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2024.10.09

建築設計課題の攻略法・課題の進め方から建築士試験対策まで徹底解説

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建築を学ぶ上で必ずクリアしなければいけないのが建築設計課題です。

建築学科では進級や卒業に必要な単位取得のために行われ、建築士資格試験では採点の対象となります。

本記事では、授業で始めて建築設計課題に取り組む際の具体的な方法や、建築士資格の製図課題について解説します。

建築設計の初心者から、建築士試験合格を目指す方まで、役立つ情報が満載です。

ぜひ最後までお読みください。

 

建築設計課題の進め方

 

建築設計課題とは、設定された条件を基にどのような建物を設計するかを考え、設計図などの形にアウトプットする作業のことです。

建築設計課題には多くの工程があり、初めて取り組む際には、どこから手を付けるべきか迷うこともあるでしょう。

ここでは、建築学科の学生に出題される課題に対し、取り組むべき工程を順番に紹介します。

建築設計課題の進め方には絶対的な正解はありません。

専攻や指導者の方針によって異なることがありますが、設計を進める上での基本的な流れをつかんでいただければと思います。

 

 

設計条件の確認

 

建築設計課題の最初の工程は、指定された「建物の用途」「敷地・建築物の面積」「構造」などの条件を確認することから始まります。

建築家には自由な発想が不可欠とはいえ、設定された条件を無視して勝手に設計を進めても評価は得られません。

実際の業務においても、建築主の要望や法令に合致したプランが求められます。

設定された条件をしっかり確認し、どのような建物が建築可能かを理解することが不可欠です。

 

コンセプト作り

 

建築設計課題のコンセプト作りとは、独自のイメージを膨らませ、設計のテーマを決定することです。

「住む人にこんな生活を提供する」「使う人が抱える問題を建築で解決する」など、コンセプトが決まれば、建築物の存在意義を明確にし、他者と共有することができます。

建築設計には多くの要素がありますが、コンセプトがなければ方向性が定まらず、決定が困難な事項が増えてしまうでしょう。

学校の課題では、指導者にコンセプトを提出し、承認を得てから具体的な設計作業に進むケースが一般的です。

 

敷地調査

 

敷地調査とは、どのような建物を建てるべきか、設定条件で指定された土地について調べるプロセスです。

課題では実在する土地が使われるケースがほとんどなので、現地調査が基本になります。

面積や隣接する道路の幅、方位などは図面で確認できますが、町の雰囲気や周囲の環境は実際に足を運んでみなければ分かりません。

周辺住民の年齢層や家族構成、景観などを自分の目で確かめ、設計の具体的なイメージを膨らませましょう。

古地図を用いて土地の歴史を調べたり、役所で上下水道などのインフラを確認するのも有効です。

 

参考事例の収集

 

敷地調査やコンセプト作りが進んだら、参考事例の収集に取り掛かりましょう。

自分のイメージや設計条件に、共通点のある建築物を探します。

参考事例は、あくまで特定の要素を取り入れるための資料です。

無意識に事例に似た設計にならないよう、多くの事例に触れ、必要なエッセンスを自分の作品に活かすことを意識しましょう。

普段から各地の建築物を見たり、建築雑誌やWebサイトをチェックして感性を磨いておくことが大切です。

 

エスキス

 

建築設計課題におけるエスキスとは、製図に入る前段階でアイデアをメモする作業です。

思いつくままにスケッチや言葉を書き残しておきます。

エスキスは言わば「ネタ帳」のようなものなので、丁寧なスケッチである必要はありません。

最終的に採用しなかったアイデアも残しておくと後々役立つことがあります。

イメージ図から始め、簡単な間取りや動線を書き、徐々に精度を高めていきましょう。

このスケッチを基に指導者とディスカッションを重ね、本格的な設計に着手していきます。

 

図面・模型の作成

 

ここまでのプロセスを元に、提出物として設計を具現化します。

形式は設計図だけでなく、3D画像やパース、立体模型など様々です。

課題に不慣れなうちは、指定されている条件を満たすことから着手するのが良いでしょう。いきなり完成形を目指すのではなく、エスキスを繰り返し行い、段階的に仕上げていくことが大切です。

製図技術に不安があるかもしれませんが、建築設計課題では製図の技術よりもコンセプトが伝わるかどうかが重視される傾向にあります。

自分のイメージを形作る過程で技術を磨いてください。

 

講評会

 

講評会は、自分が作成したプランについてプレゼンテーションを行う場です。

なぜこのコンセプトを選んだのか、なぜこの形になったのかを言葉で説明します。

コンペで好成績を残す人は、最後のプレゼンを意識して設計作業を進めていると言われます。

設計図や模型を見るだけで建物の概要は理解できますが、自分のイメージを言語化し、多くの人の共感を得るスキルは建築士として不可欠です。

 

建築士資格の製図課題

 

令和2年度から、建築学科を卒業するとすぐに一級建築士試験の受験資格を得られるようになりました。

それに伴い学校で建築学を学びながら、同時に資格試験の勉強を進める人も増えているのではないでしょうか。

しかし与えられた条件を基に設計図を作成するという課題でも、学校の課題と建築士試験では大きな違いがあります。

ここでは一級建築士資格試験の概要や、取り組み方についてまとめています。

 

 

