建築業界のリアルな情報や就職・転職活動で役立つ情報を紹介します。

お役立ち情報

2024.10.09

2025年建築設計職はどうなる?法改正や人材不足など業界動向を解説

サムネイル

2024年は度重なる自然災害による建築物の損壊と再建、アフターコロナ時代の住宅やオフィスに対するニーズの多様化など、建築設計業界は大きな転換期を迎えました。

建築設計職を志す方にとっても、大阪万博における若手建築家の活躍が期待されたり、建築現場でも働き方改革が行われたりと、気になる業界動向が数多くあったのではないでしょうか。

本記事では、2025年以降の建築設計業界の動向や、求められる人材について詳しく解説しています。

建築士の資格取得を検討されている方や、建築設計分野でのキャリアアップを目指す方はぜひ最後までお読みください。

 

2025年に注目される建築業界のトピックス

 

常に動き続ける建築業界ですが、2025年も大きな変化が予想されています。

業界全体の動向を理解することは、日々働いている中で起こる身近な問題を解決するヒントにもなるでしょう。

今後の建築設計業界の動向を理解するために、必ず押さえておきたい4つのトピックスを紹介します。

 

 

2025年4月に建築基準法が改正

 

2025年4月に建築基準法が改正され、住宅・非住宅を問わず、原則として全ての新築建物に対して省エネ適合が義務付けられます。

これにより、従来は300㎡以上の建築物のみが対象だった省エネ適合義務が、個人住宅にも適用されることになりました。

今後は建築確認手続きの中で、省エネ基準への適合性が審査され、暖冷房、換気、照明、給湯などの設備の省エネ性能向上や、外壁・窓の断熱性の改善が求められます。

この改正は、設計から建築確認、施工に至るまで、建築設計のすべての業務に影響を与えるものです。

さらに2030年には省エネ基準はさらに厳しくなり、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)レベルまで引き上げられます。

建築設計業に関わる上では省エネ化への情報収集を、継続的に行う必要がありそうです。

 

人材不足

 

日本全体で人材不足が問題となっていますが、建築設計業界も例外ではありません。

建築士として登録されている50歳以上の割合が半数を超えると言われており、若い世代の合格者の減少も長年課題とされてきました。

この背景を踏まえ、令和2年の建築士試験の受験資格改正により、実務経験が不要となり、卒業後すぐに受験が可能となりました。

これにより、若手建築士の増加と活躍が期待されています。

一方で、建設・施工現場における人材不足も深刻です。

令和4年度の建設業の入職者数は約22万人と、10年前から約60%減少しています。

また新卒者の離職率も高く、大卒者の約3割、高卒者では約4割から5割が3年目までに離職する状況です。

製造業と比較しても離職率は大卒で約10%、高卒で約15%高く、若年層の確保が建設業界全体の課題となっています。

(引用:国土交通省・建設業技術者制度に関する現状)

2025年は更なる人材確保、人材育成が課題となりそうです。

 

AIの導入

 

建築設計業界では、安全性向上やコスト削減、人材不足の対策としても、AIの導入が期待されています。

今まではAI自体の精度が充分でなく、使用するためには知識が必要だったので、あくまで補助的な役割に留まっていましたが、今後はあらゆる場面で活用されるでしょう。

環境シミュレーションや構造解析、構造計算など、多くの分野でAIの活用が進んでおり、将来的には、生成AIがベストな設計案を作成する日が来るかもしれません。

建築途中や既存建物の点検においても、AIは大きな役割を果たすと考えられています。

例えば高所作業や熟練が必要な目視検査に代わり、AIによる検査が安全で効率的な手段となるでしょう。

 

BIMの活用

 

BIM(Building Information Modeling)は、コンピューター上に3D立体モデルを作成する設計手法で、CADとは異なり、3Dパーツに情報を付加して設計を進めることが特徴です。BIMでは、体積、予算、施工期間などを設計段階でシミュレーションできるため、設計の品質やスピードが大幅に向上します。

最近では、一部の国でプロジェクトにおけるBIMの使用が義務付けられるケースも増えています。

日本の建築設計現場でも、BIMの活用により設計の効率化と精度の向上が期待されています。

ただし現在のBIM普及率はまだまだ低く、導入コストを抑えることや操作できる人材の育成が大きな課題です。

 

建築設計業界の企業別動向と課題

 

建築設計の業務は幅広く、勤務する業態や部署により動向は変わります。

ここでは建築設計業界の中でも代表的な企業「ゼネコン」「住宅メーカー」「設計事務所」のそれぞれの現状や課題を解説します。

 

 

ゼネコン

 

ゼネコン(総合建設企業)はタワーマンションや商業施設からスタジアムまで大型建築物を取り扱う企業です。

2022年の東京オリンピックが終わり都心の大型建築需要は一旦落ち着いたと言えます。

またコロナ禍を経てリモートワークが普及しオフィスを持たない企業も増えました。

外国ではフル出勤に戻る傾向も見られるので、今後オフィスと商業施設、マンションを兼ね備えた複合大型建築の需要がどこまで伸びるかが、注目されています。

他には老朽化した建築物の整備維持がゼネコンの大きな役割となると予想されます

大規模建築の現場では人材不足は、非常に深刻な問題です。

働き方改革や待遇の改善で人材の確保と、労働者年齢の若年化は急務と言えます。

 

住宅メーカー

 

