建築業界のリアルな情報や就職・転職活動で役立つ情報を紹介します。

お役立ち情報

2025.12.27

ランドスケープデザインの考え方|基本概念と実装事例を解説

サムネイル

ランドスケープデザインは、自然と建築を調和させながら魅力的な空間を創出する設計手法です。

本記事では、アメリカと日本における歴史的背景、自然要素の活用や文化尊重といった特徴、さらにBIMを活用した成功のコツまで、基本概念を詳しく解説します。

世界各国の実装事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

ランドスケープデザインの考え方

 

ランドスケープデザインは、自然環境と人工物を調和させながら空間全体を設計する手法です。

単に建物を配置するだけでなく、植栽・歩道・広場といった屋外空間を含めた総合的な設計により、人々の暮らしを豊かにする環境を創ります。

対象範囲は個人の庭園から都市空間まで及び、持続可能な社会づくりにおいて重要性が増しています。

 

ランドスケープデザインの歴史

 

ランドスケープデザインの歴史をアメリカと日本に分けて見ていきましょう。

 

アメリカの歴史

 

ランドスケープ・アーキテクチャーという概念は、1858年にフレデリック・ロー・オルムステッドがニューヨークのセントラルパークを設計した際に初めて提唱されました。

1930年代後半には、ヨーロッパの近代主義建築の影響を受け、現代の生活様式に適した庭園が数多く誕生しました。

これにより屋外での新しいライフスタイルが発見され、庭の文化が根付く土台となったのです。

1950年代から60年代にかけて、コミュニティ開発や大学キャンパス、企業施設など活動領域を拡大し、環境調査や分析も実施されるようになります。

この過程で大規模な専門組織が活躍するようになり、ランドスケープデザインはアメリカ社会において確固たる地位を確立しました。

 

日本の歴史

 

日本におけるランドスケープデザインは、明治時代の文明開化とともに和洋折衷の様式として始まりました。

形態的には対称と非対称、直線と曲線という対照的な要素がありましたが、いずれも自然を記号として表現するという共通点を持っていたのです。

戦後は社会基盤の再建が急ピッチで進められましたが、標準設計による効率優先のインフラ整備が中心となり、ランドスケープデザインを考慮する余裕はありませんでした。

1981年に建設省が「うるおいのあるまちづくりのための基本的な考え方」を発表したことで、各自治体が景観行政に本格的に取り組むようになり、大きな転機を迎えます。

それ以降、特にアメリカのランドスケープデザインを研究した専門家を中心に、公園やオープンスペースにランドスケープデザインが導入されるようになりました。

 

ランドスケープデザインの特徴

 

ランドスケープデザインには、3つの主な特徴があります。

 

自然要素をデザインに取り入れる

 

ランドスケープデザインでは、樹木・草花・水の流れ・土・岩など、多様な自然要素を空間構成に活用します。

これらは単なる装飾ではなく、その土地本来の自然環境を活かし、周囲の景観と調和させることを目的としています。

四季の変化を楽しめる植物を選定することで、一年を通じて魅力的な空間を演出できるのです。

設計の初期段階から自然環境への配慮を組み込むことが、持続可能な環境づくりの基本となります。

 

その土地の文化を尊重する

 

ランドスケープデザインには、その土地固有の文化や歴史を大切にした設計が求められます。

地域に古くから自生する樹木や、伝統的に使用されてきた素材を活用することで、その場所ならではの個性を引き出せます。

例えば、神社の参道に植えられた杉並木や、地元産の石材・木材の活用などにより、地域の歴史的な景観要素を取り入れることが可能です。

自治体によっては独自の景観条例を設けているため、計画段階での確認を徹底しましょう。

また、休憩スペースや子どもの遊び場、散歩道など、利用者の活動を支える機能的な要素も配置し、地域の生活様式を尊重しながら人間の活動と自然が調和した空間を生み出します。

 

完成後の維持管理をする

 

植物は季節とともに変化し、毎年成長していくため、完成後の維持管理を見据えた計画が必須です。

樹木の成長を見据えて適切な間隔で植栽し、将来的な剪定方法も計画に組み込む必要があります。

定期的な剪定や除草、灌水システムの保守、経年劣化への対応など、継続的なメンテナンス体制を構築することが重要です。

また、自然の風景だけでなく、舗装や照明といった人工物についても、メンテナンスやリニューアルの予算と時期を当初から検討しておくことが大切です。

計画的なメンテナンスを続けることで、年月とともに魅力を増していく環境を維持できます。

 

ランドスケープデザインを成功させるコツ

 

ランドスケープデザインを成功させるには、自然の変化を的確に予測し、長期的な視点で計画することが重要です。

樹木の成長や季節の移ろい、利用者の生活様式の変化を見据えた設計が求められます。

また、BIM技術を活用することで、完成後の姿を事前にシミュレーションし、より精度の高い計画を立てることが可能です。

 

自然の変化を見据えて設計する

 

ランドスケープデザインを成功させるコツは、自然の変化を見据えて設計することです。

自然は四季で表情を変え、樹木は毎年成長します。

また、利用者の周辺環境や生活様式も少しずつ変化していくため、こうした変化を見据えた長期的な視点での計画が求められます。

自然の状態や土地の歴史、周辺地域との関連性をベースにガイドラインを作成し、事業者や管理者、行政と共有しながら調整と更新を繰り返しましょう。

 

BIMを活用する

 

