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2025.07.07

学生におすすめの建築コンペ10選

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建築を学ぶ学生や、設計の道を歩み始めた若手にとって、自身のアイデアを試し、実力を世に問う「建築コンペ」は、非常に価値のある挑戦の場です。

本記事では、建築コンペの基礎知識から、学生におすすめのコンペまで、具体的な情報を交えながら詳しく解説します。

自身の可能性を広げ、キャリアを切り拓くための一歩として、ぜひ本記事を参考にコンペへの参加を検討してみてください。

 

建築コンペとは

 

建築コンペとは、特定のテーマや敷地条件に基づき、建築の設計案を募り、その優劣を競うイベントです。

主催者は、地方自治体、企業、各種団体など多岐にわたり、新しい才能の発掘や、革新的なアイデアの収集、特定の建築プロジェクトの設計者選定などを目的として開催されます。

参加者は、与えられた課題に対して、独自のコンセプトとデザインを提案します。

著名な建築家や学者などで構成される審査員によって、提出された案が審査され、最優秀賞や優秀賞などの各賞が決定されるのが、建築コンペです。

 

学生が建築コンペに参加するメリット

 

建築コンペへの参加は、学生にとって多くのメリットをもたらします。

 

実践的な設計スキルの向上

 

大学の課題とは異なり、コンペではより実践的で社会性を帯びたテーマが設定されます。

与えられた条件下で、コンセプトの立案から設計、図面や模型、CGなどを用いたプレゼンテーションまで、一連のプロセスを自律的に進める経験は、設計スキルを飛躍的に向上させます。

他の参加者の多様なアプローチに触れることも、自身の視野を広げる絶好の機会です。

 

ポートフォリオの充実と実績作り

 

コンペでの受賞歴は、将来の就職活動やキャリアにおいて、自身の能力を証明する強力な武器となります。

たとえ受賞に至らなくても、真摯に取り組んだ作品はポートフォリオの重要な一部となり、設計への情熱と実力をアピールする材料になるのです。

 

業界とのネットワーク構築

 

コンペの公開審査や表彰式は、著名な建築家や審査員、他の参加者と交流できる貴重な機会です。

自身の作品を直接評価してもらえたり、業界のプロフェッショナルと繋がりを持てたりすることは、その後のキャリアにおいて大きな財産となるでしょう。

 

モチベーションの向上と自己発見

 

自らのアイデアがどこまで通用するのかを試すことは、大きな挑戦であると同時に、学びへのモチベーションを掻き立てます。

また、コンペという目標に向かって試行錯誤する過程で、自分自身の興味の方向性や、得意な表現方法など、新たな自己発見にも繋がります。

 

学生におすすめの建築コンペ10選

 

ここでは、学生が応募しやすい、あるいは学生をメインターゲットとした建築コンペを10件厳選して紹介します。

それぞれに特徴があるので、自分の興味やスキルに合ったコンペを見つけてみましょう。

 

①ヒューリック学生アイデアコンペ

 

不動産会社であるヒューリック株式会社が主催する、学生を対象としたアイデアコンペです。

2013年から続く歴史あるコンペで、実際の都市開発を視野に入れた具体的な敷地が設定されるのが大きな特徴です。

「事業者」としての視点が求められ、デザイン性だけでなく、事業性や社会のニーズを捉えた現実性の高い提案が評価されます。

 

主催 ヒューリック株式会社
応募資格 大学院、大学、短期大学、専門学校、高等専門学校に在籍する学生
賞金 最優秀賞200万円、優秀賞50万円、佳作10万円(※2025年開催情報)
審査員 亀井 忠夫(株式会社日建設計 取締役会長)

伊香賀 俊治(慶應義塾大学 名誉教授)

木村 駿(日経アーキテクチュア編集長)

中村 拓志(建築家、明治大学 理工学部 特別招聘教授)

根本 祐二(東洋大学国際PPP研究所シニア・リサーチパートナー)

前田 隆也(ヒューリック株式会社 代表取締役社長)

