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2024.12.05
設計士と建築士の違いは?年収や仕事内容、資格について徹底解説
設計士と建築士は、どちらも建築に関係する職種ですが、それぞれ特徴が異なります。
そこで本記事では、設計士と建築士の違いを解説します。
年収や仕事内容、資格についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
設計士と建築士の違い
まずは、設計士と建築士の違いを解説します。
どちらも似たような業務を担当していますが、その内容には明確な差があるのです。
設計士
設計士は、主に建築物の設計に特化した専門家です。
明確な定義はなく、建築士資格を持っていなくても「設計士」を名乗ることができます。
また、建築分野だけでなく、機械の設計や土木分野の設計をする人も、設計士と呼ばれるので、使い分けに注意しましょう。
建築士
建築士は、国家資格を持つ専門家です。
一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、建築物の設計や工事監理をする権限を持ちます。
建築士は、安全性や法令順守に重点を置き、実務的な観点から建築プロジェクトに携わるのが特徴です。
また、設計だけでなく、施工管理や建築確認申請なども担当します。
木造建築士
3つの建築士の中で、扱える建築物の範囲が一番狭いのが木造建築士です。
無資格から木造建築士を取得して、取り扱えるようになるのは延床面積100㎡以上300㎡までの2階建てまでの木造建築となっています。
木造戸建住宅のみを受注したり、古民家などの再生リノベーションに特化した職場で働く場合は、木造建築士の資格を活かせるでしょう。
二級建築士
国家資格の二級建築士を取得していると、建築物の設計や工事監理などを担当できます。
一級建築士と比較して、設計できる建物の規模と構造に制限がありますが、二級建築士も建築業界で大変優遇される資格です。
また、二級建築士として4年の実務経験があれば、一級建築士の受験資格が得られるので、建築士としてキャリアアップを目指す場合は、二級建築士資格を取得することをおすすめします。
一級建築士
一級建築士は、高層ビルから住宅まで物件規模を問わず設計を担当できます。
施工管理技士など、他の国家資格と比べ、非常に難易度の高い資格で、設計だけでなく施工やデベロッパーなど、幅広い分野で重宝されます。
一級建築士の資格取得は建築系の学校を卒業すれば、実務経験がなくても受験可能です。
合格後に大学卒業者は2年、専門学校卒業者は4年の実務経験を積んだ後に、一級建築士として登録完了し一級建築士を名乗ることができます。
建築系の学校を卒業していない場合は、7年間の実務経験後に二級建築士になれば受験資格を得られ、4年の実務経験後に一級建築士の登録が可能です。
設計士と建築士の年収の違い
ここからは、設計士と建築士の年収の違いを解説します。
設計士の年収
様々な求人サイトに掲載している年収例を見ると、設計士の年収は約350万〜450万円です。
もちろん、仕事内容や会社の規模により多少年収は前後します。
しかし、建築士と異なり資格を必要としないため、建築士より年収は低いのが一般的です。
将来的に建築士として働きたい方は、まずは設計士として就職し、経験を積んでから建築士資格の取得に挑戦するのも良いでしょう。
建築士の年収
建築士の年収は、木造建築士・二級建築士・一級建築士で異なります。
資格別の平均年収を見ていきましょう。
木造建築士
一般的に、木造建築士の平均年収は約250万から350万円です。
木造建築士の年収は、一級建築士や二級建築士と比べて低い傾向にあります。
なぜなら、3つの建築士の中で、扱える建築物の範囲が一番狭いからです。
しかし、近年では古民家リノベーションを専門とする設計事務所など、木造建築のスペシャリストとして活躍する人々が増えています。
古民家の再生には一般住宅にはない高度な技術が求められ、その結果、高額な受注が見込めるケースもあるのです。
ハウスメーカーや工務店だけでなく、リノベーション企業への就職も視野に入れ、自身のスキルを活かすことで、さらなる収入アップを期待できるでしょう。
