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2025.02.11
建築設計のチェックリスト!基本設計や実施設計の内容を徹底解説

建築物を安全に設計するためには、チェックリストが必須です。
今回は、建築設計で行っている内容に関して、具体的に解説します。
建築設計の業種も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
建築設計の業種
建築設計とは、建物や設備設計に関係する業務を包括的に表した言葉です。
技術士や建築士、建築事務所の所員などが建築設計に携わる業種となっています。
建築設計の業種は、主に「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3種類です。
1つずつどのような内容なのかを見ていきましょう。
意匠設計
意匠設計は、建築物におけるデザインを決定する仕事です。
具体的には、クライアントから要望を聞き取り、理想的な間取りやデザインを考えます。
意匠設計者が作成した設計図を基に工事が進行するため、重要な役割を果たしているのです。
また、意匠設計者は構造設計者や設備設計者と連携して全体をまとめるリーダー役を担います。
そのため、スケジュール管理能力やリーダーシップも必要になるでしょう。
構造設計
構造設計は、「構造」の観点から建築物の設計に問題がないか確かめる仕事です。
具体的には、構造解析や部材検討、ディテールの検討、計算書の作成、申請業務、着工後の現場対応などが含まれます。
構造設計者は力学的なセンスやコミュニケーション能力を持ち、柔軟にスケジュール調整しながら効率よく仕事を進めなければなりません。
また、問題があった際に解決策を考案する「提案力」も求められます。
設備設計
設備設計は、建物として機能するために必要な電気・空調・音響・給排水設備などを適切に計画・設計する仕事です。
設備設計者は、省エネルギーや快適性を考慮しながら、建物のインフラ整備やデザインと機能の両立を図ります。
また、設備機器の選定時には、コストも考えなければなりません。
クライアントの希望と予算感を両立させるためにも、コスト管理力が求められます。
建築設計の内容
続いて、建築設計の内容は以下の通りです。
・相談・ヒアリング
・企画設計
・基本設計
・実施設計
・確認申請
・施工監理
・竣工
・引き渡し
・メンテナンス
それでは、1つずつ見ていきましょう。
相談・ヒアリング
相談・ヒアリングは、建築プロジェクトの最初の重要なステップです。
この段階では、クライアントの要望や予算、土地の状況、建物の用途などについて詳細な聞き取りを行います。
また、クライアントのライフスタイルや事業計画、将来的な展望なども含めて包括的な情報収集もします。
この過程で建築家とクライアントの信頼関係を構築し、プロジェクトの方向性を定めていくのです。
さらに、敷地調査や法規制の確認、周辺環境の調査なども行い、プロジェクトの実現可能性を検討します。
企画設計
企画設計では、ヒアリングで得た情報を基に、建物の基本的なコンセプトや方向性を決定します。
敷地条件や法規制を考慮しながら、建物の規模、配置、概算予算などを検討し、複数の計画案を作成するのです。
この段階では、スケッチや図などを用いて、クライアントとイメージを共有しながら計画を具体化していきます。
また、概算工事費の算出も行い、予算との整合性を確認することも重要です。
基本設計
基本設計では、企画設計で決定したコンセプトに基づき、建物の具体的な形を決めていきます。
事前調査
事前調査では、実際に建設予定地へ出向き、以下のような内容を調査します。
地理的特性、地質条件、周辺環境、法的規制、地盤調査、日照・通風条件の分析、隣接建物との関係、道路との関係、給水、排水、ガスなどの都市施設の現況、建築規制 など |
上記以外にも、地域の文化的背景を考慮し、その土地に最適な建築デザインの可能性を探ります。
基本設計図書の作成
事前調査の結果を踏まえ、建物の全体的な計画を具体化します。