ポイント リアルな敷地と事業性という条件の中で、いかに創造的なアイデアを提案できるかが問われます。

不動産開発の視点を学ぶ絶好の機会と言えるでしょう。

 

出典:ヒューリック株式会社「第13回ヒューリック 学生アイデアコンペ

 

②ハーフェレ学生デザインコンペティション

 

家具金物や建具金物などを扱う株式会社ハーフェレジャパンが、建築・インテリアを学ぶ学生を支援するために2009年から毎年開催している設計コンペです。

抽象的で思索を促すようなテーマが特徴で、参加者の自由な発想力を引き出すことを意図しています。

二次審査を通過すると、模型を交えた公開審査に進むことができ、審査員との直接的な質疑応答を通して、自身の提案を深く伝えることができます。

 

主催 株式会社ハーフェレジャパン
応募資格 日本国内の大学院、大学、短大、専修学校、専門学校、高等専門学校に籍をおく学生の個人または代表者含め5人までのグループ。
賞金 最優秀賞1作品40万円 、優秀賞4作品各5万円
審査員 五十嵐 淳(建築家)五十嵐淳建築設計事務所

山田 紗子(建築家)山田紗子建築設計事務所

増田 信吾(建築家)増田信吾+大坪克亘

ポイント 自由な発想が求められるため、コンセプトの独自性と、それを建築空間として説得力をもって表現する力が重要になります。

 

出典:株式会社ハーフェレジャパン「ハーフェレ学生デザインコンペティション

 

③OFFICE DESIGN COMPETITION~働く人と働く場所の未来をつくる学生コンペ~

 

オフィスデザインを手がける株式会社フロンティアコンサルティングと、建築・デザイン専門誌『月刊 商店建築』を発行する株式会社商店建築社が共催する、オフィスの未来を考える学生コンペです。

若い世代にオフィスデザインへの関心を深めてもらい、次世代の人材育成を目的としています。

ロケーションや規模などは応募者が自由に設定でき、「働く」という行為に対する深い洞察に基づいた提案が求められます。

 

主催 FRONTIER CONSULTING + 商店建築
応募資格 学生
賞金 Gold50万円、Silver30万円、Bronxw10万円
審査員 五十嵐 久枝(有限会社イガラシデザインスタジオ、武蔵野美術大学教授)

猪熊 純(成瀬・猪熊建築設計事務所、芝浦工業大学教授)

塩田 健一(株式会社商店建築社、月刊商店建築 編集長)

稲田 晋司(株式会社フロンティアコンサルティング、執行役員 デザイン部 部長)

ポイント 現代の多様な働き方を踏まえ、これからのオフィス空間はどうあるべきか、という問いに答えるコンペです。

社会の変化を読み解き、新しい働き方のシーンを具体的にデザインする能力が試されます。

 

出典:FRONTIER CONSULTING + 商店建築「第3回テーマ

 

④ダイワハウス コンペティション

 

大手住宅メーカーである大和ハウス工業株式会社が主催する、歴史と権威のある設計コンペです。

これからの建築業界を担う世代に挑戦の場を提供し、暮らしや住まいに関する議論を深めることを目的としています。

「帰りたい家」といった、住まいの本質を問う普遍的なテーマが掲げられることが多く、参加者の幅広い解釈による多様な提案が期待されます。

 

主催 大和ハウス工業株式会社
応募資格 不問
賞金 最優秀賞(1点)200万円、優秀賞(2点)各30万円、入賞(4点)各10万円、大和ハウス工業賞(1点)30万円、佳作(10点)各5万円
審査員 青木 淳(建築家 AS)

堀部 安嗣(建築家 堀部安嗣建築設計事務所 放送大学教授)

平田 晃久(建築家 平田晃久建築設計事務所 京都大学教授)

小堀 哲夫(建築家 小堀哲夫建築設計事務所 法政大学教授)

八田 哲男(大和ハウス工業 執行役員)

ポイント 学生だけでなく実務家も参加するためレベルは高いですが、住宅設計の根源的なテーマに取り組むことで、設計思想を深めることができます。

 

