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2025.09.06
建築コストを削減 プロが教えるアイデア集と削減ノウハウ

住宅を建築する際、多くの方が直面するのが建築費用の問題です。
理想のマイホームを実現したいものの、予算には限りがあるため、賢くコストを抑える方法を知ることが重要です。
本記事では、建築のプロが実践するコスト削減のアイデアとノウハウを、間取りから設備まで詳しく紹介します。
住宅の品質を落とすことなく、効果的に建築費を抑える方法を学んでいきましょう。
建築コストを削減する「間取り」のアイデア
住宅建築において、間取りの工夫は最も効果的なコスト削減手法の1つです。
設計段階での賢い判断により、大幅な費用削減を実現できます。
建坪を減らす
建築コスト削減の最も基本的な方法が、建坪=延床面積の縮小です。
住宅の広さに比例して建材使用量や工事の手間が増加するため、建坪を抑えることで直接的な費用削減効果が期待できます。
家族構成やライフスタイルを慎重に検討し、本当に必要な部屋数や広さを見極めることが重要です。
無駄な空間を省き、効率的な住空間を計画することで、建築費を大幅に削減できます。
窓のサイズを小さくし・数を減らす
窓は住宅の中でも比較的高コストな部材です。
窓の大きさや設置数を適切に調整することで、コスト削減に繋がります。
必要以上に大きな窓や過剰な窓数は避け、採光と通風を確保しつつ最小限の窓配置を心がけましょう。
また、開閉しない固定窓(FIX窓)の活用や、高い位置に設置する高窓の採用など、機能性を保ちながらコストを抑える工夫が効果的です。
建物の凹凸を減らす
シンプルな形状の住宅は、複雑な形状に比べて建築費を大幅に削減できます。
建物外観に凹凸が少ない四角い形状を採用することで、外壁面積の縮小、基礎工事の簡素化、屋根構造の単純化が実現できるのです。
これにより、材料費と工事費の両方を効率的に削減できます。
また、現代的なシンプルモダンデザインは美観も損なわず、コストパフォーマンスに優れた選択肢と言えます。
和室を無くす
和室の設置には、畳、襖、障子、押入れなど、洋室にはない特殊な建材や建具が必要となり、同面積の洋室と比較して建築費が高くなります。
さらに、畳の定期的な表替えやメンテナンス費用も長期的なコスト要因となるのです。
客間や寛ぎ空間としての和室の必要性を慎重に検討し、洋室での代用可能性を考慮することで、初期費用と維持費用の両方を削減できます。
バルコニーやベランダを無くす
バルコニーやベランダを設置すると、防水工事費用や構造強化費用が意外にかかります。
室内に洗濯物干しスペースを設ける、乾燥機を活用するなどの代替手段があれば、バルコニーやベランダなどの屋外スペースを省くことで建築費の削減が可能です。
屋外での洗濯物干しや憩いの場としての必要性を十分検討した上で、コストと利便性のバランスを判断しましょう。
建築コストを減らす「設備・仕様」のアイデア
設備や仕様の見直しによるコスト削減は、日常の利便性とのバランスを考慮しながら行うことが重要です。
適切な選択により、住み心地を損なうことなく建築費を削減できます。
キッチンのオイルガードを無くす
コンロ前に設置されるオイルガードは、設置費用が数万円程度かかる設備です。
コンロ周辺の壁材を油汚れに強いキッチンパネルなどに変更することで、オイルガードの機能を代替できます。
実際の調理スタイルや掃除の頻度を考慮し、オイルガードの必要性を慎重に判断することで、コスト削減に繋がります。
建具の数を減らす
室内ドアやクローゼット扉などの建具は、1箇所につき数万円の費用がかかります。
ウォークインクローゼットの入口や子供部屋のクローゼットなど、プライバシーの確保がそれほど重要でない場所では、建具を省略してロールスクリーンやカーテンで代用可能です。
これにより建具費用を削減しながら、開放感や通気性の向上も期待できます。
「引き戸」を「開き戸」に変える
引き戸は壁内にレール機構を組み込む必要があるため、一般的な開き戸と比較して部材費と施工費が高くなります。
