削減が求められています。

 

出典:資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策の在り方

 

カーボンニュートラルの法整備

 

建築分野のカーボンニュートラルを推進するうえで、関連する法制度の整備も着実に進んでいます。

2022年6月に改正・公布された建築物省エネ法では、省エネ基準への適合義務の対象拡大や一部基準の引き上げが実施され、従来は努力義務だった住宅・建築物の省エネ対応がより広い範囲で義務化される方向へと進んでいます。

政府は2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準の水準の省エネ性能確保を目指すとも明示しています。

さらに2050年には、既存ストックを含めた建築物全体でZEH・ZEB水準の性能が確保されるとともに、再生可能エネルギーの導入が一般的となる社会の実現を目標に掲げています。

 

出典:環境省 ZEB PORTAL「ZEB普及目標とロードマップ

出典:経済産業省「ZEB・ZEH-Mの普及促進に向けた今後の検討の方向性について

 

建築設計におけるカーボンニュートラルの重要性

 

建築業は、日本全体のCO2排出量において無視できない割合を占めています。

施工時だけでなく、建物の運用期間全体を通じた排出量も膨大であることから、設計段階からいかに排出を抑えるかが問われています。

ここでは、CO2・GHGの現状と、目指すべき住宅・建築物の姿を解説します。

 

CO2排出量

 

建築業が排出するCO2の規模は、決して小さくありません。

環境省の資料によると、建設業を含む産業部門は日本全体のCO2排出量の約34%を占めています。

建設工事現場での燃料燃焼や購入電力に由来するCO2排出は産業部門の中でも一定の割合を占めており、業界全体として削減への取り組みが急務となっています。

また、建築業が排出するCO2は施工時だけにとどまりません。

完成後の建物における空調・照明・給湯などのエネルギー消費が継続的に排出するCO2の量は、施工時を大幅に上回るとされています。

同資料によると「業務その他部門(商業・サービス・事業所等)」は全体の16.7%を占めており、建物の運用段階を通じた長期的な削減対策が欠かせません。

 

出典:環境省「2024年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)

 

GHG排出量

 

GHG(温室効果ガス)の排出には、GHGプロトコルと呼ばれる国際基準に基づいた分類が用いられます。

 

  • スコープ1:重機や車両など、事業者自身が直接排出するもの
  • スコープ2:購入した電力など、間接的に排出するもの
  • スコープ3:資材の製造・輸送・廃棄など、サプライチェーン全体での排出

 

建設工事現場では、スコープ1(重機の軽油燃焼など)が排出の大部分を占める一方、スコープ2(電力由来)やスコープ3(資材製造時の排出)も無視できません。

建設業として直接取り組めるスコープ1・2の削減はもちろん、サプライチェーン全体を巻き込んだスコープ3への対応が、業界全体のカーボンニュートラル達成のカギとなっています。

 

出典:環境省「サプライチェーン排出量全般

 

住宅・建築物のあり方

 

2021年8月に公表された「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策のあり方検討会」のとりまとめでは、2030年・2050年に向けた住宅・建築物の目標像が示されました。

2030年の目標としては、新築住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能を確保するとともに、新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を導入することが掲げられています。

2050年には、既存ストック平均でもZEH・ZEB水準を確保し、再生可能エネルギーの導入が「一般的な選択肢」になることを目指しています。

建築設計においては、単に省エネ設備を導入するだけでなく、建物のライフサイクル全体にわたる炭素収支を意識した設計思想が求められています。

高断熱・高気密化による冷暖房負荷の低減、再エネ設備との組み合わせ、木材や低炭素素材の活用など、設計段階からの取り組みが脱炭素社会の実現を左右するのです。

 

出典:国土交通省「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方

 

建築設計がカーボンニュートラルに取り組むメリット

 

脱炭素への取り組みは、義務や負担としてだけでなく、事業上のメリットをもたらす機会でもあります。

カーボンニュートラルへの取り組みはまず、企業の環境姿勢を対外的に示す重要なシグナルとなり、社会的信頼やブランド価値の向上に繋がります。

また、省エネ基準の義務化範囲は今後さらに拡大される見通しであるため、設計段階からZEH・ZEB水準を念頭に置くことで法規制強化への先行対応が可能となり、将来的な改修コストや資産価値の低下といったリスクを抑えることが可能です。

高断熱・高効率設備を採用した建物は竣工後の光熱費を大幅に削減でき、数十年にわたる運用期間を通じて初期投資を十分に回収できるケースも少なくありません。

さらに、カーボンニュートラルを意識した設計提案は、環境意識の高いクライアントや法人顧客へのアピールポイントとなります。

競合他社との明確な差別化に繋がるだけでなく、新たな受注機会の獲得にも貢献します。

 

建築設計がカーボンニュートラルに取り組むデメリット

 

カーボンニュートラルへの取り組みにはメリットがある一方で、コストや専門性の面での課題も存在します。

取り組みを進めるうえで生じやすいデメリットをあらかじめ把握しておくことで、より現実的な計画立案が可能になります。

まず避けられないのが初期費用の増加です。

ZEH・ZEB対応のための断熱材強化、高効率設備、太陽光発電システムの導入などは標準仕様に比べてコストが高くなりやすく、特に小規模な事業者にとっては資金調達の面でハードルを感じることもあります。

