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2025.01.13
建築設計から建物完成までの手順を徹底解説!

「建物が完成するまで、どんなステップを踏むんだろう?」と疑問に思っている方もいるでしょう。
そこで、本記事では建築設計から建物完成までの手順を徹底解説します。
建築設計で使用する定番建築CADも紹介するので、建築士を目指している方はぜひ最後までご覧ください。
建築設計とは?
建築設計とは、建物や設備設計に関係する業務を包括的に表した言葉です。
技術士や建築士、建築事務所の職員などが建築設計に携わる業種となっています。
建築設計の業種は、主に「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3種類です。
一つずつどのような内容なのかを見ていきましょう。
意匠設計
意匠設計は、建築物におけるデザインを決定する仕事です。
具体的には、クライアントから要望を聞き取り、理想的な間取りやデザインを考えます。
意匠設計者が作成した設計図を基に工事が進行するため、重要な役割を果たしているのです。
また、意匠設計者は構造設計者や設備設計者と連携して全体をまとめるリーダー役を担います。
そのため、スケジュール管理能力やリーダーシップも必要になるでしょう。
構造設計
構造設計は、「構造」の観点から建築物の設計に問題がないか確かめる仕事です。
具体的には、構造解析や部材検討、ディテールの検討、計算書の作成、申請業務、着工後の現場対応などが含まれます。
構造設計者は力学的なセンスやコミュニケーション能力を持ち、柔軟にスケジュール調整しながら効率よく仕事を進めなければなりません。
また、問題があった際に解決策を考案する「提案力」も求められます。
設備設計
設備設計は、建物として機能するために必要な電気・空調・音響・給排水設備などを適切に計画・設計する仕事です。
設備設計者は、省エネルギーや快適性を考慮しながら、建物のインフラ整備やデザインと機能の両立を図ります。
また、設備機器の選定時には、コストも考えなければなりません。
クライアントの希望と予算感を両立させるためにも、コスト管理力が求められます。
建築設計の流れ
建築設計の流れは、以下の通りです。
1.相談・ヒアリング
2.企画設計
3.基本設計
4.実施設計
5.確認申請
6.施工監理
7.引き渡し
8.メンテナンス
それでは、一つずつ見ていきましょう。
相談・ヒアリング
相談・ヒアリングは、建築プロジェクトの最初の重要なステップです。
この段階では、クライアントの要望や予算、土地の状況、建物の用途などについて詳細な聞き取りを行います。
また、クライアントのライフスタイルや事業計画、将来的な展望なども含めて包括的な情報収集もします。
この過程で建築家とクライアントの信頼関係を構築し、プロジェクトの方向性を定めていくのです。
さらに、敷地調査や法規制の確認、周辺環境の調査なども行い、プロジェクトの実現可能性を検討します。
企画設計
企画設計では、ヒアリングで得た情報をもとに、建物の基本的なコンセプトや方向性を決定します。
敷地条件や法規制を考慮しながら、建物の規模、配置、概算予算などを検討し、複数の計画案を作成するのです。
この段階では、スケッチや図などを用いて、クライアントとイメージを共有しながら計画を具体化していきます。
また、概算工事費の算出も行い、予算との整合性を確認することも重要です。
基本設計
基本設計では、企画設計で決定したコンセプトに基づき、建物の具体的な形を決めていきます。
平面図や3Dモデルを利用し、建物の構造形式や設備システムの概要を決定していくのです。
この段階では、より詳細な法規チェックを行い、確認申請に向けた準備も始めます。
また、同時に使用する主要な材料や設備機器の選定、概算工事費の見直しなどもします。
実施設計
実施設計は、基本設計を基に、実際の建設工事に必要な詳細な図面を作成する段階です。
構造設計や設備設計と密接に連携しながら、建物のあらゆる部分について具体的な寸法や仕様を決定します。
施工者が混乱なく工事を進められるよう、細部にわたり検討し、詳細図や展開図、建具表などの図面を作成するのです。
小さな住宅規模でも、100枚前後の詳細な図面を用意し、丁寧に準備していきます。
また、積算を行い、より正確な工事費を算出するのも重要です。
確認申請
確認申請は、設計した建物が建築基準法などの法令に適合していることを証明する重要な行政手続きです。
申請に必要な図面や書類を作成し、建築主事または指定確認検査機関に提出します。