出典:大和ハウス工業株式会社「第20回ダイワハウスコンペティション

 

⑤わたし to デザイン

 

共立女子大学 建築・デザイン学部が主催する、中学生から大学生までを対象としたデザインコンペです。

スマートフォンから気軽に応募できる手軽さが魅力です。

建築やデザインの楽しさに触れ、プレゼンテーション能力を養うことを目的としています。

 

主催 共立女子大学 建築・デザイン学部/建築・デザイン学科
応募資格 建築分野・デザイン分野に興味のある中学生・高校生・大学生
賞金 なし
審査員 記載なし
ポイント 応募のハードルが低く、アイデアをビジュアルで表現する練習の場として最適です。

若いうちからデザインコンペに触れるきっかけとして、非常におすすめです。

 

出典:ケンデバ「わたし to デザイン

 

⑥エイブル空間デザインコンペティション

 

賃貸仲介大手の株式会社エイブルが主催する、賃貸住宅の新しい可能性を探る学生コンペです。

具体的な空間設定の中で、現代的なテーマに対するデザインを提案します。

最大の特徴は、グランプリ作品が実物大で制作・展示される点です。

自分の設計した空間が現実になるという、またとない経験ができます。

 

主催 株式会社エイブル
応募資格 大学生・大学院生・専門学校生・高専生
賞金 グランプリ20万円、セミグランプリ10万円
審査員 谷尻 誠(建築家)

猪熊 純(建築家)

成瀬 友梨(建築家)

茂木 健一郎(脳科学者)

トラウデン直美(モデル、タレント)

平田 竜史(株式会社エイブルホールディングス 代表取締役社長)

ポイント 限られた空間の中で、テーマ性をいかに豊かに、かつ現実的な賃貸住宅として提案できるかが鍵となります。

実作に繋がるという点で、非常にモチベーションの上がるコンペです。

 

出典:エイブル「エイブル&パートナーズグループの芸術文化活動について

 

⑦日新工業建築設計競技

 

防水材料メーカーである日新工業株式会社が主催し、半世紀以上の歴史を誇る建築設計競技です。

「地の家」「生きられた家」など、建築の根源を問うような、示唆に富んだテーマが毎年設定されます。

その歴史と権威から、建築界の登竜門の1つとして広く認知されており、多くの著名な建築家を輩出してきました。

提出物はA2用紙1枚に集約され、図面表現の力が問われます。

 

主催 日新工業株式会社
応募資格 不問
賞金 1等1点:100万円、2等1点:50万円、3等1点:30万円、佳作8点:各10万円
審査員 西沢 立衛

平田 晃久

吉村 靖孝

羽鳥 達也

藤村 龍至

相臺 志浩

ポイント 長い歴史を持つコンペであり、その時代時代の建築の潮流を反映した作品が評価されてきました。過去の受賞作品を研究することも、非常に勉強になります。

図面1枚で設計意図を伝えきる、凝縮された表現力が求められます。

 

出典:日新工業建築設計競技「コンペ概要

 

⑧グッドデザイン・ニューホープ賞

 

日本デザイン振興会が主催するグッドデザイン賞の一部門で、学生や新進デザイナーを対象としています。

建築に限らず、プロダクト、グラフィック、ソフトウェアなど、あらゆる分野のデザインが対象です。

学校の課題制作や卒業制作、自主研究など、在学中に制作した作品で応募できるのが大きな特徴です。

社会をより良くするためのデザインという視点が重視されます。

 

主催 公益財団法人日本デザイン振興会
応募資格 2025年4月1日現在で個人またはグループの全員が日本国内の各種専修専門学校・大学・大学院に在籍しているか、2024年6月1日以降に卒業・修了した者。
賞金 最優秀賞(1点) 表彰状・記念品・賞金30万円、優秀賞(7点) 表彰状・記念品・賞金各5万円、入選(点数制限なし) 表彰状
審査員 審査委員長:齋藤 精一(クリエイティブディレクター/パノラマティクス主宰)

