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2024.12.05
建築設計のプロセスを分かりやすく解説!
「実際の設計業務がどのように進むのか気になる」という方もいるでしょう。
そこで、本記事では建築設計のプロセスを解説します。
建築設計の業種や建築設計する上で役立つ資格も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
建築設計の業種
建築設計とは、建物や設備設計に関係する業務を包括的に表した言葉です。
技術士や建築士、建築事務所の職員などが建築設計に携わる業種となっています。
建築設計の業種は、主に「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3種類です。
一つずつどのような内容なのかを見ていきましょう。
意匠設計
意匠設計は、建築物におけるデザインを決定する仕事です。
具体的には、クライアントから要望を聞き取り、理想的な間取りやデザインを考えます。
意匠設計者が作成した設計図を基に工事が進行するため、重要な役割を果たしているのです。
また、意匠設計者は構造設計者や設備設計者と連携して全体をまとめるリーダー役を担います。
そのため、スケジュール管理能力やリーダーシップも必要になるでしょう。
構造設計
構造設計は、「構造」の観点から建築物の設計に問題がないか確かめる仕事です。
具体的には、構造解析や部材検討、ディテールの検討、計算書の作成、申請業務、着工後の現場対応などが含まれます。
構造設計者は力学的なセンスやコミュニケーション能力を持ち、柔軟にスケジュール調整しながら効率よく仕事を進めなければなりません。
また、問題があった際に解決策を考案する「提案力」も求められます。
設備設計
設備設計は、建物として機能するために必要な電気・空調・音響・給排水設備などを適切に計画・設計する仕事です。
設備設計者は、省エネルギーや快適性を考慮しながら、建物のインフラ整備やデザインと機能の両立を図ります。
また、設備機器の選定時には、コストも考えなければなりません。
クライアントの希望と予算感を両立させるためにも、コスト管理力が求められます。
建築設計のプロセス
建築設計のプロセスは、以下の通りです。
1.相談・ヒアリング
2.企画設計
3.基本設計
4.実施設計
5.確認申請
6.施工監理
7.引き渡し
8.メンテナンス
それでは、一つずつ見ていきましょう。
相談・ヒアリング
相談・ヒアリングは、建築プロジェクトの最初の重要なステップです。
この段階では、クライアントの要望や予算、土地の状況、建物の用途などについて詳細な聞き取りを行います。
また、クライアントのライフスタイルや事業計画、将来的な展望なども含めて包括的な情報収集もします。
この過程で建築家とクライアントの信頼関係を構築し、プロジェクトの方向性を定めていくのです。
さらに、敷地調査や法規制の確認、周辺環境の調査なども行い、プロジェクトの実現可能性を検討します。
企画設計
企画設計では、ヒアリングで得た情報をもとに、建物の基本的なコンセプトや方向性を決定します。
敷地条件や法規制を考慮しながら、建物の規模、配置、概算予算などを検討し、複数の計画案を作成するのです。
この段階では、スケッチや図などを用いて、クライアントとイメージを共有しながら計画を具体化していきます。
また、概算工事費の算出も行い、予算との整合性を確認することも重要です。
基本設計
基本設計では、企画設計で決定したコンセプトに基づき、建物の具体的な形を決めていきます。
平面図や3Dモデルを利用し、建物の構造形式や設備システムの概要を決定していくのです。
この段階では、より詳細な法規チェックを行い、確認申請に向けた準備も始めます。
また、同時に使用する主要な材料や設備機器の選定、概算工事費の見直しなどもします。
実施設計
実施設計は、基本設計を基に、実際の建設工事に必要な詳細な図面を作成する段階です。
構造設計や設備設計と密接に連携しながら、建物のあらゆる部分について具体的な寸法や仕様を決定します。
施工者が混乱なく工事を進められるよう、細部にわたり検討し、詳細図や展開図、建具表などの図面を作成するのです。
小さな住宅規模でも、100枚前後の詳細な図面を用意し、丁寧に準備していきます。
また、積算を行い、より正確な工事費を算出するのも重要です。
確認申請
確認申請は、設計した建物が建築基準法などの法令に適合していることを証明する重要な行政手続きです。
申請に必要な図面や書類を作成し、建築主事または指定確認検査機関に提出します。
この過程では、構造計算書や設備設計図、各種計算書など、多岐にわたる書類の準備が必要です。
また、審査機関からの指摘事項に対応し、必要に応じて設計内容の修正も行います。
施工監理
施工監理では、設計図書通りに工事が進められているかを確認し、必要な指示や監督を行います。
定期的に現場を訪れ、工事進捗状況の確認や施工者との打ち合わせ、工事監理報告書の作成などをするのです。
