
建築業界のリアルな情報や就職・転職活動で役立つ情報を紹介します。
2025.09.06
失敗しない建築模型材料の選び方 おすすめの方法とポイントを解説

建築模型製作は、設計者にとって自分のアイデアを立体的に表現し、プレゼンテーションを成功させるための重要な技術です。
しかし、初心者にとって最も難しいのが材料選びではないでしょうか。
適切な材料を選ぶことで、美しく精密な模型を効率的に制作できます。
今回は、建築模型製作で失敗しない材料選びの方法とポイントを、基本道具から各種材料まで詳しく解説します。
これから建築模型制作を始める方から、さらなるスキルアップを目指す方まで、ぜひ参考にしてください。
建築模型の基本道具
建築模型製作を始める前に、まずは基本的な道具を揃えることが重要です。
専門的な道具が必要と思われがちですが、実際には基本的な道具の数はそれほど多くありません。
以下の道具を揃えることで、本格的な建築模型製作を始めることができます。
カッターナイフとカッティングマット
建築模型製作において、カッターナイフは最も基本的で重要な道具です。
材料をカットするために使用され、模型の精度を大きく左右します。
カッターナイフは、刃先が小さく滑り止めのグリップが付いているものが使いやすく便利です。
建築模型製作では30度カッターと呼ばれる黒刃の鋭角カッターが特に推奨されています。
黒刃は通常の刃よりも切れ味が良く、精密な作業に適しています。
カッターナイフと同様に重要なのがカッティングマットです。
カッティングマットは作業中に机を傷付けるのを防ぐだけでなく、カッターの刃を保護して切れ味を長持ちさせる効果もあります。
もしカッティングマットがない場合は、新聞や雑誌などで代用することも可能ですが、作業効率は劣ります。
使用時の注意点として、切れ味が少しでも落ちたらこまめに刃を折ることが重要です。
また、安全のために動線上に手を置かないようにしましょう。
ピンセット
建築模型製作では細かいパーツを取り扱うことが多いため、ピンセットは必須の道具です。
家庭にあるピンセットでも構いませんが、より効率的な作業を行うためには専用のものを選ぶことをおすすめします。
特におすすめなのが逆作用のピンセットです。
通常のピンセットとは逆に、力を入れると先が開き、力を抜くと閉じる構造になっています。
この特徴により、長時間ピンセットで物をつまんでいても手が疲れにくく、細かい作業を継続して行うことができます。
細かい作業が多い建築模型製作では、手の疲労軽減は作業効率と仕上がりの質に直結するため、初期投資として良質なピンセットを選ぶのがおすすめです。
定規
定規は模型作りに欠かせない基本道具の1つです。
サイズを測るときはもちろん、素材をまっすぐにカットするときにも必要になります。
市販の定規でも代用できますが、カッターの刃を当てると削れてしまうことがあるため、金属製のものを選ぶのがおすすめです。
さらに、模型製作専用の定規もあり、これらを揃えておくと作業をスムーズに進めることができます。
建築模型材料の概要と選び方のポイント
建築模型製作に必要な材料は、大きく「製作材料」「カラー材料」「接着材」の3種類に分類されます。
それぞれの特徴を理解し、目的に応じて適切に選択することが、成功する模型製作の鍵となります。
模型の用途やスケール、予算、製作者のスキルレベルなどを総合的に考慮して材料を選ぶことが重要です。
また、材料選びは完成度だけでなく、製作過程の効率性にも大きく影響するため、慎重に検討する必要があります。
製作材料
製作材料は建築模型の骨格となる最も重要な要素です。
どの素材を選ぶかによって、模型の外観、制作の難易度、コストが大きく変わります。
以下、主要な製作材料について詳しく解説します。
スチレンボード
スチレンボードは建築模型の素材として最も多く用いられる基本的な材料です。
柔らかい発泡スチロールを紙でコーティングした素材で、カットが簡単で初心者にも扱いやすいのが特徴です。
スチレンボードは厚みのバリエーションが豊富で、土台や壁、屋根、建物など、模型のタイプや部位によって使い分けることができます。
また、表面の紙を外して薬品を塗布すると簡単に曲げることができるため、曲線的な表現も可能です。
建築模型用のスチレンボードを選ぶ際は、一般的な画材用と区別して、建築模型専用に開発された製品を選ぶことをおすすめします。
専用品は寸法安定性が高く、サイズと厚みのバリエーションが豊富で、表面が滑らかで塗装の仕上がりが美しいという特徴があります。
1/50スケールの住宅模型を製作する場合、外壁には4mmまたは5mm厚、内壁には3mm厚を使用することが一般的です。
屋根や細部の表現には2mm厚を使用することで、よりスケール感のある仕上がりになります。
初心者が建築模型を作る際は、まずスチレンボードを使用することをおすすめします。
取り扱いが容易で失敗が少なく、基本的な技術を身につけるのに最適です。
木材
木の風合いを活かしたり、ナチュラルな雰囲気を表現したい場合に木材が使われます。
