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2026.01.23

建築設計プロセスを徹底解説|ポイントなど具体的に分かりやすく

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建築設計は、クライアントの要望を実現する建物へと形にしていく専門的なプロセスです。

ヒアリングから基本設計、実施設計、施工管理、引き渡しまで、各段階で重要なステップがあります。

本記事では、建築設計の全体像と各プロセスの詳細、そして失敗しないための実践的なポイントを分かりやすく解説します。

 

建築設計とは

建築設計とは、建物を実際に建てる前に、その建物の形状や機能、構造、美観などを計画・設計する重要なプロセスです。

単に図面を描くだけでなく、クライアントの要望を的確に理解し、法規制や予算、敷地条件などの制約の中で、最適な建築空間を創造する専門的な業務と言えます。

建築設計では、意匠設計、構造設計、設備設計の3つの領域が密接に連携します。

これらが統合されることで、安全で快適、かつ美しい建築物が実現されるのです。

また、建築設計は単なる技術作業ではなく、クリエイティブな提案力とコミュニケーション能力が求められる分野です。

設計者はクライアントや施工者、行政など多様な関係者と対話を重ねながら、プロジェクトを成功へと導く役割を担っています。

 

建築設計のプロセス

 

建築設計は段階的に進められ、各フェーズで異なる目的があります。

ここでは、一般的な建築設計の流れを8つのステップに分けて詳しく解説します。

 

①ヒアリングと要件定義

 

建築設計の最初のステップは、クライアントとの綿密なヒアリングです。

このフェーズでは、建物の用途や規模、予算、希望する完成時期、デザインの好みなど、プロジェクトの基本的な情報を集めます。

設計者は単に要望を聞くだけでなく、クライアント自身が気づいていない潜在的なニーズを引き出すことも重要です。

例えば、将来的な事業拡大の可能性や、使用者のライフスタイルの変化なども考慮に入れます。

また、敷地調査も並行して実施します。

敷地の形状や周辺環境、日照条件、地盤状況、法的規制を詳細に確認し、プロジェクトの実現可能性を検証します。

この段階での情報収集の質が、後のプロセス全体に大きく影響します。

 

②基本設計

 

基本設計では、ヒアリングで得た情報をもとに、建物の基本的なコンセプトや全体像を固めていきます。

平面図や立面図、断面図などを作成し、建物の配置、各室の配置や広さ、外観デザインの方向性を具体化します。

この段階では複数の案を提示し、クライアントと議論を重ねながら最適なプランを選定しましょう。

設計者の創造性が最も発揮されるフェーズであり、機能性と美観のバランスを取りながら、プロジェクトの骨格を形成します。

また、概算工事費の算出も行われ、予算内で実現可能かを確認します。

必要に応じて設計の見直しや調整を行い、クライアントの承認を得てから次のステップへ進みます。

基本設計図書は建築確認申請などの行政手続きにも使用されます。

 

③実施設計

 

実施設計は、基本設計で決定した内容をより詳細に具体化する段階です。

施工業者が実際に工事を行うために必要な詳細図面や仕様書を作成します。

構造計算書や設備の詳細図など、建物を構成する全ての要素について具体的な情報を盛り込みます。

また、構造設計や設備設計の専門家と連携し、意匠設計との整合性を確保します。

配管や配線の経路、空調機器の配置など、技術的な検討を重ねながら図面を完成させましょう。

この段階での精度が、施工の品質とコストに直結するため、細心の注意を払って作業が進められます。

 

④VE設計

 

VE(Value Engineering)設計は、建物の価値を維持または向上させながら、コストを最適化する取り組みです。

実施設計が完了した後、またはその途中で実施されることが多く、設計内容を見直して無駄を省きます。

具体的には、代替材料の検討や工法の変更、設備機器の見直しなどを行います。

例えば、同等の性能を持つより安価な材料への変更や、施工手順の効率化によるコスト削減などが考えられます。

ただし、VE設計は単なるコストカットではありません。

建物の品質や機能、デザイン性を損なわない範囲で最適化を図ることが重要です。

設計者は施工業者や専門家とチームを組み、多角的な視点から検討を行い、クライアントに最大の価値を提供します。

 

⑤施工準備

 

施工準備では、実際の工事を開始するための各種手続きや準備作業を行います。

建築確認申請の完了、施工業者の選定と契約、工事スケジュールの策定などがこの段階の主な業務です。

施工業者の選定では、見積もり内容の精査だけでなく、施工実績や技術力、品質管理体制なども考慮しましょう。

複数の業者から見積もりを取得し、比較検討した上で最適な業者を選びます。

また、近隣住民への説明会や挨拶回りも重要な準備作業です。

工事による騒音や振動、車両の出入りなどについて事前に説明し、理解と協力を得ることでトラブルを未然に防ぎます。

着工前の準備が丁寧に行われることで、スムーズな施工に繋がるのです。

 

⑥施工管理

 