1箇所あたりの差額は小さくても、住宅全体で考えると無視できない金額です。
引き戸の利便性が特に重要でない場所では、開き戸への変更でコストを削減できます。
ただし、開き戸は開閉スペースが必要な点も考慮しましょう。
トイレ内の手洗い場を無くす
トイレの近くに洗面所がある間取りの場合、トイレ内の独立した手洗い設備を省略することでコスト削減が可能です。
トイレ使用後すぐに手洗いできる環境が確保されていれば、トイレ内手洗いの必要性は低くなります。
また、トイレ内設備の削減は固定資産税の軽減にもわずかながら寄与する可能性があります。
タンクレストイレではなくタンク付きトイレにする
デザイン性に優れるタンクレストイレは、タンク付きトイレと比較して本体価格が高く、故障時の修理費用も割高になる傾向があります。
また、タンクに水を貯めることができないため、停電時の使用に制限が生じてしまうのです。
一方、タンク付きトイレは価格が手頃で、災害時にもタンク内の水を利用できるメリットがあります。
デザイン性と機能性、コストのバランスを考慮して選択しましょう。
ハイドアの採用場所を厳選する
天井まで届くハイドアは空間を広く見せる効果がありますが、標準的な高さのドアと比較して費用が高額です。
全てのドアをハイドアにするとコストが大幅に増加します。
そのため、リビング入口など特に効果的な場所に限定して採用することで、デザイン性とコストパフォーマンスを両立できます。
建築コストを削減する際の注意点
目先の費用に捉われて重要な性能や機能を犠牲にすると、長期的に見て損失となってしまいます。
ここでは、建築コストを削減する際の注意点を解説します。
水回りの設備と光熱費に直結する設備のグレードは下げすぎない
キッチン、浴室、トイレなどの水回り設備や、給湯器、空調設備などの光熱費に関わる設備は、毎日の生活に直結します。
過度にグレードを下げると、日々の水道光熱費の増加や頻繁な故障による交換費用など、長期的なコスト増に繋がるのです。
節水・省エネ機能を重視し、適切なグレードの設備を選択しましょう。
キッチンとお風呂は清掃性の高い素材を選ぶ
キッチンと浴室は住宅内で最も汚れやすい場所です。
コスト重視で清掃しにくい素材を選択すると、日常的な掃除の負担が大幅に増加します。
油汚れに強いキッチン壁材や、カビの発生を抑える浴室床材など、清掃性に優れた素材の選択は、快適な住環境の維持に不可欠です。
初期費用よりも長期的な使い勝手を重視しましょう。
断熱性能は下げすぎない
住宅の断熱性能は、居住快適性と光熱費に大きく影響します。
断熱等級を安易に下げると、夏の暑さや冬の寒さに悩まされ、冷暖房費が大幅に増加します。
また、室温差によるヒートショックのリスクも高まります。
快適な住環境と省エネ性を両立するため、断熱性能は適切なレベルを維持することが重要です。
防災関連設備のコストダウンは慎重に行う
地震の多い日本では、住宅の耐震性や制震性能は生命と財産を守る重要な要素です。
制震ダンパーなどの防災関連設備は初期費用がかかりますが、災害時の被害軽減効果を考慮すると必要な投資と言えます。
安全に関わる部分のコスト削減は、将来のリスクを十分に検討した上で慎重に判断する必要があります。
プライバシーを守るための工夫は怠らない
隣家からの視線や道路からの見通しなど、プライバシーに関わる問題は日常生活のストレスに直結します。
目隠しフェンスの設置や適切な窓配置など、プライバシー確保のための工夫を怠ると、住み始めてから「落ち着かない住環境」となってしまうのです。
快適な生活を送るため、プライバシー保護に関わる費用は必要な投資として位置づけましょう。
まとめ
建築コストの削減は、住宅建築において重要な課題ですが、闇雲に費用を削ることは避けるべきです。
間取りの工夫による効率的な空間利用、設備・仕様の見直しによる適切なグレード選択、そして削減してはならない重要要素の見極めが、成功する建築コスト削減の鍵となります。
本記事で紹介したアイデアを参考に、自分のライフスタイルと価値観に合った優先順位を設定し、メリハリのある建築計画を立てることで、理想の住まいを予算内で実現できます。