一級建築士・試験概要

 

一級建築士試験は、学科試験と設計製図試験に分かれており、学科試験に合格した人だけが製図試験に進むことができます。

令和6年度試験のスケジュールは以下のとおりです。

・設計製図課題発表:7月26日

・学科試験実施日:7月28日

・学科合格者発表:9月4日

・製図試験実施日:10月13日

設計課題の発表から製図試験まで2ヵ月以上あるため、準備期間は十分と感じるかもしれません。

しかし事前に発表されるのは「課題のテーマ」や「要求図書」など、限られた情報だけです。

敷地条件や立地など、その他の多くの条件は試験当日にしかわかりません。

提示されている条件から、あらゆるパターンを予測して学習することが必須となります。

また学科試験の合格を優先しなければならないため、余裕を持って学習スケジュールを立てることが大切です。

 

過去問題の傾向

 

学科試験に合格すると、3回まで製図試験を受けることが可能です。

そのため直近の試験で出題された課題が、再度出題されることは少ないと考えられます。

同じような課題が出題されるまでの期間は、短くても4年長くて15年以上の間隔でした。

また同年度に実施された二級建築士や建築設備士の製図試験と、施設名や用途が重複することがあったので、これらも大まかにチェックしておくと良いでしょう。

 

年度 課題名
令和6年 大学
令和5年 図書館
令和4年 事務所ビル
令和3年 集合住宅
令和2年 高齢者介護施設
令和元年 美術館の分館
平成30年  健康づくりのためのスポーツ施設
平成29年 小規模なリゾートホテル
平成28年 子ども・子育て支援センター
平成27年 市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅

 

時間配分と対策

 

製図試験の試験時間は6時間30分です。

長丁場ではありますが、未完であれば不合格になるので、手順を踏んで時間配分どおりに進むよう対策が必要です。

ここで提示する時間はあくまで目安です。自分にとって最適な時間配分を見つけ、しっかりとトレーニングを積みましょう。

課題の読み取り・30分

問題文の要点をマーカーで色分けする方法が一般的です。

無意識に読み飛ばしてしまったり、途中で設定を忘れてしまわないように見返しやすくすることが目的です。

例えば「建物の用途や高さ、形状に関する重要条件はピンク」「什器や建具など作図指定されている箇所は黄色」など、自分なりの分類を行います。

ただし、あまりに多くの色を使用すると、かえって見落としの原因になることもあります。自分に最適な分類方法を確立しておきましょう。

エスキス・120分

製図試験におけるエスキスとは、提示された条件を理解するためのスケッチ作業を指します。

学校の設計課題では、エスキスはアイデアを膨らませたりディスカッションのベースとして使われることが多いので、最初は試験との違いに戸惑うかもしれません。

試験ではラフスケッチは、あくまで迅速に製図に移行するための手段です。

自分なりに省略パターンを決めたり、縮小図面を描かないといった時短テクニックを身につけることが重要です。

製図・150分

製図試験のメイン作業となるのが、実際に図面を描く工程です。

試験会場によっては机が狭いなど、必ずしも最適な環境で作業できるとは限らないため、製図時間は多めに確保することをおすすめします。

近年の学校課題ではデジタル図面の提出が増えていますが、試験ではすべて手書きです。

製図は建築学の初期段階で学ぶ科目ですが、建築士試験を目指す場合には、しっかりと習得しておく必要があります。

上達するためには、とにかく数をこなすことが大切です。

最初は思い通りにいかないかもしれませんが、数多くの事例に取り組み、手を動かすことに慣れるよう注力してください。

試験が近づいたら、縦線と横線をまとめて引く、フリーハンドで描く箇所を決めておくなど、細かな対策も講じましょう。

計画の要点・60分

製図試験には「計画の要点」という、設計課題に関連する建築知識を問う問題が含まれます。

例えば令和5年の設計課題「図書館」では、「一般開架スペースに採用した空調方式と、その理由及び配慮点」など、7問が出題されました。

文章を書くのが苦手な人ほど、単語や定型文を丸暗記しがちですが、これはあまりおすすめできません。

想定外の角度から出題されると、知識はあっても文章を組み立てられない場合があるからです。

文章は「〇〇のために、〇〇を設置し、〇〇とする」というように、目的・手段・効果に分けて学習すると良いでしょう。

フォーマットに単語を当てはめることで応用力が向上し、時間短縮にもつながります。

見直しチェック・30分

最後まで製図に集中したいかもしれませんが、必ずチェックの時間を確保してください。

可能であれば製図の前にも中間チェックを行うと理想的です。

少なくとも、設定要件に対応できているか、製図に矛盾がなく建築物として成立しているかは必ず確認しましょう。

 

まとめ

 

建築設計課題は建築学を学ぶ上でも、建築士を目指す上でも非常に重要な要素です。

しかし、大学や専門学校での制作課題と、資格試験の製図課題では求められる内容が大きく異なります。

学校では自由な発想が評価される一方で、資格試験では要件に従って減点されないように製図を行う必要があるため、矛盾を感じる方も多いかもしれません。

それでも建築設計を学ぶ中で、設計課題は何よりも楽しい作業であり、苦労以上に得られるものが大きいはずです。

状況に応じた対策をしっかりと行い、将来の目標に向けて頑張りましょう。

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