BIMは、建物や外構を3Dモデルで表現し、さまざまな情報を一元管理するシステムです。

ランドスケープデザインにおいてBIMを活用することで、設計の精度と効率が大幅に向上します。

例えば、植栽計画では樹木の成長過程をシミュレーションし、数年後の景観や周辺からの見え方を事前に確認できます。

季節による日影の変化や、人の動線計画なども視覚的に確認できるため、より具体的な検討が可能です。

BIMの3Dモデルを用いることで完成後のイメージを気軽に共有でき、必要な修正を設計の早い段階で行えます。

これにより、手戻りによる時間とコストの損失を最小限にできるのです。

 

ランドスケープデザインの実装事例

 

ランドスケープデザインは世界中で実践され、多様な成功事例が生まれています。

ドイツのオペラハウスから中国のアートセンター、ポルトガルの医療施設、アメリカの企業キャンパス、日本の歴史的建造物まで、それぞれの土地の特性を活かした独創的なプロジェクトを紹介します。

これらの事例から、ぜひ実践的なヒントを得てください。

 

ハンブルク州立オペラ

 

ドイツ・ハンブルクのハーフェンシティに計画されている新しいハンブルク州立オペラは、BIG(ビャルケ・インゲルス・グループ)が設計した、ランドスケープと建築が融合した革新的な文化施設です。

建物は同心円状に広がる階段状のテラスで構成され、音楽の波紋のように港へと広がっていくデザインとなっています。

この彫刻的な地形は、埠頭から高架庭園へと至る建物横断の通路を提供し、あらゆる方向からアクセス可能な立体的な公共公園を創出しています。

水の流れによって形づくられる周辺公園は、傾斜したテラス、植生のある砂丘、湿地庭園によって高潮を管理します。

貯水池は雨水を収集・貯留し、両生類、水生植物、在来種の生息地を形成しており、エルベ川の変化するリズムに適応する生きている景観となっています。

 

AYDCパブリック・アート・センター

 

中国・貴州省の貴陽市にあるAYDCパブリック・アート・センターは、ATELIER XIが設計した分散型アートパビリオンです。

コミュニティ、イノベーション、自然を統合した文化主導の実験的ハブとして構想されました。

当初計画されていた単一の建物は分解され、ランドスケープの中に点在する「西馬図書館」「銀杏礼拝堂」「大理ステージ」の3つの公共アートパビリオンとして再構成されました。

それぞれが自然環境に溶け込みながらも独立性を保ち、相互につながるネットワークを形成しています。

貴州のカルスト山岳地形にインスピレーションを受けた彫刻的形態を呈しており、読書、瞑想、パフォーマンスの場として機能し、水、開放された空、星明かりといった周囲の自然要素と呼応するように設計されています。

 

カルカヴェロス・ヘルス・コンプレックス

 

ポルトガルのカルカヴェロスに建つカルカヴェロス・ヘルス・コンプレックスは、4つの医療サービスを1つに統合した施設であり、一般に開かれた庭園が組み込まれた建築です。

Simão Botelho Architecture、Studio-J、Duomaが設計しました。

都市戦略として、北側の幹線道路からの騒音を緩和する緩衝地帯として建物を活用し、南側の既存住宅街に隣接する庭園スペースを確保しています。

庭園は2フロアで構成されており、下階には緑のパティオと菜園があり、上階には子供用遊具のある芝生広場、テラス付きカフェテリア、屋根付き多目的屋外エリアがあります。

地域コミュニティと医療施設利用者が、社交、運動、ワークショップなど多様な目的で利用できる設計となっているのです。

 

Apple Park

 

アメリカ・カリフォルニア州クパチーノにあるApple Parkは、フォスターアンドパートナーズが設計した、Appleの革新的な精神を象徴するキャンパスです。

特徴的な巨大なリング状の建築は、高さを抑えることで周囲の木々に溶け込み、曲面ガラス張りのファサードを通して公園の眺めと新鮮な空気を取り込んでいます。

以前は、71ヘクタールの敷地はほとんどが舗装されていました。

しかし現在では緑地が20%から80%に増え、6kmを超えるジョギングや散歩用のトレイルが整備されています。

敷地内には在来種のオークや果樹園、草地、テラス、スポーツフィールド、池、9,000本を超える樹木が植えられています。

このキャンパスは100%再生可能エネルギーで稼働しており、北米最大のLEEDプラチナ認定ビルディングとなる予定です。

建築とランドスケープがシームレスに融合し、創造性、革新性、健康を育む理想的な職場環境を実現しています。

 

奈良監獄ミュージアム

 

2026年4月27日に開館予定の奈良監獄ミュージアムは、明治政府によって計画された五大監獄のうち、唯一現存する貴重な歴史的建造物である旧奈良監獄を保存・活用するプロジェクトです。

ランドスケープデザインはオンサイト計画設計事務所が担当し、歴史的建造物と周辺環境を調和させる空間づくりが行われています。

建物の建築美や歴史的価値を未来へと継承していくための拠点として、コンセプトは「美しき監獄からの問いかけ」と設定されました。

展示全般に関するアートディレクションをTSDOを率いる佐藤卓氏が担当し、ルーヴル美術館ランス別館などの常設展示デザインを手がけたアドリアン・ガルデール氏がミュゼオグラフィー・スーパーバイザーとして参画しています。

歴史的建造物の保存と現代的な活用を両立させた、文化継承のモデルとなるプロジェクトです。

 

まとめ

 

ランドスケープデザインは、自然と建築を調和させながら持続可能で魅力的な空間を創出する重要な設計手法です。

その土地の文化や歴史を尊重し、自然要素を効果的に取り入れることで、人々の暮らしを豊かにする環境が生まれます。

BIMなどの最新技術を活用し、時間の経過による変化を見据えた長期的な視点での計画が成功の鍵となります。

この記事をシェア

tag