施工管理は、設計図面通りに工事が進められているかを監理する重要なプロセスです。

設計者は定期的に現場を訪問し、施工状況を確認します。

品質管理では、使用されている材料が図面や仕様書通りか、施工方法が適切かなどをチェックします。

問題が見つかった場合は、施工業者に是正を指示し、設計意図が正確に実現されるよう監督します。

また、工程管理や安全管理も施工管理の重要な要素です。

工事の進捗状況を把握し、遅延が発生しそうな場合は対策を講じます。

この段階での丁寧な管理が、完成品質を左右するのです。

 

⑦検査と引き渡し

 

工事が完了すると、各種検査を実施します。

まず施工業者による自主検査、次に設計者による竣工検査を行い、設計図面通りに施工されているか、品質基準を満たしているかを確認しましょう。

行政による完了検査も受け、建築基準法に適合していることの確認を得ます。

検査で不備が見つかった場合は、手直し工事を行い、全ての基準をクリアした後に検査済証が交付されます。

全ての検査が完了し、問題がないことを確認した上で、クライアントへの引き渡しを行います。

建物の使用方法や設備の操作説明、メンテナンスに関する情報提供も併せて実施しましょう。

鍵や各種書類、保証書などを引き渡し、プロジェクトが正式に完了します。

 

⑧メンテナンス

 

引き渡し後も、建築設計者の役割は続きます。

建物を長期にわたって良好な状態に保つため、定期的な点検やメンテナンスのアドバイスを提供します。

多くの場合、引き渡し後一定期間に定期点検を実施します。

初期不良や経年変化による不具合がないかを確認し、必要に応じて補修を行うのです。

また、将来的な改修やリノベーションの相談にも応じます。

建物の使用状況の変化や老朽化に応じて、適切な維持管理計画を提案しましょう。

設計者とクライアントの長期的な関係性が、建物の価値を持続させる鍵となります。

 

建築設計を失敗しないためのポイント

 

建築設計を成功させるには、計画段階からいくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

ここでは、失敗を避けるための重要な視点を紹介します。

 

記録・合意事項の見える化

 

建築プロジェクトでは、多くの関係者が長期間にわたって協働します。

そのため、打ち合わせ内容や決定事項を明確に記録し、関係者全員が共有できる状態にしておくことが極めて重要です。

議事録の作成と共有は基本中の基本です。

口頭での合意だけでは、後になって「言った」「言わない」のトラブルが発生しがちです。日付、参加者、協議内容、決定事項、次回までの課題などを文書化し、メールやプロジェクト管理ツールで共有しましょう。

また、設計変更の履歴も丁寧に管理します。

なぜその変更が必要だったのか、誰が承認したのかを記録しておくことで、後からの確認が容易になります。

図面にも変更履歴を明記し、常に最新版が分かるようにバージョン管理を徹底しましょう。

デジタルツールを活用することで、情報の見える化がより効率的になります。

クラウド上でドキュメントを管理すれば、どこからでもアクセス可能で、情報の一元管理が実現可能です。

 

数値指標と体験価値による評価

 

建築設計の評価には、定量的な数値指標と、定性的な体験価値の両面からのアプローチが必要です。

数値指標としては、予算達成率、工期遵守率、床面積当たりのコスト、エネルギー効率などがあります。

これらは客観的に測定可能で、プロジェクトの効率性や経済性を評価する基準となります。

一方、体験価値とは、使用者が感じる快適性、使いやすさ、美しさなど、数値では表現しにくい要素です。

例えば、自然光の入り方や空間の開放感、動線のスムーズさなどは、実際に使ってみて初めて評価できます。

理想的には、設計段階から数値目標を設定しつつ、完成後にはユーザーアンケートやフィードバックを収集し、両面から総合的に評価します。

数値で把握しにくい「心地よさ」や「使いやすさ」にも注目することで、本当に価値のある建築が生まれるのです。

 

余裕を持った計画立案

 

建築プロジェクトでは、予期せぬ問題やトラブルが発生することは珍しくありません。

そのため、最初から余裕を持ったスケジュールと予算の計画を立てることが重要です。

スケジュールには必ず余裕を設けましょう。

天候不良による工事の遅延、材料の納期遅れ、設計変更による追加作業など、様々な要因で計画がずれることがあります。

全体工期の10〜15%程度の予備日を確保しておくと安心です。

予算についても同様です。

見積もり段階では想定していなかった追加工事や、材料費の高騰などに備えて、予備費を設定しておきましょう。

また、意思決定のタイミングも余裕を持って設定します。

ギリギリのスケジュールでは、十分な検討ができず、後悔する決定をしてしまう可能性があります。

特に重要な選択については、複数案を比較検討する時間を確保しましょう。

 

まとめ

 

建築設計は、ヒアリングから引き渡し、メンテナンスまで多段階のプロセスで構成されます。

各段階で専門的な知識と丁寧なコミュニケーションが求められ、クライアントの要望を形にしていきます。

成功のポイントは、合意事項の記録と共有、数値と体験の両面からの評価、そして余裕を持った計画です。

これらを意識することで、満足度の高い建築プロジェクトが実現できます。

 

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