二級建築士
続いて、二級建築士の平均年収は約350万から500万円です。
二級建築士が設計できる建物は3階建てまでで、木造であれば延べ床面積1000㎡以下、鉄骨造などの場合は100㎡以下と制限があります。
それでも二級建築士はほぼ全ての個人住宅を設計できるため、ハウスメーカーや工務店での業務において問題はありません。
さらに、役職が付きマネジメント能力が評価されれば、上記の年収を超える昇給も期待できます。
一級建築士資格の取得には時間と労力がかかるため、二級建築士としての収入で十分と考える人も少なくありません。
自身の目指す仕事や年収によって二級建築士をキャリアの通過点とするか、最終目標とするかは個人の選択次第です。
一級建築士
「平成29年賃金構造基本統計調査」によると、一級建築士の平均年収は700万円です。
一級建築士になれば、建物の規模や構造に関係なく、全ての建築物を扱えるため、より大規模なプロジェクトに関わる機会も増えるので収入も上がります。
また、昇格基準に一級建築士の取得を設定している企業もあり、収入に直結する資格と言っても過言ではありません。
転職の際も一級建築士は求人数が多く、より好条件の企業を選択できる可能性が高まります。
参考:厚生労働省「平成29年賃金構造基本統計調査」
現金給与額×12か月分+年間賞与その他特別給与額で算出
設計士と建築士の仕事内容の違い
続いて、設計士と建築士の仕事内容の違いを見ていきましょう。
設計士は、建築分野だけでなく、機械の設計や土木分野の設計をする人も、設計士と名乗ることが可能です。
しかし、今回解説する「設計士」については、小規模の木造建築物の設計や建築士の補助業務に携わる人のことを指しています。
設計士の仕事内容
設計士の主な仕事内容は、以下の通りです。
・小規模の木造建築物の設計
・建築士の業務補助
詳しく見ていきましょう。
小規模の木造建築物の設計
建築士の資格がない設計士でも、木造建築物で延べ面積が100㎡以下の小規模な建物であれば取り扱い可能です。
ただし、建物を設計する際は、建築基準法や建物に関わる様々な法律や条例を遵守しなければなりません。
そのため、一定の専門知識や実務経験のある設計士が設計を担当するケースが増えています。
建築士の業務補助
建築士の業務補助も、設計士の仕事の一つです。
建築士の指導のもと、図面作成やCADオペレーション、現場での写真撮影や記録作成、各種書類の作成など、実務的なサポート業務を担当します。
また、建築確認申請に必要な資料の準備や、施主との打ち合わせ資料の作成なども重要な役割です。
さらに、建材や設備機器のカタログ収集や情報整理、積算業務の補助なども行い、建築プロジェクトの円滑な進行を支えています。
建築士の仕事内容
続いて、建築士の主な仕事内容は以下の通りです。
・設計図の作成
・行政手続き
・工事監理
詳しく見ていきましょう。
設計図の作成
設計図の作成では、まず施主との打ち合わせを通じて要望を具体化し、敷地調査や法規制の確認をした上で基本設計に着手します。
建築する建物のイメージが固まったら、図面作成をします。
図面は、意匠設計、構造設計、設備設計の3種類があり、それぞれの概要は以下の通りです。
意匠設計
意匠設計は、建築物におけるデザインを決定する仕事です。
具体的には、クライアントから要望を聞き取り、理想的な間取りやデザインを考えます。
意匠設計者が作成した設計図を基に工事が進行するため、重要な役割を果たしているのです。
また、意匠設計者は構造設計者や設備設計者と連携して全体をまとめるリーダー役を担います。
そのため、スケジュール管理能力やリーダーシップも必要になるでしょう。
構造設計
構造設計は、「構造」の観点から建築物の設計に問題がないか確かめる仕事です。
具体的には、構造解析や部材検討、ディテールの検討、計算書の作成、申請業務、着工後の現場対応などが含まれます。
構造設計者は力学的なセンスやコミュニケーション能力を持ち、柔軟にスケジュール調整しながら効率よく仕事を進めなければなりません。
また、問題があった際に解決策を考案する「提案力」も求められます。
設備設計