この過程では、構造計算書や設備設計図、各種計算書など、多岐にわたる書類の準備が必要です。
また、審査機関からの指摘事項に対応し、必要に応じて設計内容の修正も行います。
施工監理
施工監理では、設計図書通りに工事が進められているかを確認し、必要な指示や監督を行います。
定期的に現場を訪れ、工事進捗状況の確認や施工者との打ち合わせ、工事監理報告書の作成などをするのです。
また、工事中に生じる様々な問題に対して、設計者としての立場から適切な判断と指示を行い、建物の品質確保に努めます。
引き渡し
引き渡しは、工事が完了し、建物をクライアントに引き渡す重要な段階です。
完成検査を実施し、設計図書通りに工事が完了していることを確認します。
また、建築設備の試運転や検査、各種検査済証の取得なども、この段階で行うのです。
そして、クライアントに対し、建物の使用方法や維持管理に関する説明を行い、必要書類や取扱説明書なども引き渡します。
メンテナンス
メンテナンスは、建物の引き渡し後、長期にわたり建物の性能と価値を維持するための重要な段階です。
定期的な点検や補修、改修計画の立案など、建物の維持管理に関する様々なサポートをします。
また、使用状況の変化や劣化状況に応じて、適切な改修提案や設備更新の計画を立案するのです。
さらに、省エネルギー対策や機能向上のための提案なども行い、建物の長寿命化をサポートします。
建築設計で使用する定番建築CAD5選
最後に、建築設計で使用する定番の建築CADを5つ紹介します。
1.AutoCAD(オートキャド)
2.VectorWorks(ベクターワークス)
3.ArchiCAD(アーキキャド)
4.ARCHITREND ZERO(アーキトレンド ゼロ)
5.SketchUp(スケッチアップ)
それぞれの特徴を見ていきましょう。
①AutoCAD(オートキャド)
AutoCADは、Autodesk社が開発した汎用CADで、建築以外の分野でも広く使用されています。
高度な2D作図から3Dモデリング、ビジュアライゼーションなど機能が充実しているのが特徴です。
また、ドアや窓など8,000以上の要素を、建築オブジェクトとして利用できます。
効率的かつスピーディに設計図面を作成できるため、多くの設計事務所で使用されているのです。
②VectorWorks Architect(ベクターワークスアーキテクト)
VectorWorks Architectは、エーアンドエー株式会社が提供している建築設計向けのCADです。
建築設計や内装、設備、BIMなどに活用できる専門機能が充実しており、3Dデータを活用したインテリア設計やBIMに対応した空間計画もできます。
また、作成したモデルはワークシートに集計して活用できるため、ミスを減らし作業を効率化できるでしょう。
③ArchiCAD(アーキキャド)
ArchiCADは、Graphisoft社が開発した建築専用の3D CADです。
3Dモデリング機能はもちろん、「BIM」にも対応しています。
2D図面は3Dモデルから自動生成されるため、正確かつ整合性のある設計ができるのです。
また、作成したモデルはチームワーク機能を使用し、複数の設計者が同時に作業できます。
これにより、各チームや取引先とのコミュニケーションもスムーズになるでしょう。
④ARCHITREND ZERO(アーキトレンド ゼロ)
ARCHITREND ZEROは、福井コンピュータアーキテクト社が開発した建築設計用3D CADです。
日本の建築様式や規格に特化しており、和風建築の設計にも対応しています。
また、CAで作成したモデルをVRで体験可能な「ARCHITREND VR」や、内観・外観はもちろん、ウォークスルーしながら日当たりなどをシミュレーションできる「ARCHITREND リアルウォーカー」なども魅力です。
⑤SketchUp(スケッチアップ)
SketchUpは、米国Trimble社が開発・提供する建築設計用3D CADです。
無料版(SketchUp Free)と有料版(SketchUp Pro)があり、プロジェクトの規模や用途に応じて選択できます。
直感的操作で3Dモデルを作成できるため、3Dモデリングの初心者でも扱いやすいでしょう。
まとめ
本記事では、建築設計から建物完成までの手順を解説しました。
主な手順は、以下の通りです。
1.相談・ヒアリング
2.企画設計
3.基本設計
4.実施設計
5.確認申請
6.施工監理
7.引き渡し
8.メンテナンス
建築士は、クライアントや施工業者などと適宜連絡を取りながら丁寧に建物を建設しています。
建築士を目指している方は、本記事の内容を参考にして実際に働くイメージをつけてください。