また、工事中に生じる様々な問題に対して、設計者としての立場から適切な判断と指示を行い、建物の品質確保に努めます。
引き渡し
引き渡しは、工事が完了し、建物を建築主に引き渡す重要な段階です。
完成検査を実施し、設計図書通りに工事が完了していることを確認します。
また、建築設備の試運転や検査、各種検査済証の取得なども、この段階で行うのです。
そして、建築主に対し、建物の使用方法や維持管理に関する説明を行い、必要書類や取扱説明書なども引き渡します。
メンテナンス
メンテナンスは、建物の引き渡し後、長期にわたり建物の性能と価値を維持するための重要な段階です。
定期的な点検や補修、改修計画の立案など、建物の維持管理に関する様々なサポートをします。
また、使用状況の変化や劣化状況に応じて、適切な改修提案や設備更新の計画を立案するのです。
さらに、省エネルギー対策や機能向上のための提案なども行い、建物の長寿命化をサポートします。
建築設計する際に役立つ資格
最後に、建築設計する際に役立つ「技術士資格」と「建築士資格」を解説します。
技術士
技術士は、科学技術に関する高度な応用能力を備えた技術者に与えられる国家資格で、建築士では扱えない鉄道や送電線なども扱えます。
技術士の分野は幅広く、建設部門の他にも電気や情報工学など21種類あるのが特徴です。
技術士資格は、建築技術者としての高い能力を証明するもので、キャリアアップや独立開業、海外での活動に役立つでしょう。
建築士
建築士には、「木造建築士」「二級建築士」「一級建築士」の3種類があり、それぞれ取り扱いができる建築物が違います。
どの資格も建築設計士の仕事ではありますが、自分の業務や将来の目標に合った資格を目指してください。
木造建築士
3つの建築士の中で、扱える建築物の範囲が一番狭いのが木造建築士です。
無資格から木造建築士を取得して、取り扱えるようになるのは延床面積100㎡以上300㎡までの2階建てまでの木造建築となっています。
木造戸建住宅のみを受注したり、古民家などの再生リノベーションに特化した職場で働いたりする場合は、木造建築士の資格を活かせるでしょう。
二級建築士
国家資格の二級建築士を取得していると、建築物の設計や工事監理などを担当できます。
一級建築士と比較して、設計できる建物の規模と構造に制限がありますが、二級建築士も建築業界で大変優遇される資格です。
また、二級建築士として4年の実務経験があれば、一級建築士の受験資格が得られるので、建築士としてキャリアアップを目指す場合は、二級建築士資格を取得することをおすすめします。
一級建築士
一級建築士は、高層ビルから住宅まで物件規模を問わず設計を担当できます。
施工管理技士など、他の国家資格と比べ、非常に難易度の高い資格で、設計だけでなく施工やデベロッパーなど、幅広い分野で重宝されます。
一級建築士の資格取得は建築系の学校を卒業すれば、実務経験がなくても受験可能です。
合格後に大学卒業者は2年、専門学校卒業者は4年の実務経験を積んだ後に、一級建築士として登録完了し一級建築士を名乗ることができます。
建築系の学校を卒業していない場合は、7年間の実務経験後に二級建築士になれば受験資格を得られ、4年の実務経験後に一級建築士の登録が可能です。
構造設計一級建築士
構造設計一級建築士は、大規模な建築物を設計する際に必要な資格です。
大規模な建築物というのは、鉄筋コンクリート造(RC造)で高さ20m超えの建造物や、木造で高さ13mもしくは軒の高さが9m超えの建築物、鉄骨造で4階建て以上の建築物などが当てはまります。
構造設計一級建築士になるための条件は、以下の通りです。
・一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事
・国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が実施する講習の課程を修了する
一級建築士は最短25歳でなれますが、そこから5年の構造設計の実務経験が求められるため、構造設計一級建築士になれるのは最短で30歳ということになります。
設備設計一級建築士
設備設計一級建築士も、構造設計一級建築士と同様に、大規模な建築物を設計する際に必要な資格です。
設備設計一級建築士が設計できるのは、3階建て以上かつ床面積が合計5,000㎡を超える建築物となります。
設備設計一級建築士になるための条件は、以下の通りです。
・一級建築士として5年以上設備設計の業務に従事
・国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が実施する講習の課程を修了する
設備設計一級建築士資格も、最短30歳で取得できます。
まとめ
本記事では、建築設計のプロセスを分かりやすく解説しました。
建築設計の主なプロセスは、「相談・ヒアリング」「企画設計」「基本設計」「実施設計」「確認申請」「施工監理」「引き渡し」「メンテナンス」です。
「技術士資格」と「建築士資格」を持っていると、建築設計する際に役立ちます。
建築設計に携わりたい方は、積極的に「技術士資格」と「建築士資格」を取得しましょう。