建築士は、平面図、立面図、断面図などの基本的な設計図を作成し、建物の空間構成、各部屋の配置、動線、構造的特徴を明確にします。
同時に、意匠、構造、設備の各分野における基本的な仕様や要求性能を詳細に検討するのもこの段階です。
初期段階での詳細な検討により、後の実施設計における修正リスクを最小限に抑えます。
概算工事費の算定
概算工事費の算定は、設計内容を具体的な経済的観点から評価する重要な工程です。
建築士や積算担当者は、基本設計図書に基づき、建築材料や設備機器、内装、外構などの各項目について詳細な積算を行います。
最新の建設資材の価格、労務単価、地域の建設市場の動向を考慮し、可能な限り正確な工事費を見積もるのが大切です。
また、同規模・同用途の類似プロジェクトの実績データも参考にし、予期せぬコストの変動にも対応できるよう、一定の余裕を持たせた概算を作成します。
予算に合わせた設計の調整
概算工事費の算定後、クライアントの予算との整合性を確認し、必要に応じて設計を調整します。
工事費が予算を大幅に超過する場合、建築士は設計内容の見直しをしなければいけません。
材料の変更や仕様の簡略化、建物規模の縮小、機能の統合など、さまざまな観点から設計を最適化します。
この過程では、クライアントと密接なコミュニケーションを取り、優先順位の高い要素と妥協可能な要素を慎重に検討するのが重要です。
最終的には、予算内で最大限の価値を提供できる設計案を追求し、クライアントの満足度と経済性のバランスを図ります。
実施設計
実施設計は、基本設計を基に、実際の建設工事に必要な詳細な図面を作成する段階です。
構造設計や設備設計と密接に連携しながら、建物のあらゆる部分について具体的な寸法や仕様を決定します。
実施設計図書の作成
実施設計図書の作成では、基本設計に基づき、設計の意図を正確に伝えるための詳細な設計図や仕様書を作成します。
図面には、材料の仕様や寸法、工法、接合方法、仕上げ条件などを明確に記載します。
実施設計図書は工事指示書の役割も果たすため、工事費の詳細な見積もりの算出も可能です。
実施設計図書の確認
実施設計図書の確認は、設計品質を保証するための重要なプロセスです。
まず、社内での技術的な照査を行い、設計者以外の建築士や技術者による第三者チェックを実施します。
その後、クライアントとの最終的な設計内容の確認を行い、要望や意図が正確に反映されているかを確認します。
必要に応じて、専門コンサルタントや構造計算適合性判定機関によるレビューも実施し、設計の信頼性を高めます。
建築確認申請
確認申請は、設計した建物が建築基準法などの法令に適合していることを証明する重要な行政手続きです。
申請に必要な図面や書類を作成し、建築主事または指定確認検査機関に提出します。
この過程では、構造計算書や設備設計図、各種計算書など、多岐にわたる書類の準備が必要です。
また、審査機関からの指摘事項に対応し、必要に応じて設計内容の修正も行います。
建築確認済証の受領
建築確認済証の受領は、建築プロジェクトを正式に進めるための法的な手続きです。
作成した実施設計図書を地方自治体の建築確認窓口に提出し、建築基準法に基づく厳格な審査を受けます。
審査では、建物の安全性や耐震性、防火性、衛生性、避難経路などが詳細にチェックされます。
審査に合格すると、建築確認済証が交付され、工事着工が可能となるのです。
保険会社の選定
住宅瑕疵担保責任保険会社の選定をします。
この保険の内容は、竣工後に、建物の主要構造部や雨水の浸入を防ぐ部分に瑕疵があった場合、10年間補修費用などを保障するというものです。
建築士があらかじめ保険会社を選定し、施工者が申し込みをします。
施工監理
施工監理では、設計図書通りに工事が進められているかを確認し、必要な指示や監督を行います。
定期的に現場を訪れ、工事進捗状況の確認や施工者との打ち合わせ、工事監理報告書の作成などをするのです。
また、工事中に生じる様々な問題に対して、設計者としての立場から適切な判断と指示を行い、建物の品質確保に努めます。
工事費用の見積もり依頼
工事費用の見積もり依頼は、複数の施工業者に対して詳細な工事仕様書と設計図書を提示し、正確な見積もりを求める重要な段階です。