また、省エネ性能の計算やZEB認証の取得には専門的な知識・技術が必要であり、設計チームのスキルアップや外部専門家との連携、人材育成にかかるコストも無視できません。

スコープ3(サプライチェーン排出)の削減には、資材メーカーや協力会社を含めた幅広い関係者との連携が不可欠です。

排出量の可視化や削減目標の共有は一社だけでは完結せず、業界全体での協調が求められる点で個社の努力には限界があります。

 

カーボンニュートラル建築の事例

 

実際に建築分野でカーボンニュートラルに取り組む企業の事例を見ていきましょう。

大手ハウスメーカーやゼネコン各社は、木造化・省エネ設備・再エネ導入・低炭素資材の開発など、それぞれの強みを活かした多彩なアプローチで脱炭素化を推進しています。

 

三井ホーム株式会社

 

三井ホーム株式会社と三井不動産レジデンシャル株式会社は、木造技術を活用した賃貸マンション「パークアクシス北千束MOCXION」でカーボンゼロを実現しました。

木材を主要構造材として採用することで、鉄筋コンクリート造と比較してCO2排出量を約50%削減しています。

また、独自の断熱パネル工法によって建物の断熱性能を高め、屋上への太陽光パネル設置によって自ら電力を生み出す「創エネ」にも取り組んでいます。

三井ホームは、建物の一生を通じてCO2を吸収・削減することを目指しています。

 

出典:三井ホーム「4階建てALL木造カーボンゼロ賃貸マンション「パークアクシス北千束MOCXION」竣工

 

大和ハウスグループ

 

大和ハウスグループは、「カーボンニュートラル戦略」を明確に掲げています。

グループ全体の目標として、2030年までに温室効果ガス排出量を2015年度比で40%以上削減し、2050年には実質ゼロを目指しています。

特筆すべきは、住宅・建設業界において世界で初めてSBT、EP100、RE100の3つの国際イニシアティブに同時参画した点です。

「事業活動」「まちづくり」「サプライチェーン」という3つの段階すべてにおいてカーボンニュートラルの実現を目指し、サプライヤーとの協働を通じた排出削減にも積極的に取り組んでいます。

 

出典:大和ハウス工業「脱炭素への挑戦-カーボンニュートラル戦略

 

株式会社竹中工務店

 

竹中工務店は、資材の製造から建設・運用・解体廃棄に至る建物のライフサイクル全体でCO2排出ゼロを目指す、業界でも先進的な取り組みを進めています。

施工段階では、2023年2月以降に着工したすべての工事現場において、再生可能エネルギー由来のグリーン電力を原則採用しています。

また、CO2排出量を6割削減できるコンクリート「ECM®(エネルギーCO2ミニマム)」の開発にも注力し、材料面からのCO2削減を追求しています。

さらに2022年12月には竹中グループ全体を対象とした新たな中長期目標を設定し、2024年3月にはSBTiによるスコープ1・2の削減目標(1.5℃水準)の認証を取得しました。

 

出典:竹中工務店「脱炭素

出典:TAKENAKA「カーボンニュートラルを実現する技術

 

東京建物株式会社

 

東京建物株式会社は、池袋エリアに開発した超高層オフィスビル「Hareza Tower(ハレザタワー)」においてZEB化を推進し、一般財団法人省エネルギーセンター主催の「経済産業大臣賞(ZEB・ZEH分野)」を受賞しました。

同ビルは、再生可能エネルギーや高効率型空冷ヒートポンプ、LED照明などを積極的に取り入れ、「ZEB Ready(ゼブレディ)」として認証されています。

超高層オフィスビルという高いエネルギー消費が避けられない用途でありながら、先進的な省エネ技術を組み合わせることで次世代の建築モデルを提示した事例として注目されています。

 

出典:東京建物「都市部の温暖化対策に貢献。求められる大規模ビルのZEB化

 

鹿島建設株式会社

 

鹿島建設株式会社は、2050年カーボンニュートラルの達成を目指し、スコープ1・2の削減にとどまらず、スコープ3のサプライチェーン排出量においても2030年の中間目標として「25%削減」を掲げています。

材料技術面では、竹中工務店・デンカ株式会社と共同で、CO2を吸収するコンクリートを含む「カーボンネガティブコンクリート」の実用化に向けた研究開発を進めています。

鹿島らが開発した「CO2-SUICOM®」は世界で唯一実用化されているCO2吸収型コンクリートであり、使用することでCO2を削減できる革新的な建設材料として業界内外から高い関心を集めています。

 

出典:鹿島建設「脱炭素から『活炭素』へ 次世代コンクリート技術の共同研究を開始

出典:鹿島建設「2050年カーボンニュートラルの実現に向け、サプライチェーン排出量削減を加速

 

まとめ

 

建築設計とカーボンニュートラルの関係は、今後ますます切り離せないものになっていきます。

CO2排出量の削減は法規制の面でも求められており、設計段階からの戦略的な取り組みが欠かせません。

メリット・デメリットを正しく理解したうえで、各社の先進事例を参考に、自社に合った脱炭素化の第一歩を踏み出すことが重要です。

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