建築業界のリアルな情報や就職・転職活動で役立つ情報を紹介します。
2024.11.03
建設業の求人は応募が来ない?人材不足の今知っておきたい建設業の求人職種
日本では多くの業界で人材不足が深刻化しています。
その中でも建設業は、特に減少傾向が顕著だと言われています。
建築業界で働いてみたいけど、「求人があっても人が集まらないのは何か問題があるのでは?」と不安に感じる方も少なくないでしょう。
本記事では、建設業界の労働環境の現状や、求人に応募が来ない理由について詳しく解説します。
さらに建設業で今求められている職種についても紹介しているので、建設業に興味を持ち就職・転職を考えている方は、是非、最後までお読みください。
建設業の労働環境の現状
建設業を目指す方に取って「建設労働者不足」「労働者の高齢化」は良く耳にする問題ではないでしょうか。
ここでは国土交通省のデータから建設業の現状を解説します。
(引用:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001610913.pdf)
建設業の就業者数
日本の建設業の就業者数はバブル崩壊以降、少子高齢化や若い世代の建設業離れが原因で長期的に減少傾向です。
国土交通省のデータによると、2022年時点で建設業労働者は約479万人で、ピークだった1997年の約685万人の7割程度にまで減少しました。
今後、老朽化するインフラの整備や再開発の需要に対して、労働力は大きく不足しており、外国人や女性の雇用なども含め、対策が急務となっています。
建設業就業者の年齢
建設業の就業者の平均年齢は年々上っていて、現在では50歳を超えています。
特に55歳以上の労働者が全体の3割で、29歳以下は1割という比率です。
高齢化が進む中で、現場での肉体労働が厳しくなる一方で、若い世代の育成やスキルの継承が難しくなっています。
こうした高齢化の影響で退職者は増え続け、逆に新規の就業者は減少しています。
今後の若年層の労働力確保は業界全体にとって大きな課題です。
建設業労働者の給与
2022年の建設業従事者の平均年収は約500万円程度と、他業種と比較して少ないわけではありません。
ただ給与体系が様々であったり、職場や役職などにより大きく変わるため「建設業は稼げない」と思っている人も多いようです。
近年は政府からも「構造的な賃上げ」に取り組むよう発信されていますが、個人的にも資格取得や転職で収入アップを目指していきましょう。
建設業の労働時間
建設業で働く人の労働時間は、他の業種と比較すると長い傾向にあるのが現状です。
国土交通省のデータによると、建設業の年間総実労働時間は全産業と比較して約90時間長くなっています。
過去20年で全産業が約90時間減少したのに対し、建設業はわずか50時間の減少にとどまりました。
また、他の産業では一般的である週休2日制も、建設業では十分に整備されていないのが現状です。
しかし2024年4月から、建設業では法令適用が猶予されていた時間外労働の上限規制が厳格になりました。
残業時間が月45時間、年間360時間までという法令が守られれば、建設業の働き方改革も大きく前進すると期待されています。
建設業の求人に応募が来ない理由
前述の通り、建設業は慢性的な人材不足が続いています。
特に若年層の応募が少なく、多くの企業が求人を出しても人材を確保できないという現状があります。
一方で、建設業は日本経済を支える重要な産業の一つであり、自分の手で地図に残る建物を作り出すやりがいのある仕事です。
建設に興味はあるけれど、一生の職業として選択するにはためらうという若い世代も多いようです。
ここでは、建設業の求人に応募が来ない主な理由と、課題に対して業界がどのように取り組んでいるのかを解説します。
キツイ・キタナイ・キケンのイメージは根強い
建設業に対する「キツイ」「キタナイ」「キケン」という、いわゆる「3K」のイメージは依然として根強く残っています。
体力的に厳しく、作業で汚れやすく、危険が伴う職場環境という印象が強いので、特に若い人材の応募が来ないケースが多いようです。
一年中屋外で働く現場作業は体力を要し、天候に左右されることが多い仕事です。
体力に自信がない人、快適な職場環境を求める人にとっては厳しい職場と言えます。
また、建築現場事故のニュースがメディアで取り上げられることも多く、建設現場の危険性が強調されることも、応募者が来ない原因でしょう。
しかし実際には、常に安全管理規制の見直しを行ったり、技術革新によって作業の安全性を向上させる企業が増えてきています。
オフィスワークよりも厳しい労働条件になることは事実ですが、イメージにとらわれず企業や現場の現状を知ることが重要です。
給与・福利厚生など待遇が充実していない
建設業界は給与や福利厚生が十分に充実していないと感じる人が多いことも、求人が来ない原因のひとつです。
1990年代のバブル崩壊以降、建設生産労働者の給与は減少傾向でしたが、10年ほど前からは人員不足もあり賃上げされてきています。
また建設業界では社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への加入率が低く、安心して長期に渡り仕事をするには、不安定な労働環境でした。
しかし近年では建設業許可の要件として、社会保険加入が義務付けられたり、公共工事の落札で賃上げ表明をした企業が有利になるなど、業界全体で改善に取り組んでいます。
休日が少ない・勤務時間が長い
建設業界では、勤務時間が長く、休日が少ないことも求人応募が少ない理由になっています。
現場労働者の多くは、給与を日給換算して月1回支給を受ける「日給月給」と言われる給与体系なので、休日を十分に取りにくいのが現状です。
出勤日数が多ければ多いほど給料が増えるので、働く側も日数を減らすのには消極的になるので、今後は月給制で休日が確定している勤務体系への移行が期待されています。
また厳しい工期設定も残業や休日出勤が多くなる要因です。
建築現場はコストカットのために工期を短く設定する傾向があり、多くの下請け企業や職人に無理な勤務を強いらないような仕組み作りが課題です。
ただし、最近では働き方改革の影響で、建設業界でも労働時間の見直しを進めたり、AIの活用により、効率的に業務を進める企業も登場しています。
まだまだ改善の余地はありますが、求人広告に働き方改革への取り組みやワークバランスをアピールしている求人は、積極的に応募してみる価値があるでしょう。
建設業の求人・どんな職種を募集してる?
