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2024.10.09

建築設計の図面とは?提案から完成まで作成する図面の種類と作成スキル

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建築設計の図面は、建物を作るための設計書であり、設計者と施工者間の意思疎通を円滑にするための重要なツールです。 

この記事では、建築設計の各段階で作成される図面の種類や、それぞれの図面を作成するために必要なスキルについて詳しく解説します。

提案段階から完成までの流れを追いながら、建築図面の役割や重要性についてご紹介します。

建築設計に興味のある方や、図面についてもっと知りたい方はぜひご覧ください。

 

建築設計における図面とは?設計図と施工図の違い

 

建築設計における図面というと、多くの人が建築士が描くデザイン画や間取り図を思い浮かべるかもしれません。

しかし実際には建築に関連する図面にはさまざまな種類があり、それぞれの目的や役割によって分類されています。

まず理解しておきたいのが、建築士が作成する「設計図」と、施工者が作成する「施工図」という2つの主要な図面の違いです。

設計図は、建築士がクライアントの要望を反映して作成するもので、建物の全体像や基本的な構造、デザインを示します。

一方、施工図は設計図をもとに、実際の工事に必要とされる具体的な寸法や詳細な仕様を描き起こすための図面です。

 

設計士が作成する設計図

 

設計図は、建築基準法やその他の法令に適合するように作成され、建物の計画や設計に関する重要な役割を果たします。

主な役割としては、クライアントへのプレゼンテーション、施工業者との契約、自治体への建築確認申請、工事費用の見積もりなどが挙げられます。

ここでは設計図を「意匠図」「構造図」「設備図」の3つに分けて解説します。

 

 

意匠図

 

意匠図は、建物の外観や内観などデザインに関する情報を表す図面です。

建物の「顔」ともいえる部分で、完成後の建物をイメージしやすいように、平面図や立面図、場合によってはパースと呼ばれる立体的な図面が用いられます。

平面図では、部屋の配置や広さ、建具の位置などが視覚的に理解できるように示されます。

 

構造図

 

構造図は、建物の構造部分に焦点を当てた図面です。

建物の強度や安全性を確保するための重要な設計情報が含まれており、地震や強風などの外力に対して耐えられるように構造計算が行われます。

また長期間に渡り安全に使用できるよう、耐久性を考慮した設計もこの図面に盛り込まれています。

 

設備図

 

設備図は、建物の電気、給排水、空調などの設備に関する情報を示す図面です。

例えば電気配線のルートやコンセントの配置、水道や排水管の位置などが詳細に描かれています。

これにより快適な生活環境を提供するだけでなく、安全性を確保するための設計も施されます。

さらに近年では省エネ設備の需要が高まっており、電力やガスの消費状況をモニターで管理したり、家電機器を自動制御するシステムが導入されるケースも多くなりました。

 

施工者が作成する施工図

 

施工図は実際に建物を建設する際に必要な図面です。

設計士が作成した設計図を基にして、施工者が具体的な施工に適した図面を作成します。

このように、別途施工図が作成される理由は、建築現場には元請業者から下請業者まで多くの異なる職種の人材が関わっており、情報の共有と作業ミス防止が重要だからです。

また、施工図には設計図に記載されていない詳細な施工情報が含まれます。

例えば、ドアの取り付け位置や使用する素材、正確な寸法などが詳しく書かれており、ドアが問題なく使えるようにするための具体的な指示が示されています。

施工者は、予算や工期、品質、安全性を考慮し、環境や近隣に配慮しながら工事を進める責任を負っています。

施工図は工事監理の際にも使用され、工事の進行状況を確認するための重要な役割を果たします。

 

 

仮設図

 

仮設図は、建築工事に伴い設置される仮設構造物についての図面です。

建物の本体を建てる際に必要な足場やクレーン、作業通路などの配置が示されており、安全かつ効率的に工事を進行する役割を果たしています。

 

【主な内容】

・足場の種類と配置

・クレーンの設置位置

・仮囲い(工事現場を囲む柵)の設置場所

・仮設通路、仮設電源、仮設水道などの配置

 

躯体図

 

躯体図は、建物の骨格部分である柱や梁、壁など、建物の強度や耐久性を支える構造体に関する図面です。

詳細な寸法や使用する材料が記載された図面なので、建物の構造設計に基づいた正確な施工を実現するために欠かせません。

躯体図は構造計算により作成され、建物の安全性を確保するために重要な役割を担っています。

 

【主な内容】

・柱や梁の配置と断面

・壁の厚さや種類

・基礎の形状と配筋

・鉄骨構造物の接合部詳細

 

仕上げ図

 

仕上げ図は、建物の内外装に関する仕上げ部分の情報を示した図面です。

この図面には建物の完成図が具体的に反映されており、使用する材料や施工方法が詳しく記されています。

仕上げ図の役割は、設計図に基づいた意匠を実現し、内外装資材や施工方法を決定することです。

これにより、建物の美観や快適性が向上します。

 

【主な内容】

・外壁の材料と色

・内装の壁や天井の仕上げ材

・床材の種類と貼り方

・窓やドアの種類と取付方法

 

建築設計図面に必要なスキル

 