審査副委員長:倉本 仁 (プロダクトデザイナー | JIN KURAMOTO STUDIO 代表取締役)

審査副委員長:永山祐子(建築家/有限会社永山祐子建築設計 取締役)

ポイント 既存の作品で応募できるため、新たに取り組む時間がない場合でも挑戦しやすいコンペです。

自身の作品を、建築という枠を超えて「デザイン」という広い視野で評価してもらう良い機会になります。

 

出典:公益財団法人日本デザイン振興会「グッドデザイン・ニューホープ賞

 

⑨Tokyo Midtown Award デザインコンペ

 

東京ミッドタウンが主催する、アートとデザインの2部門からなるアワードのデザインコンペ部門です。

「“Next Experience”へのアイデア」など、未来の体験を問うジャンルレスなテーマが特徴です。

受賞作品の商品化やイベント化など、実現に向けたサポートが手厚いことで知られています。

グランプリ受賞者には副賞としてミラノサローネへの渡航が贈られるなど、国際的な視野を広げるきっかけにもなります。

 

主催 東京ミッドタウン
応募資格 募集締切時点で39歳以下
賞金 グランプリ100万円(1点)、準グランプリ50万円(1点)、優秀賞30万円(1点)
審査員 倉本 仁(プロダクトデザイナー)

篠原 ともえ(デザイナー/アーティスト)

菅野 薫(クリエーティブディレクター/クリエーティブテクノロジスト)

中村 拓志(建築家)

山田 遊(バイヤー)

ポイント 建築という特定の領域に留まらず、プロダクトやコミュニケーションなど、幅広いデザイン領域を横断するようなアイデアが求められます。

受賞後のサポートが充実しており、自身のアイデアを社会に実装したいと考える人にとって大きなチャンスです。

 

出典:東京ミッドタウン「Tokyo Midtown Award 2025

 

⑩セントラル硝子国際建築設計競技

 

ガラスメーカーのセントラル硝子株式会社が主催し、雑誌『新建築』との共催で行われる、国際的な建築設計競技です。

こちらも半世紀以上の歴史を持ち、国内外から多くの応募が集まります。

「暇な駅」「都市と農村を繋ぐ建築」など、現代社会が抱える課題を鋭く捉えたテーマが特徴です。

一次審査を通過すると、模型制作が求められ、二次審査で各賞が決定します。

 

主催 セントラル硝子株式会社
応募資格 不問
賞金 最優秀賞200万円、優秀賞(2点)各30万円、入選(4点)各10万円、佳作(10点)各5万円
審査員 青木 淳(AS)

亀井 忠夫(株式会社日建設計)

賀持 剛一(株式会社大林組)

塚本 由晴(アトリエ・ワン)

石上 純也(石上純也建築設計事務所)

山田 紗子(山田紗子建築設計事務所)

ポイント 国際コンペであり、世界中の同世代とアイデアを競うことができます。

社会性の高いテーマに対して、建築を通してどのような解答を提示できるか、思考の深さと提案のオリジナリティが問われる、非常にレベルの高いコンペティションです。

 

出典:セントラル硝子国際建築設計競技「2025年第60回テーマ暇な駅

 

まとめ

 

建築コンペは、設計スキルを磨き、自身の創造性を試すための絶好の舞台です。

本記事で紹介した10のコンペは、それぞれに異なる特色と魅力を持っています。

リアルな事業性を問うものから、自由な発想を歓迎するもの、住宅やオフィスといった具体的な用途に特化したものまで様々です。

大切なのは、まず自分の興味や関心に合ったコンペを見つけることです。

コンペへの挑戦は、たとえ入賞できなくても、設計と向き合った時間そのものが貴重な財産となります。

ポートフォリオを豊かにし、将来のキャリアを切り拓く上で、学生時代のコンペ経験は間違いなく大きな力になるでしょう。

本記事をきっかけに、ぜひあなたも建築コンペの世界に飛び込んでみてください。

 

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