建設業の求人は幅広い職種があります。
それぞれに必要なスキルや資格が違っているので、自分の経験やキャリアプランを考えて応募することが重要です。
ここでは特に建設業界で需要の高い職種と、求められるスキルを紹介しています。
施工管理者
施工管理の仕事は建設現場の進捗管理、品質管理、安全管理、コスト管理を行う業務です。プロジェクト全体をスムーズに進行させるための中心的な役割を担います。
現場の作業員をまとめる現場監督との違いは、工事予算の管理など書類作成など事務的作業も発生する点です。
発注者から職人まで、現場に携わる多くの人員をまとめるコミュニケーション能力、プロジェクトを完成に導くリーダーシップが求められます。
トラブルの対応など精神的にも体力的にも厳しい仕事ではありますが、やりがいも大きくゼネコンなどで就業すれば高収入も望める職種です。
求められる資格:施工管理技士 建築施工管理技士(一級・二級)など
建築設計士
建築設計士の主な業務は設計図面の作成です。
設計には、建物の外観を決める意匠設計、骨組みを設計する構造設計、電気や水道、空調設備などを設置するための設備設計があります。
また設計図どおりに施工が行われているかを、建築主の代理という立場で確認する現場監理業務を行う場合もあります。
設計事務所やハウスメーカー、建設会社の設計部など様々な企業で活躍できる業種です。
無資格でも設計アシスタントとしての求人があるので、働きながらキャリアアップを目指す人にも最適です。
資格:一級建築士 二級建築士 CAD・BIM関連資格など
土木技術者
土木工事は建築以外のインフラ、道路、橋、トンネル、ダム、上下水道など工事を指します。
土木技術者の業務は土木工事計画や設計、施工管理です。
土木技術者は建設や整備だけではなく、災害が起きた際の復旧に携わる、社会貢献度が高く、やりがいのある仕事です。
現場仕事以外にも発注者との打ち合わせ、申請書類の作成などの事務作業もあります。
下請会社の作業員が多く働く現場なので、様々な立場や属性の人員をまとめ、間に入って調整を行う役割も担っています。
資格:土木施工管理技士 土木学会認定土木技術者など
重機オペレーター
重機オペレーターは、建設現場や土木工事の現場で、クレーン車、ブルドーザー、油圧ショベルなど様々な大型機械を操作して作業を行う専門職です。
掘削や運搬、整地、解体など多種多様な現場で必ず必要となる業務であり、経験のある人材は常に高い需要があります。
取り扱う重機によって必要な資格が違うので、複数保有していると就職や転職に非常に有利です。
資格:大型・小型自動車特殊免許 車両系建設機械(整地・運搬・積込み・掘削用)運転技能講習 高所作業車運転技能講習 など
設備技術者
設備技術者は、建物や施設に不可欠な電気、空調、給排水設備の設計、施工、維持管理を担当する専門職です。
これらの設備は、建物の快適さや安全性を確保するために欠かせない要素なので、求人数も多く、自分に合った条件を見つけられる可能性も高いでしょう。
資格:電気工事士(第一種・第二種)電気主任技術者(第一種・第二種・第三種)管工事施工管理技士(一級・二級)など
まとめ
建設業界は近年、深刻な人手不足に直面しています。
労働環境の改善が進む一方で、依然として長時間労働や重労働のイメージが根強く、求人に対しても応募が来ないのが現状です。
建設の仕事は労働環境や待遇面で、将来性を期待できないと感じる若い世代も少なくありません。
しかし、建設業は地図に残る大型プロジェクトに携わることができ、資格や実績があれば収入アップのチャンスがある職業です。
施工管理、設計、重機オペレーター、現場作業員など幅広い職種で、求人数も増えています。
今後、建設業界で働くためには、業界の変化や求人内容をよく理解し、自身に合ったキャリアを選ぶことが重要です。