ここまで説明したように建築設計図面には様々な種類があり、作成するためには専門的な知識やスキルが求められます。

ここでは建築設計図面を作成する上で必要なスキルを、「建築士資格」「CADオペレーション」「施工管理」の3つの側面から深堀りしていきます。

 

 

建築士資格

 

建築士資格は、建築設計図面を作成する上で非常に重要な資格です。

デザイン力だけではなく法律、構造計算など幅広い知識が求められ、国家資格の中でも難易度の高い資格と言えます。

それだけに建築士は、企業からも顧客からも信頼を得られる資格です。

ただし設計図を作成するために、必ずしも建築士資格が必要というわけではありません。

設計アシスタントが図面を作成し、建築士が確認・最終調整するケースもあります。

二級建築士、木造建築士はそれぞれ扱える建物の規模や構造に制限がありますが、一級建築士は制限なく全ての建築物を設計可能です。

将来のキャリアアップを考えると、幅広い業務に対応できる一級建築士に挑戦することをおすすめします。

 

CADオペレ―ション

 

CAD(Computer Aided Design)は、コンピュータを利用して図面を作成するためのソフトウェアで、現代の建築設計には欠かせません。

CADを使用すると手書きよりも正確で高精度な図面を効率的に作成でき、修正や変更も容易です。

設計図を描くスキルはもちろん、平面図、立面図、断面図など、さまざまな図面を正確に作成する能力が求められます。

また、3Dモデルを作成して建物を立体的に表現するスキルも重要です。

CADソフトウェアとしては、AutoCADやRevitなどが広く使用されており、これらを使いこなすスキルは即戦力となります。

設計図を自ら作成するだけでなく、建築士が手書きした図面をデジタル化する作業にも対応でき、就職や転職において有利なスキルとなるでしょう。

 

施工管理

 

施工管理は、設計図に基づいて実際に建物を建てる工程を計画・管理する仕事です。

現場経験を積むことで、より実用的な設計図を作成できるようになります。

施工管理では設計者の意図を正確に理解し、図面を読み解き、工事のスケジュールや手順を計画する能力が求められます。

さらに多くの職人や作業員が関わる現場では、コミュニケーション能力や柔軟な対応力が非常に重要です。

施工管理に役立つ資格としては「建築施工管理技士」があります。

この資格を取得すると、幅広い施工管理業務に対応できるでしょう。

また「電気工事施工管理技士」や「管工事施工管理技士」など、より専門的な分野に特化した資格を取得することで、さらなるキャリアアップが可能です。

 

建築設計図面のスキルを活かす働き方

 

設計図面作成のスキルは建築業界において最も重要な業務であり、多岐に渡るキャリアパスが広がっています。

ここでは建築設計図面スキルを活かす3つの代表的なキャリアパス、「ゼネコン(総合建設会社)」「ハウスメーカー」「設計事務所」について解説します。

それぞれの働き方には異なる魅力と課題があるため、自分の興味やスキル、将来のキャリアプランに合わせて選ぶことが大切です。

 

 

ゼネコン(総合建設会社)

 

ゼネコンは、ビルやマンション、公共施設などの大規模建築プロジェクトを手掛ける企業です。

社会インフラを支える重要な建築物も手掛け、設計から施工までの全工程を自社で行います。

設計部門だけでなく、設計図を基に工事費を見積もる「積算部門」や、工事計画や現場を管理する「施工管理部門」など多様な部署での勤務が可能です。

スタジアムや都市開発など大規模プロジェクトに携われるので、建築を志す人にとっては夢を実現できる企業と言えるでしょう。

 責任が重く、勤務時間が長くなることが多いですが、その分、業界内でも高収入が期待できる職場です。

 

ハウスメーカー

 

ハウスメーカーは戸建て住宅を中心に、住宅の設計・施工を行う会社です。

設計部門では住宅の設計図を作成し、顧客の要望を形にします。

規格品を使用するので比較的経験の浅いうちから、自分で1棟全てを設計できます。

一方で「自分のオリジナリティが充分に発揮できない」「デザインより予算や納期が優先される」とジレンマを感じることもあるようです。

多くの経験を積んで注文住宅や店舗兼用住宅など、意匠性の高い案件を獲得できれば、より高いモチベーションを持てるでしょう。

またハウスメーカーでは提案営業を通して、クライアントと直接関わることができて、完成した住宅での生活を想像しながら設計を進めることに大きなやりがいを感じる人が多いようです。

 

設計事務所

 

設計事務所は、建築物の設計を専門に行う会社です。

建築家の名前を冠したアトリエ系建築事務所や、意匠だけではなく構造、設備の設計も手掛ける大規模な組織設計事務所まで業態は様々です。

設計事務所は図面作成のスキルを最も活かせる場所と言えます。

住宅だけでなく商業施設、公共施設など、多様な建築物の設計に携わることができるのが大きな魅力でしょう。

設計業務に専念できるため、専門性を高めることができます。

また自分のアイデアを形にすることができ、クリエイティブな仕事を目指す人にはおすすめの職場です。

 

まとめ

 

建築設計の業務には、設計図、施工図など多種多様な図面が存在し、それぞれが異なる役割を持っています。

図面を作成するには専門的なスキルや知識が求められ、キャリアの方向性に応じて活躍の場が広がります。

自分の目指すキャリアに合わせて図面作成のスキルを磨くことが大切です。

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