住宅の新規着工件数は1898年のバブル期をピークとして、35年間で半減しています。

日本は少子高齢化が進み、今後も飛躍的に新築件数が増加することはないでしょう。

一方でバリアフリー住宅や耐震性能、省エネ性能の高い住宅へのニーズは高まる傾向です。

2025年以降は円高に転じる傾向にあり、ここ数年続いた建築資材の高騰も一息つくのではとの期待もあります。

また人口増加が見込まれるアジア諸国向けの事業拡大は、ますます加速するでしょう。

実際に大和ハウス、積水ハウス、一条工務店など代表的な住宅メーカーも海外での売上げが増加傾向です。

住宅資材や設備を企画・設計・製造まで海外工場で完成させ、国内では設置するだけの状態にする事例も多くなっています。

海外法人の設立や、現地企業との提携が進むことを考えると、英語など海外勤務が可能なスキルは就職に有利になるでしょう。

 

設計事務所

 

設計事務所は建築事務所は建築士が主体となって立ち上げる会社です。

住宅メーカーや工務店に比べ、デザイン性を重視した設計を提供できることが特徴です。

大規模な「組織系設計事務所」は意匠、構造、設備の全てを手がけますが、一般的には少数先鋭で設計を行い、工務店などが施工を担当します。

建築主に代わって工事が発注通りに進んでいるか、現場管理を行うのも設計事務所の役割です。

建築設計業界は、もともと景気に左右されやすく、小規模な設計事務所は経営を維持する事が困難になりがちなのが課題と言えます。

近年では新型コロナウイルスの影響で、業務が激減した事務所もあったのではないでしょうか。

移り変わる社会情勢の中で設計事務所が生き残るためには、建築士のブランド力やデザイン性が最強の武器になります。

地域木材の利用や古民家リノベーションなど、独自性をアピールする事が重要です。

「他にはない個性的な家づくりをしたい」という建築主とのマッチングには、SNSを活用した積極的な情報発信が不可欠です。

また大企業に比べ、労働条件や福利厚生が不利な面があるので、人材育成に注力することが必要です。

 

建築設計業界が2025年求める人材とは

 

これから建築設計業界が求めるのは、どのような人材でしょうか。

建築設計の知識や技術に加えて、資格取得、専門知識の習得、そして人間としてのスキルの向上など、継続的な学習と自己成長が不可欠になってきています。

2025年以降の建築設計業界で活躍するために、どのような能力を習得しておくべきか、求められる人材像を理解しておきましょう。

 

 

資格保持者としてのスキル

 

建築設計において、必須となる資格はありません。

しかし建築士資格は顧客や社内外の関係者に対する信頼の証となるため、取得するよう計画をおすすめします。

特に一級建築士資格があれば、取り扱える建物の制限がないため、より多様な業務に対応可能です。

二級建築士や木造建築士に比べて難易度の高い資格ですが、挑戦する価値は高いと言えます。

さらに構造設計士、設備設計士などの専門資格は、どの企業でも重宝されるでしょう。

加えて、国家資格ではないものの、CADやBIMのスキルを証明する資格を持っていれば、即戦力として就職に有利です。

 

幅広い設計スキル

 

今後の建築設計士には、より幅広く、かつ専門性の高い設計スキルが求められるでしょう。単に建築主の希望通りに設計するだけでなく、時代に即した提案ができるかどうかが強みとなります。

また、法令や補助金などの行政サービスに関する情報を、常に最新の状態に保つことも重要です。

ここでは、これから需要が高まると予想される設計スキルを、いくつか紹介します。

 

サステナビリティ設計

 

2009年「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されました。

「100年後も住み続けられる家」を目標として劣化対策、維持管理、可変性などの基準を設け、基準を満たした場合、住宅ローン減税などの優遇措置が受けられます。

 

災害に強い設計

 

地震や土砂災害などから命と財産を守る建築物は、今後ますます需要が高まるでしょう。

災害の種類やその危険性は地域により大きく変わります。

建築立地や構造に応じた適切な災害対策が不可欠です。

 

バリアフリー設計

 

少子高齢化にともない、高齢者同士や単身での生活に不安を感じる人が増えています。

体が不自由になっても安全に自分らしく過ごせる住宅や公共施設のニーズは増加するでしょう。

 

ヒューマンスキル

 

建築設計職は設計図を書いて工事をするだけではありません。

建築主の理想を形にして、竣工・引き渡しまでに関わる全ての人々と協力し、プロジェクトを成功させるまでが仕事です。

所属も雇用形態も多種多様な人員をまとめるリーダーシップや、トラブルが起きた時に迅速かつ誠実に対応する問題解決能力は、常に求められています。

どんなにDX化が進んでも、コミュニケーション能力は建築設計の仕事で最も重要なスキルと言えるでしょう。

 

まとめ

 

建築設計業界全体の動向、業態ごとの現状と課題を解説しました。

建築設計は災害や偽装事件がある度に規制が厳しくなり、新たな法令ができます。

常に新しい対応を求められる難しい職業と言えます。

またAI化が進む中で「不要になっていく業務もあるのではないか」と心配される方もいるかもしれません。

しかし業界全体の人材不足は深刻で、特に知識や経験、資格を持った人材が重宝され活躍できるのが建築設計業界です。

「物づくりが好き」という建築設計の基本理念は大切に、未来のニーズに合わせたスキルを身に付けることが重要になるでしょう。

この記事をシェア

tag