通常、3〜4社の施工会社へ見積もりを依頼します。
施工者からの見積もり確認
施工者から提出された見積もりを詳細に確認します。
各見積もりを比較検討し、単なる価格だけでなく、技術提案の質や工事の実現可能性、過去の実績、品質保証などを総合的に評価するのが重要です。
見積もりの内容に不明確な点や疑問がある場合は、施工者に追加説明を求め、詳細を確認します。
また、予算との整合性、設計意図の理解度、工程計画の妥当性などを慎重に審査し、最適な施工者を選定するための重要な判断材料とするのです。
施工者の選定と契約立ち会い
施工者の最終決定は、クライアントが行います。
建築士は、施工者とクライアントの間で行われる建築工事請負契約の締結の場に立ち会います。
建築士は、クライアントの利益を守りつつ、公平で明確な契約を締結することが重要です。
基礎躯体工事の確認
鉄筋コンクリートで基礎をつくり、骨組みや主要構造部を建築します。
基礎躯体工事の主な確認内容は、以下の通りです。
地盤の状況、基礎の形状と配筋、コンクリートの品質、アンカーボルトの品質、鉄筋の配置、型枠の精度、柱や梁の材質 など |
上記の内容を確認した後に、クライアントへ報告確認内容を報告します。
仕上げ工事・設備工事の確認
仕上げ工事・設備工事の確認では、建物の意匠性、機能性、快適性を確保するため、細部にわたり施工状況を確認します。
主な確認内容は、以下の通りです。
内装材の選択、仕上げの精度、色調、配管・配線の状況、各設備の状況、電気配線・配管の状況 など |
クライアントの意図と設計要件が、正確に実現されているかを慎重に確認します。
工事状況の報告
工事の進捗状況、品質管理、予算の執行状況、今後の予定などを詳細に記載した報告書を作成し、クライアントへ報告します。
内装確認
内装確認では、設計図書通りの空間が実現されているかを詳細に確認します。
主な確認内容は、以下の通りです。
壁・床・天井の仕上げ、光の入り方、色彩のバランス、質感、建具の精度 など |
クライアントの要望や設計者の意図が正確に反映されているかを確認し、必要に応じて修正や調整をします。
竣工
施工監理の後は、竣工となります。
竣工検査
竣工検査は、建築物が設計図書通りに完成しているかを総合的に確認する重要なプロセスです。
施工者、設計者、監理者が共同で建物の細部にわたり詳細な検査を実施します。
完了検査へ立ち会い
完了検査では、行政による法的な最終確認が行われます。
工事完了後には、4日以内に地方公共団体などに「完了検査申請書」を提出しなければいけません。
建築主事や指定確認検査機関が建物の安全性、法適合性を厳格に審査し、無事に合格となれば「検査済証」が交付されます。
合格すると、検査済証が交付され、建物の使用が正式に許可されます。
クライアントによる確認
建築士、施工者が立ち会いのもと、クライアントが完成した建物を確認します。
引き渡し
引き渡しは、工事が完了し、建物をクライアントに引き渡す重要な段階です。
完了検査を実施し、設計図書通りに工事が完了していることを確認します。
また、建築設備の試運転や検査、各種検査済証の取得なども、この段階で行うのです。
そして、クライアントに対し、建物の使用方法や維持管理に関する説明を行い、必要書類や取扱説明書なども引き渡します。
メンテナンス
メンテナンスは、建物の引き渡し後、長期にわたり建物の性能と価値を維持するための重要な段階です。
定期的な点検や補修、改修計画の立案など、建物の維持管理に関する様々なサポートをします。
また、使用状況の変化や劣化状況に応じて、適切な改修提案や設備更新の計画を立案するのです。
さらに、省エネルギー対策や機能向上のための提案なども行い、建物の長寿命化をサポートします。
まとめ
今回は、建築設計で行っている内容に関して、具体的に解説しました。
建築設計はチェックリストに沿って、安全かつ確実に行われます。
これから建築設計の仕事に就きたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。