木材を使った建築模型は完成のイメージが分かりやすく、温かみのある仕上がりになるため人気があります。
建築模型に使用される主な木材として、バルサ材とシナノキがあります。
バルサ材は軽量で安価なため初心者にも扱いやすいですが、折れやすく表面にざらつきがあるという難点があります。
一方、シナノキは手触りが良く仕上がりも美しいですが、バルサ材よりも高価です。
木材を使用する際の重要なポイントは、カットのしやすさです。
見た目が良くても切りにくい素材を使うと、カット時に力が入りすぎて指をケガする危険性があります。
予算と出来上がりのイメージ、安全性を総合的に考慮して選択することが重要です。
紙類
紙も建築模型で人気の高い素材です。
紙は、厚みによって十分な強度があり、重ねて貼り合わせることで様々な表現が可能です。
紙材料の大きなメリットは軽量性です。
素材の重さで模型が潰れる心配がなく、スチレンボードと比べてリーズナブルな価格で入手できるのも魅力です。
建築模型に使用する紙で特におすすめなのがケント紙です。
ケント紙は紙の中でも一般的な存在ですが、折り曲げや他の紙との組み合わせなど応用範囲が広い素材です。
色が美しい白なので、模型の仕上げに使われることも多く、初心者にも扱いやすい材料です。
スタイロフォーム
スタイロフォームは大規模な模型製作や、スタディ模型に使用される材料です。
発泡スチロールの一種で、適度な硬さがありつつカットしやすいという特徴があります。
主に土台作りに使用されることが多いですが、地塗りが必要なため作業に時間がかかります。
また、密度の異なる様々な色のバリエーションがあり、用途に応じて使い分けることができます。
ヒートカッターを使用すると簡単に綺麗にカットできるため、大きな部材を加工する際に便利です。
周囲の既存建築物の表現にも使用でき、スタディ模型では特に重宝する材料です。
ミュージアムボード
高級感のある模型を製作したい場合におすすめの材料がミュージアムボードです。
切り口が黒いのが特徴で、仕上げの必要がないため作業効率が良いという利点があります。
ただし、扱いにくい材料でもあるため、小規模な模型や特別な表現を行いたい部分に限定して使用するのがおすすめです。
価格も比較的高価なため、予算と仕上がりのバランスを考慮して選択する必要があります。
アクリル
透明感のあるアクリルは、美しい模型を製作したい場合に適した材料です。
ガラス面の表現や、透明性を活かした特殊な表現に使用されます。
しかし、価格が非常に高く、レーザーカッターがなければカットできないという大きな制約があります。
手作業でのカットは極めて困難なため、設備の整った環境でのみ使用可能な材料と考えた方が良いでしょう。
アクリルに似た材料として、プラ板があります。
こちらは手作業でもカットが可能で、窓などのガラス表現に適しています。
カッターで軽く切り線を入れる「けがく」という技法により、サッシの表現も可能です。
カラー材料
建築模型用の素材は白ベースが一般的なため、色を付けて美しく仕上げたい場合には、別途カラー材料を使用する必要があります。
カラー材料は模型の見た目の印象を大きく左右するため、どのような仕上がりにしたいかを明確にして選択することが重要です。
素材感も重要な要素となるため、色数の多い色紙やカラーパウダーなどの使用がおすすめです。
接着剤
建築模型では様々な素材を張り合わせるため、接着剤の選択は非常に重要です。
適切な接着剤を選ぶことで、強固で美しい接着が可能になります。
接着剤選択の重要なポイントは、乾燥の早さと素材を溶かさないかという点です。
特に美しさが重要な建築模型では、乾燥後の状態も考慮する必要があります。
模型用に開発されたスチレンボンド(スチボンド)は、大抵の素材に使用でき、発泡系の素材を溶かさないという利点があります。
Gクリアは比較的早く固まり、糸を引きにくいという特徴があります。
木工用ボンドは特に木材系の模型製作に適しています。
また、スプレーボンドは紙など広範囲にわたって面接着を行う際に便利ですが、使用時は必ずスプレーブースを使用し、周囲への飛散を防ぐ必要があります。
接着作業を行う際は、いきなり本接着せずに、マスキングテープなどで仮止めを行い、位置を確認してから接着しましょう。
これにより失敗を防ぎ、より正確な模型製作が可能になります。
まとめ
建築模型材料の選び方は、製作する模型の目的、スケール、予算を総合的に考慮することが重要です。
基本道具はカッターナイフ、カッティングマット、ピンセット、定規の4つが必須で、品質の良いものを選ぶことで作業効率と仕上がりが向上します。
製作材料では、初心者にはスチレンボードが最適です。
扱いやすく失敗が少ないため、基本技術の習得に適しています。
慣れてきたら木材や紙材料などにも挑戦し、表現の幅を広げましょう。
最初からすべてを揃える必要はなく、基本から始めて徐々に充実させることで効率的にスキルアップできます。
実践を重ねることで確実に上達するため、失敗を恐れずに挑戦してください。