設備設計は、建物として機能するために必要な電気・空調・音響・給排水設備などを適切に計画・設計する仕事です。
設備設計者は、省エネルギーや快適性を考慮しながら、建物のインフラ整備やデザインと機能の両立を図ります。
また、設備機器の選定時には、コストも考えなければなりません。
クライアントの希望と予算感を両立させるためにも、コスト管理力が求められます。
行政手続き
行政手続きでは、建築基準法や都市計画法などの法令に基づき、必要な申請手続きをします。
主な手続きとして建築確認申請があり、設計した建物が法令に適合していることを証明しなければいけません。
申請の際は、確認申請図書の作成や構造計算書の準備、設備図面の取りまとめなど、膨大な書類作成が必要です。
また、地域によっては景観審査や日影審査なども必要となり、行政担当者との協議や指摘事項への対応も重要な業務となります。
工事監理
工事監理では、設計図書通りに工事が進められているかを確認する監理者としての役割を担います。
定期的に現場に足を運び、施工状況の確認、工事写真の撮影、施工者への指示や協議をするのです。
また、工事の進捗に合わせて施工図のチェックや材料の承認、施工計画の確認なども行います。
さらに、工事完了時には完了検査の立会いを行い、建物が設計図書通りに完成していることを確認するのが仕事です。
設計士・建築士になるには
設計士・建築士になる方法をそれぞれ解説します。
設計士の場合
設計士は特に資格が必要ないため、設計士を募集している企業に就職すれば、設計士を名乗ることができます。
建築系の学歴がなくても、設計士の実務経験を積むことで二級建築士の受験資格を得ることが可能です。
建築士の場合
建築士になるには、必ず建築士の資格を取得しなければいけません。
資格の取得方法は、木造建築士・二級建築士・一級建築士でそれぞれ異なります。
例えば、一級建築士の資格取得は建築系の学校を卒業すれば、実務経験がなくても受験可能です。
合格後に大学卒業者は2年、専門学校卒業者は4年の実務経験を積んだ後に、一級建築士として登録完了し一級建築士を名乗ることができます。
建築系の学校を卒業していない場合は、7年間の実務経験後に二級建築士になれば受験資格を得られ、4年の実務経験後に一級建築士の登録が可能です。
設計士・建築士に向いている人の特徴
計画性がある
計画性がある人は、設計士・建築士に向いています。
なぜなら、建物の設計から竣工まで計画性を持ち、スムーズに進めることが重要だからです。
建築設計は、工程や予算、規格、法令などを考慮しながら計画を実行しなければなりません。
品質を損なわずに建築プロジェクトを進めるためには、計画性の高さが求められます。
クリエイティブなことが好き
ものづくりなどクリエイティブなことが好きな人も、設計士・建築士に向いています。
元々クリエイティブなことに興味があれば、建築設計の仕事にやりがいと楽しさを感じられるでしょう。
設計者は常に創造者です。
建物の外観や内部デザインを決定し、美しさと機能性を両立させる役割を果たします。
困難に直面しても、それを打開できる創造性を持ち合わせている人は、設計士・建築士に向いているでしょう。
人とのコミュニケーションが得意
設計士・建築士の仕事は、自分一人で遂行できるものではありません。
クライアントや関係者と、適宜コミュニケーションを取りながら仕事を進めていくのが重要です。
考えた計画とクライアントの希望が異なった際は、自分の意見を押し通すのではなく、コミュニケーションを取り、両者が納得できる解決策を提案する力が求められます。
まとめ
本記事では、設計士と建築士の違いを年収や仕事内容、資格別に解説しました。
設計士は、主に建築物の設計に特化した専門家です。
明確な定義はなく、建築士資格を持っていなくても「建築士」を名乗ることができます。
一方、建築士は、国家資格を持つ専門家です。
一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、建築物の設計や工事監理をする権限を持ちます。
将来的に建築士として働きたい方は、まずは設計士として就職し、経験を積んでから建築士資格の取得に挑戦するのも良いでしょう。